朝は少し肌寒さを感じたけれど。日中は光あふれ穏やかに時が流れる。 桜はほぼ葉桜。その花びらを敷きつめたような草の原に。タンポポが。 可愛らしく顔を覗かせている。薄紅色の衣装を身につけた微笑みのようだ。
るんるんらんらんとお散歩してみたくなる頃だった。仕事なんてとふと思う。
ちょっぴりの苛立ちがそこにあり。まあこんなもんだろうと観念しながら。 こころは野原。こころは海辺。こころはいつだって旅人になりたがるもの。
少し疲れて帰宅すると。おおと思わず声をあげるほど嬉しいことが待っていた。 昨日の燕さんが帰って来てくれていたのだ。もうお嫁さん見つかったの?って。 聞くには及ばず。そこにはちゃんと二羽がいて。せっせと巣の補修を始めている。
「おとうさ〜ん!」と彼を呼ぶ。そしたらめんどくさそうに彼は応える。 昨日まであんなに不安がっていたのになにさ。そんなこと当たり前じゃないかと。 ちっとも嬉しそうな顔をしようとしないのだ。嬉しいくせに照れていると見たぞ。
かくかくしかじか。今年も燕たちと暮らせる。巣立つまでずっと見守っていられる。
ささやかながら。それがほんとうに幸せなことだと思うのだった。
ありがたきは燕かな。こころいっぱいの春がここから生まれていくのだよ。
|