午後になり。ゆっくりと空が明るくなり。久しぶりに青空が見えた。 眩しいほどではなかったが。やはり太陽は恋しさに似て懐かしいもの。
やまももの赤い実は。もうほとんど落ちてしまって。無造作に転がり。 発酵しているような匂いがしている。お酒みたいで酔ってしまいそうだ。
無惨というほどのことではない。ただ落ちるものの憐れさは。むしろ。 美しいとほめてあげたいと思う。喝采のあとの感動に似ているのかも。
そうして。ひとつがまた終った。
実ひとつ。身ひとつここにあり。
いっそ落ちればいいものを。
痛さをおそれてしがみつく。
あんなこともこんなことも。
決して夢ではなかったけれど。
夢ならば覚めることもできたろう。
実ひとつ。身ひとつここにあり。
千切るのはよぶんなこころ。
腐るのは時の仕業にまかせ。
どんな日もいつだろうとて。
なにひとつ恨むこともなく。
我が実を見失うことはあるまい。
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