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diary
2004年05月22日(土) ふたりきりで。(セリフ連)
「二人なら」
彼の、あの、言葉の意味は、なんだったんだろう。たまに、考えてしまう。
「ふたりなら、大丈夫、生きていける」
……そうだったの?
それとも、
「ふたりなら、死さえ厭わない」
……そういう意味だったの?
結局、わからない。わからなくて、よかったと思う。彼も、答えを悟らせないために、そこで言葉を切ったんだろう。それとも、彼自身、答えを、知らなかった?
そう、そうかもしれない。いや、そうに違いない。
わからなかったんだ。どうしたいのか、どうすれば最良の結果が出るのか。どうすれば、しあわせになれるのか……。
ただ、確実なのは、「ふたり」ということ。ふたりなら、そう、ふたりなら、きっと大丈夫。ふたりなら、どこに行くにしても。ふたりなら、なんでも、どうにも、できる。それだけは、確か。
彼の出した結論は、結局、わたしと同じレベルの考えでしかなかったわけだ。
「ならば、なぜ」
何度も繰り返した疑問はまた浮上する。
ならば、なぜ、わたしをおいていったの。
頭を振る。もう、どうしようもない。
彼がいなくなってから、もう、だいぶ経ってしまった。最初は彼を、酷く怨んだ。少し冷静になると、自分を責めた。それが終わると、虚無感に浸りこんだ。そしてそれが終わった今、わたしはだいぶ、楽になったし、むしろ、しあわせ。
そう、しあわせな日常生活を、過ごしている。
彼はわたしをおいていったけれど、でも、わたしは、彼を愛していて。今でも。ずっと。
わたしは立ち上がり、紅茶を入れ、向かいの店で買ってきたエクレアの包みを開けた。ひとりで食べるにはもったいない。ふと、そんなふうに思い、それからはっとして、冷凍庫を開けた。
長期保存をしようととっておいたお肉が残っているのを確認して、友達に電話をかけた。
「パーティーをしようと思うの。焼肉パーティ。スペアリブがね、うん。じゃあ7時に来て。えぇ、みんな呼んで。待っているから」
思えば、彼がいなくなって、わたしはしばらく、ひとに会っていないのだ。
一度行動してしまえば、途端にわくわくしてきた。
「ふたり、じゃ、なくなっちゃったよ」
夜、友達がみんな帰ってしまった後、わたしは「彼」に話しかけた。
「みんな、一緒。あなたはわたしだけのものだったのにね。でも、もういいと思って。みんな、あなたと、一緒だから。……あなたも、寂しくはないわね」
冷凍庫に残った彼の肉はもう、首だけになっていて。パーティーの残骸は、すべて生ゴミになっていた。
「大丈夫。最後のあなたとは、ずっとずっと、一緒にいるから」
わたしは、霜のついた頬を、ふっと撫でた。
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セリフから連想No.28「二人なら」
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サキ
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