ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2002年07月04日(木) こんな女に誰がした

お風呂上りの濡れた髪のままで、洗濯物を干していた。
月もない星もない・・でも風がある。
台風の影響だろうか、涼しいくせに湿っぽい風がくすぐるように吹いていた。

最後はいつも靴下。今夜は娘の靴下が5足もあった。
赤やら黒やら、それは子供の靴下みたいに小さくて可愛い。
最後のひとつを干し終えて「ふぅ・・」と小さく息を吐く。

なんだかとても疲れているな・・と思った。
明日が金曜日なんて信じられないくらい駆け足で、日々をやり過ごしている。
時間が足らなくて焦る。そのくせ少しでも怠けたくて遅れる。

洗濯籠を持ったまま路地に立つと、そのくすぐる風がとても恋しくなった。
これはいいな・・と大きく深呼吸をする。小さな胸がぽわんと膨らんでくる。
堤防に上がる階段が薄っすらと明かり、その向こうは真っ黒な水の世界。
ふとそれを確かめてみたくなる。どれだけ闇に包まれているのか知りたくなる。

そして濡れた女は誘われるように歩いた。多分もう女だ。でないと許せなくなる。
月よりも星よりももっと優しいものが欲しい。
それは見つめるだけでは気が済まなくて、直に私に触れるものであって欲しい。



風は海の声がした。決して穏やかではなく泣き叫ぶような声だ。
逢いたかった・・と私は思う。呑み込まれても溺れても逢えるものなら逢いたい。
伝えることは何もないけれど、ただその声が聞きたかった。

鳥のように両手をひろげ、その声と抱き合う。
そして何度も何度も髪をかき上げ、爪を立てるように髪をまさぐる。
その指が私の指なのか風の指なのか海の指なのか・・分からなくなる。

暗闇は水だった。とうとうと流れているか?生きているのか?
おまえは荒れ狂う海に溶けて見境もなく乱れるがいい・・。



私は灯りを目指して歩く。そこが私の帰る場所だから・・・帰る。


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