雨が近いのだろうかすこし曇り空。ぼんやりとして澄み切れない空気を。 雲間から優しい陽射しがこぼれてきてはつつみこむ。しろい白い午後だった。
職場のある山村に観光バスが来る。何事だろうと思っていたら。白装束の人達。 お遍路姿ではあるがなんとなく違和感がある。わいわいがやがやと声が聞こえる。
足摺岬のほうから来たようだった。どうやら次の札所まで歩いて行くらしくて。 15キロくらいだろうか。下り坂なのでそれほどは苦にならないのかなと思う。 ちょうど職場の前の食料品店の広い庭先で。その賑やかさについつい見とれていた。
「さあ!そろそろ行きましょう!」とひとりだけ黒い装束のひとが声をあげる。 そしたら今までおしゃべりに夢中だったお遍路さん達が。急に静かになっては。 なんだか真剣になって。きりっとした表情でみんな一斉に前を向いたのだった。
私はどきっとしてはっとした。もしかしたら心の中ではたかが観光遍路さんと。 見下すような思いがあったのかもしれない。だとしたらすぐに謝らなくてはと思う。
目指すという気持ち。達成しようという気持ちは。どんな状況であろうとも同じ。 ただひとり歩くのも。大勢で歩くのも。その道に何の変りがあろうと思ったのだった。
ただひとつきりの道。
仕事を終えて。私もその道を下って家路についた。
途中の牧場では。黒い子牛達がふたつ並んでお尻を向けては草を食んでいる。 その揺れている尻尾が可愛らしくて。ついつい顔がほころんでしまった。
私もゆっくり歩いて行けたらなと思う。
|