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me note diary

2013年08月08日(木) みずたまり

気がつくと、水溜まりができていた。
居間の、ちょうどテレビの真ん前あたり。
いつからあったのだろうと考える。
昨夜はどうだったろう?
今朝はあったような気もする。
でも、なかったのかもしれない。


とりあえず、あまり使わない雑巾で拭いてその日は終わりになった。


その数日後、やはり水溜まりに気づいた。
この前と同じ場所。
雨漏りか? と思って天井を見上げたけれど、特にそういうわけでもなさそうだ。
不思議に思いながら、またしても雑巾で拭き、試しにその場所に、小さなバケツを置いておいた。


翌朝、起きてすぐに件のバケツを確認すると、バケツの中には、一滴の水も入っていなかった。
代わりに、バケツは水溜まりのど真ん中に鎮座する、奇妙なオブジェとなっていた。


床から水が湧き出てくる、ということがあるだろうか?
鉄筋コンクリート八階建てマンションの四階で。


いつもにこにこ愛想のいい中年男性である大家に相談に行くと、いつも通りににこにこ笑いながら、
「それで、どんなことがお困りですか?」
と尋ねた。
お困りのこと。
その質問に、困ってしまう。
水溜まりがあることで、困っていることは特にないのだ。
第一、いつからあるかも判然とせず、気づかなかったということは、あると困るというものではなかった、ということになる。
私はなぜだか大家に詫びをいれて、そのまま帰った。


どこの家にも、なぜか動線にならず、特にそこにものがあっても気にならない、という場所がある。
水溜まりができたのは、まさしくその場所だった。


帰宅途中に河原がある。
ふと思い立って、そこに立ち寄ってから帰宅した。


家に帰ると、まずバケツを片づけた。
バケツを中心に、ドーナツ状に広がっていた水溜まりは、ゆっくりと中央を塞ぎ、丸い水溜まりになった。
その水溜まりを囲うように、私は小石を並べた。
さっき河原で失敬してきたものだ。
囲ってみると、水溜まりはなかなか風流な池になった。


翌日、ホームセンターに行って、手のひらサイズの小さな鉢植えを買ってきて、池になった水溜まりの周りに置いてみた。
なかなかに形になっている。
私は嬉しくなった。


そのまた翌日、おもちゃ屋に行って、ミニチュアの家と、ガーデンテーブルセットと、小さな魚の玩具を買ってきた。
鉢植えとバランスをとりながら、家とテーブルセットを配置する。
そして魚は池に放した。
魚はくるくると楽しそうに踊り、私はとっても嬉しくなった。


ガーデンテーブルセットがあったら、外で本を読みたいと思う。
こんなに素敵な環境に暮らしているのに、なぜか手元に適切な大きさの本がない。
遠くになんだかわからない、大きな建物みたいやものがゴロゴロ転がっているようだけど、なんの目的で存在しているのか、わからなかった。


私はそれからずっと、魚のいる池で、水浴びをして過ごした。


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管理人:サキ
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