いつもの峠道を登りつめると。そこは霧の山里だった。 粒子のかけらが一面に漂っている道を。貫くように走った。 見慣れた風景が神秘的な世界のように。見える犬も老婆も。 まるで天の生き物のように。ふわふわと歩いているのだった。
霧が晴れると真っ青な世界。光が燦々と降り注ぎ始める。 なぜか仕事が手に付かずに。庭に出てねむの木を仰いでいた。 手というか。手と私は呼びたいのだが。その枝が好きだった。 生きているのがすごくよくわかる木。空に向かってなにかを。 叫ぶのではなく。ただ空を信じて手を伸ばしているように思う。
わたしはいつも。この木から精気を授かっている。ありがたい木。 冬枯れの時が来ても。空に手を伸ばし続ける。健気で心強く在る。
あのひとに見せてあげたいと。いつも思う・・・木だった。
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