清明。万物がすがすがしく明るく美しい頃とか。
雨あがりの濁りを帯びて流れる川に。春の陽が燦々と降り注ぐ午後。 眩しさに目を細めながら息をすると。水のにおいにとろけてしまいそうだ。 明日は澄む。そう誓うようにつつと流れる。南風は潮のかおり。ぽつねんと。
またあたしはそこにいて。そのばしょをしるすようにして。そこからあるく。
「今年は燕が来てくれないなあ」とさびしそうに彼がいう。 なにか良くないことがあるのかもしれないと不安がっている。 去年の二番子たちが卵のまま死んでしまったことを思い出した。 悪さをする他の鳥に巣を荒らされたのかもしれなかった・・・。
だからもっか安全確認中なのではないかなと彼に告げてみる。 そのうちきっと帰って来るよ。だって古巣がふたつもあるんだもん。
そしたら今朝。玄関のあたりで燕の鳴き声が聞こえたのだった。 窓辺からそっと覗いてみると。ああよかった一羽が巣に留まっている。 一羽だけというのが少し気になった。なんだかちょっと物件探しなのか。 巣のなかを覗き込んで見たりして。ちょっと首を傾げたりしているのだ。 まあここでもいいかと思ってくれたのならいいな。補修してみようかなと。
そうしてすぐにどこかへ飛んで行った。それっきり鳴き声さえも聞こえない。 やはり我が家は駄目なのかもしれない。毎年それは沢山の燕が巣立ってくれたのに。 私もちょっと不安になってきた。そうしてすごくさびしい気持ちになった。
彼いわく。「嫁さんだな。まずは嫁さんを探しに行ったに違いないぞ」 微笑んで私。「そうよね。ひとりじゃ卵も出来ないし、まだ巣は早いよね」
いっけんらくちゃく。あとは燕の恋まかせかな。
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