金柑の実のたわわなのを見つけると。むしょうに千切って食べたくなる。 小粒だけれどふっくらしているのを。ビーバーみたいにして齧るのが好きだ。
それから。その実をお砂糖たっぷりで煮詰めたのもいい。 母さんの味がする。風邪ひかないようにねとか言っては。 子供の頃が懐かしい。甘くてちょっときゅんとするあの味。
ポテトチップスもポッキーもなかったあの頃。母親はそうしていつも。 丹念に心を込めておやつを作ってくれたものだ。金柑やさつま芋や。 時には奮発してドーナツやホットケーキや。お好み焼の時もあった。
子供心には。それは当たり前のことのように思い。母親は居て当然だと。 何ひとつ疑うこともなかったのだけれど。ある日突然という不運なことも。
人生には少なからずあるものなのだ。
面影ばかりを追い求め。時には恨みもし時には赦す素振りもしてみせては。 とうとう我が身も老いの兆しを感じ始めたこの頃。いまこうして在ることに。 やっと母を敬う心が芽生えて来たように思う。多感な少女だった私に対して。 母の与えてくれた試練は。他人には成せない価値あるものだったのだと思う。
おかげで成長し。おかげで羽ばたきもし。何事にもつよく強く立ち向っては。 これが自分の人生だと誇りのように思える時を。いまこそそれをしかと受けて。
まだまだこの人生を歩んでいかねばならない。
わたしの紅い血は。わたしの実ではないだろうか。
母がいて父がいて。わたしは命という大切な実をさずけてもらったのだ。
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