合歓の花が咲き始めた。それは峠道から見下ろす山肌で。 緑濃い葉の草原に舞う孔雀の群れであるかのように咲き。 いまの頃には雨に。そしてつかのまの陽の光には輝いて。 ふうわふうわとくうきのなかで薄桃色の羽根をなびかす。
職場のはまだ蕾のままだった。淡い緑のつぶつぶがぷちぷちっとしている。 折れた枝はやはりどうしても生きられず。葉は枯れて落ちて丸裸になった。 その姿は冬枯れのあの頃とよく似ていて。哀しいと言うより希望に見える。
そうして日常がまた。とんとんとんと歩んでは。すこしばかり。 ためいきや。苛立ちもまた。あたりまえみたいにぽちぽちと落ちる。
『あってよし なくてよし』と呟きながらタイムカードを押した。 そばで同僚がくすりと笑う。私はちょっとおどけて見せる。ふふふっと。 スキップな気分でクルマへ乗って。ソックスを脱いで素足になるのだった。 そして窓から見えた同僚に。「これあげようか」とつまんだそれを差し出す。
わはわはと笑い声。ああほんとうに愉快だこと。笑ってもらえるってことは。 そして一緒に笑えるってことは。すごく素晴らしい嬉しさだなって思うのだ。
明日もとんとんとん。なにがあってもよし。なにかがなくてもよしでいこう。
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