啓蟄。冬ごもりをしていた虫たちが穴から出て来る頃とか。 そんな今日は。少し冷たさを感じる雨のいちにちとなった。
気がつけば。梅の花も散りゆき。花びらの行方さえも知らず。 寒桜はわずかに。雨のしずくが涙みたいに頬を濡らしている。
白木蓮は満開になった。純白がほのかに黄をおびて少し哀しい。 落ちるのだ。ある日からそれは。ほんとうにどうしようもなく落ちる。
鮮やかな色のレインコートを羽織ったお遍路さんがふたり行く。 肩を並べるのではなく。なんだか競い合うように先を急いでいた。 あなたの歩調。わたしの歩調。行き着くところで会いましょうや。 そんなふたりに見えた。頑張れふたり。声をかけたいような二人。
職場。お給料日だったけれど。どうしても資金繰りが間に合わず。 いつもは強気のオババがすごくしょんぼりとしていて可哀相だった。 「ない袖は振れない」といつも。それが当然みたいに笑っている人。
私が帰る時。動き出したクルマからオババの姿が見えた。 窓際に立って。もしかしたら私を見送ってくれたのかもしれなかった。 手をあげようとしたけど。どうしてだか手をあげられなくて。ごめん。
ちっちゃくてか弱くて。さびしくてかなしかった。
わたしのお母さん・・・・。
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