何か書こうと思うのだが、デスクに座りパソコンを前にするとすっかり忘れてしまう。 些細なことでも良い。 何か書こうとするのだが。 家に帰るといろいろなことが、頭を巡って。 会社に行ったらこれを書こうと思うのだが。 書く段になると何も頭に残っていない。 ふぅ。
会社に一枚のFXが届いていた。 一番偉い人からのFAXだった。 名前が二つと面接と書かれていた。
なにを指示したいのか、なにを言いたいのか、なにを求めているのか。 以前の僕ならわかっていた。 もしわからなくても、それなりの対応をした。
意味不明。 いまの僕はそう理解した。 住所も連絡先も、いつなにをすればよいのか書かれていないFAX。 意味不明のFAXとして処理した。
二日後。 関係部署からFAXが届いた。 名前の方から面接の連絡がこないと苦情が入ったと。 意味はわかったが、どこにどう連絡する。 そのFAXにも連絡先が記されていなかった。 罠かもしれないが、はまることにした。
午後、電話がなった。 普通に対応した。 面接の予定を入れた。
夕方、一番偉い人にいろいろ言われた。 そのほかのお偉方にも、彼が怒っているけどどうしたんだと責められた。 いろいろ脅された。 いまとなっては忘れることにした。 その後の出来事も忘れた方がいい。 ただ、僕はその職責において使命を果たした。
雪は降った。 冬なのだ。 その日は一日休みだった。
自分もやりたい仕事ができる職場をさがすつもりだった。 自分を少しでも評価してくれそうな職場を。 いまの職場は息苦しく、環境を替える必要がある。 いまの僕には、いまの場所で切り開く力がない。
雪は止まなかった。 夕方、スコップを買いにでた。 久し振りに雪かきをした。 すぐに手がかじかんだ。 すごくすごく手が冷たくなった。
雪など降るのだろうか。 昔は雪の降るところにすんでいた。 とっても寒かった。 でも寒いところに長くいると、 寒いなどと考えなくなる。
犬がいる。 迷い犬だ。 白くて、毛むくじゃら。 どこからか抜け出して来たのだろう。 何かの種や草や泥がいっぱい付いている。 吠えたりはしない。 よほど人間になれているのだろう。 利口な犬だ。 エサが欲しくてすり寄ってくる。 決して吠えたり、警戒したり、威嚇の態度をとらない。 ただエサが欲しくて、飼い主にねだるようにすり寄ってくる。
人間死にたくなる時もある。 時にはそのような時もある。 いつもは、多くの人はそうでないときがあるように。 時には、いつものようではなく。 多くのみんなのようでない時もある。
逃げ出したい。 放棄したい。 面倒くさい。 その延長にそのようなものがあるのかもしれない。
あの犬のように。 迷った時。 生きるすべをなくしたとき。 じたばたせず、吠えたりせず、憎んだり、やけになったりせず。 いつもそうであったかのように。 静かに。 誰かまわず。 助けを求めてみる。 そんなことができるだろうか。
|