| 2006年11月17日(金) |
真紅の寒木瓜が咲いたよ |
初冬らしくあり日に日に朝晩冷えるようになった。
もう菊さえも枯れ始めてしまって。あたりは雀色のいちめんになりつつある頃。 先日の真紅の山茶花についで。今日はこれも真紅の寒木瓜の花を見つけた。
そのただいちりんの健気なことこのうえなく。葉もなく枝は冬枯れているのに。 今日を選んで咲いたかのようなその微笑には。陽だまりのやわらかな光がよく似合う。
職場の庭続きにおばあちゃんが住んでいて。血の繋がりこそない義理の仲とはいえ。 母の姑であるから。やはりながねん接していると気兼ねもなくなり身内のように感じる。
89歳の高齢でもあり認知症が進んでいるようでもあるが。畑仕事が大好きな彼女であった。 しかし。身近には畑がなく。それでも毎日鍬を提げて出掛ける場所というのがあり。 そこはなんと職場に隣接する廃車置き場で。いまは枯草が夥しく広がっているばかり。
そこでほぼ一日中彼女は。その枯草をひたすら夢中のように掘り起こしているのだった。 よほどの雨でも降らない限り休むことをしない。木枯らしのなかでもびくともせずに。
何かの種を蒔くのでもない。なにかを育てるわけでもない。時には石ころも拾っては。 顔は紅く上気し薄っすらと汗をかいている時もある。その姿を気遣い終に見兼ねては。 止めるとこれがもの凄い怒った顔をして。たちまち不機嫌になってしまうのだった。 好きなようにさせてあげようではないか。とうとう皆でそう決めたのであったけれど。
今日もお昼のサイレンに気付かぬふうで。何かにとり憑かれたような姿を見つけた。 止めれば怒るからと思えば躊躇もするが。さすがに気が咎め。何よりも憐れでならず。
駆け寄って行き。もうみんなお昼しているよとおしえてあげると。ふっと顔をあげ。 彼女はやっと空を見上げた。「おうおう、おてんとさまがお昼じゃねえ」と微笑む。
そうして少しふたりで肩を並べて歩くとき。その真紅の寒木瓜の咲いているのを見た。
「寒うなったに、この子は偉いのう」「ええ子じゃ ええ子じゃ」となんと嬉しそうな顔。
そうして「お昼もわからんような、わたしゃあボケの花じゃねえ」と声をたてて笑った。
そう。ただいちりんの真紅の花。その後ろ姿が家路に向かうのを見届けながら。
なんだか胸がいっぱいになり。ほろほろと涙がこぼれそうになった・・。
老いるとは。なんとせつないことだろう。
されど。老いるとはこんなにも優しく咲くことも出来るのだ。
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