◆サイトは閉鎖しました。が◆
天竜



 オリジナル「隔世の証」二十二話目アップ

隔世アップしました。
残り三話ほどで完結しますので、もうしばらくお付き合いくださいませね〜。

2004年04月29日(木)



 アラレゴ5話目アップ

今回はスラッシュのページにそのままアップしました。アラレゴと言いながら、今回はアラゴルンどころかレゴラスすら出てきません。いつものことだと鼻で笑ってください。

実はわたくし、昨日ようやくヒダルゴ観て来ました!(ナイトメァさん、後ほどメールいたしますズェ!)
またあらためてゆっくりと感想を書こうと思っているのですが、想像以上にいい映画でした。もちろん、ヴィゴが出ているという贔屓目もありますが、もし私がヴィゴを知らなくても胸打たれる作品だったと思います。そして爽快でもありますしね。テーマ自体は決して明るいものではないのだけれど、ヴィゴ演じるフランク・ホプキンスの人柄がとにかく良いんですよ。柔らかい。おまけにキュート。こんな中年男軽く犯罪やんて言いたくなるくらいかわいい。
この作品がヴィゴの初主演作になって良かったな〜と心底思いますね。
つうか、本当に良かったんですけどこの映画!(しつこい)ちょっと意外なくらいでした。(失礼)

DVD出たら買います。あの包含掴む丸っこい器具が個人的にツボでした。

2004年04月27日(火)



 オリジナル「隔世の証」二十一話目アップ

ヒッキーの新曲の歌詞「みんなに必要とされる君を癒せるたった一人の存在になりたくて少し我慢し過ぎたな」がアラレゴに聞こえて仕方ない天竜さんですこんばんは。

さ〜て〜、隔世もそろそろ佳境です。このシーンは思っていたより長くなってしまって苦労しました。どうぞ読んでやってくださいませね。

それからひとつご報告。スラッシュのページにも書いたのですが、ちょっといろいろありまして、このスラッシュページにだけ解析をつけさせて頂きました。ごめんなさいね。ご来訪者にとってあまり気分のいいものじゃないですものね。すいません、少し様子を見させてください。

2004年04月25日(日)



 オリジナル「隔世の証」二十話目アップ

隔世二十話目アップです。堤の子分垣田の性格が変わってしまったので、慌てて過去の登場場面をちょこちょこ訂正しました。お恥ずかしい限りです。
で、ようやく今日ラストまで書きあがったので、これからはもう少しテンポアップしてさくさく更新して行きますので、どうぞチェックしてやってくださいませね〜。

2004年04月23日(金)



 オリジナル「隔世の証」十九話目アップ

隔世、十九話目をアップしました。どうぞ読んでやってくださいませ。
今ですね、ラストシーンを書いているところです。自分の文才の無さに涙がチョチョ切れそうです。
上手くなりたい。そのためには書かねばならぬ。くぅ〜。

そうそう、日記で書いていたアラレゴの方も、今までの分をまとめてスラッシュにアップし直しました。ほとんどコピー貼りなので、新鮮味も何もあったもんじゃありませんが、良かったら覗いてやってください。
「永遠と刹那」の背景、いやらしいアラゴルンとレゴラスの手はDVDからキャプしてみましたエヘ。

2004年04月21日(水)



 ケーキ食ったサ〜

今日はあまりに仕事でむかつき放題だったので、帰りにケーキをたらふく買ってお持ち帰りしましたズェ。糖分とってストレス解消。つっても、甘いものそんなに得意ではないので家族への御奉仕となりましたけどネ!

さてさて。すいません、ひとつ私用でご連絡〜。
先日、メールをくださったkanaさん。感想ありがとうございます〜!実はお礼のお返事を書かせて頂いたのですがメールが戻ってきてしまいました。
ご推薦頂いた小説、ぜひぜひ読ませて頂こうとウハウフフウフウしております!ビバホモ風味!<ってこんな返事ならいらない
黒猫の続編の方はまだ特に考えていないのですが、また機会があったら書かせて頂きますので、どうぞ気長に待ってやってくださいませね〜。

2004年04月20日(火)



