| 2006年07月31日(月) |
そしてふかくためいきをついた |
今日も炎天な日。ときどきおっきな雲が流れて来て。あたりがにわかに。 薄く暗くなる。すると。どこからかあの声が聞こえて来るのだ。るるる。 るるるるると。河鹿が鳴く声が山里に響く。なんてせつなくもの悲しく。
誰かを呼んでいる。誰かをさがしている。誰かにあいたくてたまらなく。鳴く。
いまもこうして夏。ずいぶんと遠いところまできてしまっても夏だったなと思う。
あの日。しゅう先輩はどんな気持ちでバイクを飛ばしてきたのだろう。 どれくらいそばにいて。いったいどんな話しをしたのだろう。思い出せない。 もしかしたらすごく困った顔をしていたのかもしれない。どうしようって。 どうすればいいかずっと考えていたのかもしれない。どうしようもなくて。 なんどもなんどもきすをしたんだ。ときどきふるえてそしてすごくやわらかく。
秋が来て冬が来て。春には遠いところに行ってしまった。 ぷっつりと。それはほんとうに約束を果たすかのような別れだった。 モウアワナイ。モウオワロウ。それがふたりの約束だったのだから。
そうしてまた夏。思いがけないことがおこる。しゅう先輩は約束を破った。 あの日。あの喫茶店のどこの席に座っていたか。どんな顔で待っていたか。 あたしは今でもよく憶えている。白いTシャツを着てた。やあって手をあげた。 もう駄目かな?とか。もう遅いかな?とかあたしの好きだった笑顔で首を傾げて。 座ろうとしないあたしを見上げるように言ったんだ。指先で前髪を掻きあげては。
そしてふかくためいきをついた。あたしは逃げるように帰った。ごめん・・って。 言ったかな。もしかしたら言わなかったかもしれない。胸が張り裂けそうに痛かった。
それが。あたしが憶えている。最後の。しゅう先輩だ・・・。
あたしはそれから。どんどん。まるで濁流にのみこまれたように。
流れていったんだ。
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