秋分の日。彼とサチコと私とでお墓の掃除に行く。 小高い山の上。まるで冬のように落ち葉が降り積もり。 木々のあいだから突き抜けるように風が吹いてくる。
身が引き締まる。なんだかいつもここに来ると清く。 厳かな気持ちになれる。そしてなぜか懐かしい場所。
秋桜の種をきっと蒔いてね。サチコに頼んであるのだ。 それはもうずいぶん前のことだった。生かされている。 こんなにありがたいことはないと。やっと思えるようになった。
我が身の罪深さを悔み。もういつ死んでもいいのだと嘆いた。 母であることや妻であることをすっかり忘れていたのだろうか。 女である自分だけを憐れむ。それがどんなに愚かなことだったのか。 もういまはじゅうぶんすぎるくらい。思い知っているつもりである。
まだ少女だったサチコは。どんなにか不安だったことだろう・・・。 秋桜のこと。おぼえているのかな。思い出すのはずっとずっとあとに。 どうかそれまで忘れたふりをしていてね。母さん秋桜好きだったなあって。
ひたすら生きたい。いまは執着するくらいそのことにこだわっている。 思い残すことがなくなるまで。生きられたらどんなにいいだろうと思う。
悔んでも悔んでも。それを糧にしてひとは生きられるのではないだろうか。
日々は愛しい。こんなに愛しくありがたい「いま」はないのだと思っている。
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