たぶん初霜ではないと思うのだけど。私には初霜だった朝のこと。 いつもの峠道を越えて。あたりが山里に差し掛かる道沿いにあって。
そこは秋の日までは広いオクラ畑だったのが。今ではブロッコリー畑。 粉砂糖をまぶしたように見える。その緑の原の白く装ったのを見たのだった。
そして道行けば。雀色の丘さえもきらきらと眩しくてまるで別世界のようす。 ここが冬なのか。冬もなかなかによいものだなと思う。まだほんの始まりのことを。 しみじみと思った。懐かしいようでもある。そしてすこし切ないようでもあった。

仕事で。お客さんのお宅までバッテリーの配達に行った。 クルマのエンジンが掛からないので。はるばる自転車で買いに来てくれたのに。 ちょうど在庫が切れていてとても申し訳がなく。とにかく後から届けることにした。
「自転車はよいよ冷やかった。向かい風やったけん」と毛糸の帽子を被ったおじさん。 山里のこんな田舎だからこそ。すぐに間に合わせてあげなくてはいけないものを。 なくても当たり前だと咎めもしないのは。のんびり気質のおおらかさであろうか。 ついつい焦りがちになる私などには。ほんとうにこれほどありがたいことはない。
おじさんの書いてくれた地図を頼りに行く。そしたらおじさんが道路まで出てくれていて。 ずっと待っていてくれたらしい。「すまんのぅ」って言ってくれて。それはこちらこそで。
手渡すなり「ねえちゃんちょっと待ってや」って言って。すぐそばの木の枝に手を伸ばす。 そこには白とピンクの彩りの小さな可愛らしい籠がぶら下っていたのだった。 おじさんのお手製らしい。「これあげるけんね」って。すごくすごく嬉しかった。
木枯らしもなんのその。今日もとてもあたたかい「ひと」に逢えました。
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