ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2005年10月10日(月) にこにこ

曇り日にくもらないでいられること。

たとえにわかに雨が落ちても。

おちないでいられること。

へいわなこころは。とても愛しいものだ。



午後。少しうとうとしていたら携帯が鳴って。
知らない電話番号だったけど。「もしもし」って言った。

聞き覚えのある声。ぼんやりとした頭ですぐには分からなくて。
いっしゅん他の人と間違えてしまった。なんか話しが通じなくて。
あれあれって混乱していたら。ああM君ねって。やっとわかった。

3月までうちのバドクラブで一緒に練習していたのだった。
専門学校へ行くようになって。少し遠い所へ行ってしまった。

彼は。右手右足が不自由だったけど。向上心が強くて。
すごく負けず嫌いで。とにかく出来なくてもやるって頑張り屋さんだった。
でも。どうしてもみんなと一緒にはなれない。すごく悔しそうな顔をして。
くちびるを噛み締めていることがよくあった。でも泣き顔だけは見せない。

私はクラブを任されていることもあって。特に彼と関わることになったのだが。
ある日。限界が来た。ものすごく重荷を感じるようになってしまった。
にこにこと笑顔で。いつも真っ先に彼は来ていて。私の名を呼んでくれたけど。
私の心の中は。どうしよう。どうしてあげたらいいのだろうと。
このままではいけないという思いが。すごく込みあげてくるばかりだった。

私は。それから。急に彼に厳しく当たるようになった。
もう。ちやほやしないと決めたのだ。決して甘やかさないと。
駄目な事はダメと言った。そしたら彼は。「わかってる・・」って呟く。

こころが鬼になっている。そんな自分を痛いほど感じていた。
可哀相でならない。だけど。こうするしかないと。自分を宥めた。

彼はよく転んだ。左手にラケットを持っているから。
体をくねらせるようにして。彼は起き上がるのだった。
そして。きっとした顔で対戦相手を睨む。
私は。私のこころはいつも感動していた。えらいよ、がんばれって。
だけど。声は。「また転んだ、駄目やねえ」って言ったのだ。


最後の日を終えて。私の痛みは最高に達し。
彼が転居してしまう前に。彼に会いに行くことにした。
スポーツ店で。バド用のTシャツを買って持って行った。

にこにこ。彼はどうしてこんなに微笑んでいるのだろう。
ご両親まで。深々と頭を下げてくれて。ほんとうに申し訳なく思う。

「いじめてごめんね」って言った。どうしても言わなければいけなかった。

出来ることを精一杯がんばって。いちばん伝えたかったことを。
やっと告げることが出来た。涙が出そうなくらい。心が楽になった。

私があげたTシャツを左手でぎゅっと抱くようにして。
彼が見送ってくれた時は。もう私の涙はとまらなくなっていたのだ。



「なんか、久しぶりに声ききたいなあって思って」

携帯を新しくして番号が変ったのを。私に知らせたかったのだそうだ。

ありがとう。ほんとにほんとにありがとう。


にこにこ。きみはにこにこ。

わたしもね。にこにこしてるの。ちゃんと見えたかな。





 < 過去  INDEX  未来 >


anzu10 [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加