 オリジナル「隔世の証」十八話目アップ

隔世、残りはあと5,6話くらいになる予定です。
この連載が終わったらですね、次は明るいスポコン青春ものでも書いてみようかな〜と思ってます。青春と言ってももちろん年齢は高めですが。そしてもちろんサッカーですが。んでもって舞台はやはりスペインですがオレー。
まだまだ希望的予定ですけどね〜。
とりあえず、今は立花と堤に今しばらくお待ちくださいませ。

2004年04月18日(日)



 オリジナル「隔世の証」十七話目アップ

今日は張り切ってアラレゴ(↓)と隔世〜を両方アップしちゃいましたテヘ!どうぞ読んでやってくださいませね〜。

2004年04月15日(木)



 (開き直って)アラレゴ第四話

◆ 戦友の美しきその涙 ◆

その人は、とても美しかったのです。
ローハンにも美しい人はたくさんいるけれど、その人のようにまるで違う世界から舞い降りたような神秘的な美しさを秘めた人はいませんでした。背中まである金色の髪を靡かせ、長い足でヘルム峡谷の角笛城内を自由気ままに走り回り、そのしなやかな腕で放つ弓矢は外れるということを知りません。
エルフという種族を初めて目にしたローハンの兵士も女性も子供も、きっとぼくと同じように思ったことでしょう。誰もが目を奪われ、憧憬の眼差しで彼の姿を見つめたはずです。それほど、角笛城でのエルフの存在は際立ったものでした。
けれど、どういうわけか母さんだけはその人からいつも目を逸らすようにしていました。
「あの人たちは、私たちの目を見るだけで心の中まで読んでしまうのよ」
そう言って、いつも怯えたような表情をします。なぜなのでしょう。ロスロリアンに住まう魔女の噂を信じているのでしょうか。
母さんはぼくにも、エルフには近付くなと強く言って聞かせました。しかし、ぼくは城内で彼の姿を見つけるとつい目で追ってしまうのです。戦が間近に迫り、皆の顔に不安と恐怖が現れるようになっても、彼はいつも陽気で、まるで森の陽だまりでひと休みしているような穏やかな顔をしていました。そんな不思議な彼の姿に、ぼくは見入らずにはいられないのです。
エルフという種族は不死なのだと聞きました。
だから、彼は平然としていられるのでしょう。
ぼくたちとは、まったく違う種族なのです。うらやましいと、少しだけ思いました。
 
