夜明けを待って川仕事に出かける。 まだ朝陽が。すぐそこまで光ろうとしながら。 まだらな灰色のぷかぷかした雲達を紅に染めるのを見た。
一斉に。飛び立つ鴨の群れ。それは見事に放たれた光りのごとく。 きらきらと眩しくて。思わず歓喜の声をあげてしまった程だった。
私の。たぶんいちばん好きな季節なのだろう。 嫁いで26年。どうしてこんな仕事をしなくてはいけないのだろうと。 すごく恨めしく思った若き日々もあった。それがいつの間にか堂々と。 この仕事を誇らしく思えるようになったのだ。自然の恩恵を受けること。 それはとてもありがたいことだと思う。嘆くことも教えてくれる自然に。 振り回されてしまう日々もあったが。そんな日があったから喜びもある。
かくして。海苔養殖の準備が着々と進み始めた。 どうか順調に育って欲しいと願う。
暖冬と水害で全滅だった去年を思う。あの時、廃業を決めたのだった。 だけど。やめるな。やめたらいかんぞって。亡くなった夫の父親が。 言っているように思えてならない。だから。夫を失業させたのだと。
だって。あの時もそうだった。23年前のあの時。 夫は急に。ずっと勤めていた会社を辞めたいと言い出したのだ。 まだ幼い子供達を抱えて。私は不安でいっぱいになったけれど。
夫は父親の後を継ぐ事になった。お父さんはすごく喜んでいたっけ。
そして。その年の秋。あっけなくこの世を去った。
あの時。どうして仕事を辞めたかったのかよくわからないと彼は言う。
その理由を。いまになり。強く強く感じている私たちだった。
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