| 2007年01月11日(木) |
この猫。冬が嫌いにあらず。 |
冬らしさこのうえなく。雪こそ降らないけれども朝霜は粉雪かと思うほど。 川面に朝陽が眩しくて。ゆらゆらと蒸気のように水が天に昇るのを見た朝。
河川敷では天然青海苔を干している人達がいる。頬被りをして防寒靴を履き。 枯草が霜できらきらと光っている上を右往左往しながら。とても忙しそうだ。 冬の風物詩と言われているように。そうして一面に干された海苔は緑の幕のよう。
それは西風ほどよく乾き。ひゅんひゅんとその幕が風になびくほどになれば。 緑の海苔は一段と濃い緑となり。一筋つまんで口に入れるととても香ばしい。
私は22歳の時にここに嫁いで来たけれど。夫の両親が川漁師であったため。 すぐに慣れない仕事を手伝わなければならなかった。猫の手も借りたいのだと。 姑は言って。私はすぐさま猫になってしまったのだった。にゃんとびっくりで。
最初はもの珍しさが勝ち。なにからなにまで新鮮で面白いなと思ったのだけど。 そのうちだんだん疲れてきては。なんてところに嫁に来たのだろうと辛くなった。
子供が生まれても。やはり私は猫だった。にゃんとしてもがんばろうと思っては。 背中に息子を負ぶっては河川敷へ走った。幸いなことに息子は泣きもせずいい子で。
つらい辛いもやがて慣れると。嬉しいことも少しずつ見つけられるようになる。 たとえば晩ご飯。その日苦労して干しあげた青海苔で姑さんがふりかけを作ってくれる。 遠火であぶったのを手のひらで丁寧に揉みほぐして。花がつおにゴマとお醤油少し。 それを熱々のご飯にのっけて食べると。それはそれはアゴが落ちるほど美味しい。
ゲンキンなもので。もうそうなると猫は。いいところに貰われて来て良かったなあって。 明くる日も頑張ろうにゃって心に誓うのだった。
この猫。冬が嫌いにあらず。 次回につづく。
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