| 2006年08月11日(金) |
今日。夏けやきの木の下で。 |
仕事で集金があって。いく子先生のお宅へ行った。 ほんとうは先生が来てくれるって言ったのだけど。 とにかく暑いからお家で待っていてって言ったのだ。
よく冷えた『ごっくん馬路村』を手土産に提げて行く。 まあまあってありがとうってとても喜んでくれたから。 すごく嬉しかった。わたしは先生の笑顔が大好きなんだ。
いく子先生は。わたしが中学一年の時の担任の先生だった。 英語の先生で。羊はね『シープ』ってプの発音の時が面白くて。 すごくおおげさに下唇を噛むようにして。プップップッって教えてくれた。
でも。わずか2ヶ月でわたしは転校しなければいけなくなった。 とても急なことだった。こころの準備も出来ないうちに遠くへ行くことになった。
先生も友達も。その日はみんなが道路に立って見送ってくれたのだった。 もう二度と会えないのかな。すごくすごく悲しかったことをおぼえている。
でも会えたのだ。運命なのか何なのか。わたしは二十歳になっていた。 どこにも行き場所がなくて。母を頼りにこの山里へと帰って来たのだ。 母は再婚していた。あの頃わたしにギターを教えてくれたお兄ちゃんと。 一緒に暮らしていた。
いま思うと。いく子先生は。すごく縁のあるひとなんだなって思う。 ある日。先生の話を夫君に話していたら。俺もって言ったのだった。 まだ先生が結婚する前で先生になったばかりの頃。彼も英語を教わったそうだ。 おまけに先生の生まれ故郷というのが。四万十川の河口付近でうちのすぐ近く。
縁というものは不思議なものだ。そしてほんとうにありがたいものだと思う。
蝉時雨が。先生のお宅の。欅の木の青々と繁った夏の葉のあいだから。 ほんとうに雨のように降り注いで来るのだった。感動しなくちゃねって。 すごく些細なことでも受け止める心で。優しくつつみこんであげたいね。
庭先でそんなことを語り合った。
詩は書いていないの?もうずいぶんながいこと読ませてくれてないのよ。 この庭に来て。欅の木の下でずっといていいから。書いてごらんなさい。
そう言ってくれた。ありがとうって手をあわせて。ああこれが感動だった。
先生。あのね。「今日、夏けやきの木のしたで。いく子先生とあった」 それからね。「蝉時雨に濡れたように。ふたり佇んで泣いたんだ」
こんなのどう?って言ったら。
うんうん。いいねえって。先生の瞳がきらきらって光ったの。
忘れないよわたし。
ありがとう。いく子先生。
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