日中は弥生の頃かと思うほどの暖かさ。ふと海を恋しく思った。
だけども腑抜けてしまったわたくしは。ただただものぐささが似合っている。 ぐるぐると慌しいのは愚かな思考のみ。投げれば返るそれはいったい何処に。
ぶち当たっているのであろうか・・・。
庭の陽だまりのクルマのなかで。本を読んでいるうちにまた眠ってしまった。 飼い犬の「ワワン」と吠える声に目覚めてみれば。そこにはヨチヨチ歩きの。 空君という名の幼子が居て。「わんわ、わんわ」って言って。あどけない姿。
おばあちゃんと堤防にお散歩に行く途中らしかった。わんわんすごい好きだって。 そういえばアンズの吠え方が微妙で。彼女は彼女なりに空君を呼んでいる声だった。
尻尾をふりふり応えているのがよくわかる。ひとの言葉が話せなくてもどかしい。 けれど。好かれているのが嬉しくてならないのだ。ワワンは「おいで」なのかも。
空君がよっちよっち。何度も振り返ってきょとんと。つぶらな瞳でバイバイって。 堤防への路地を遠ざかっていくのを。私も手を振りながらしばしそこに立っていた。
するとどうしたことだろう。ほんの一瞬。その姿が我が子の幼い頃に重なってしまう。 急いだら転んじゃうよ。ゆっくりだよ。ほうらほうら。おいちにおいちにって。
歩き始めた頃のあの誇らしげな笑顔。転んで泣いてはまたすくっと歩いてくれた。 そうしてやがて走り始めてしまうと。路地の向こうに見失ってしまいそうだった。
どれほどの時がと。どんなにそれをかぞえようとしても。 そのかずなどいまは。いっしゅんにして抱きしめられる。
わたしは我が子に育ててもらったのだと。いまはおもう。
ワワン。ワワンと。今夜はとても子供達が愛しくてならない。
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