ある夜、ぼくは見張り番を任せられました。
十三才になって初めて、剣の使い方を習いました。刃先は欠け、全体が鈍く錆び付いていて、とても頼りなく見えます。果たしてこんな剣でぼくは本当に戦えるのでしょうか。それ以前に、ぼく自身がちゃんと敵に立ち向かうことができるのでしょうか。
きっと、ぼくの顔にも周囲の兵士たちと同じように怯えが滲み出ているに違いありません。夜風が頬をなで上げるたびに、ぼくの背中は冷たく震えました。
母さんは、ぼくを父さんと同じような立派なマークの騎士になることを望んでいます。父さんは、オークと戦って三年前に死にました。名誉ある最期だったと、父さんの友人たちはそう言って称えてくれました。ぼくもそれを誇りに思います。父さんの息子に生まれたことを、とても幸せだと感じていました。
だから、こんなふうに迫り来る戦に怯えてなどいけないのです。
胸を張って、剣を構えなければならないのです。
母さんと二人の妹は、ぼくがこの手で守らなければなりません。例え父さんのように死んでしまったとしても、名誉と誇りはずっとこのローハンの地に残り続けることでしょう。
ぼくはそんなことを考えながら城壁の上を歩きました。
腰に挿した剣が、時間を追うごとに重くなっていくような気がします。
そのとき、前方の壁の上に誰かが座っているのが見えました。金色の髪が風に靡いています。それは、エルフでした。ぼくは思わず足を止め、彼の様子をじっと窺ってしまいます。エルフはまっすぐに前方を見据え、微動だにしません。ぼくの目には暗闇しか映りませんが、彼には何かが見えているようでした。
ぼくがその場から動けずにいると、不意にエルフがこちらを振り向きました。ぼくは驚いてびくりと震えてしまいます。
「少年兵、君の名前は?」
その声はまるで、頭の中に直接囁き掛けられたかのように響きました。ぼくは知らず知らずのうちに、彼の質問に答えていました。
「クロバレスの息子、クーロス」
「そう、クーロス。よろしく、僕はレゴラス」
彼はほっそりとした腕をぼくに向かって差し出しました。ぼくは少し迷ったあと、その手を握り締めました。柔らかく、温かい手のひらでした。それから、レゴラスは自分の隣の凹んだ城壁部分を軽く叩いてみせました。
「ここにお座りよ!」
明るく楽しげな様子で言われ、ぼくは素直に従うことにしました。きっと母さんが見たら、驚いて腰を抜かしてしまうかもしれません。しかし、少し高い位置からぼくを見下ろすレゴラスの目は蒼く透き通っていて、少しも邪気がないように見えました。魔女の噂は、やはり噂に過ぎなかったようです。
「あの……レゴラスさん、あなたにはこの暗闇の向こうが見えるのですか?」
ぼくが尋ねると、レゴラスは「もちろん!」と笑顔を見せます。
「たくさんのオークが見えるよ。みな、鼻息を荒くして、手に持った槍を打ち鳴らしながら、こちらに向かってきている。もう少し明るくなくちゃ弓は当たらないかもしれないけどね」
敵が向かってきている――その深刻さを少しも窺わせない口調で言ったレゴラスは、ぼくの顔を覗き込むと「君は怖いかい?」と尋ねてきました。
「怖くなどありません。ぼくはローハンの兵士ですから」
精一杯の強がりでした。レゴラスは笑顔のまま前方を見つめて言いました。
「クーロス、君はとても強いね」
「あなたは戦うことが怖いのですか?」
少し攻めるような口調になってしまったかもしれません。レゴラスは金髪を夜風になびかせながら、小首を傾げました。
「そうだね。僕はきっと怖いのだと思うよ」
「でも、あなたは死なない。エルフだから」
ぼくの言葉に、レゴラスは困ったような表情をします。
「確かに、ぼくはエルフだから人間のように死んだりはしないよ。だけど怖いというのは、そういう意味じゃない」
ぼくは解からなくなりました。
死を恐れないエルフが、何を恐れるのでしょう。
レゴラスはしばらく細めた目で暗闇を凝視していましたが、やがてぼくの顔を見つめ、穏やかに微笑みました。
「教えてクーロス、君は何のために戦うの?」
「それは国のためです」
「他には?」
「あとは名誉と、誇りと、そして家族のためです」
「家族! 家族がいるんだね!」
「はい。母と妹が二人。父が死んでしまったので、家族を守るのはぼくの役目です」
そう言うと、レゴラスは腕を伸ばし、ぼくの肩を優しく撫でました。
「僕もね、君と同じように守らなくちゃいけない人がいるんだ」
「あなたも家族のためですか?」
レゴラスは「違うよ」と笑って首を振ります。
「僕が守らなくちゃいけない人は、いつか君たち人間の王になる人だよ。とても誇り高くて、賢くて、勇気があって、優しい人なんだ」
まるで歌うように言ったレゴラスは、自分の手をそっと胸に当てました。何かを祈るように伏せられた目がとても美しくて、ぼくは思わず見とれてしまいました。きっとその人はレゴラスにとって掛け替えのない人なのだろうと思います。
「クーロス、僕が恐れるのは戦いによってその人が傷付くことなんだ。だから、彼を傷付けようとするすべての者から彼を守るために、僕は強く有らなくてはいけないんだよ」
ぼくは、自分の心臓がきゅっと締め付けられるのを感じました。強くならなければ――そう話すレゴラスは立派な男の人だけれど、ぼくの目にはとてもはかなげに見えたからです。ぼくは勇気を振り絞って、レゴラスに言いました。
「レゴラス、約束をしましょう。互いに、愛すべき者を守り抜くことを。そのために、強くなることを」
「それは素敵だねクーロス! ぼくは闇の森に誓ってこの戦いを彼とともに生き抜くことを誓うよ」
「ぼくは、家族を守ることを誓います」
ぼくたちは、もう一度固い握手を交わしました。
二人だけの約束です。
ぼくはもう、腰に下げた剣の重さを感じることはなくなっていました。微笑むレゴラスからは、風に乗って深い森の匂いがしました。


夜空が広がっています。
ぼくの周囲では、剣と剣がぶつかり合う激しい音がしています。時折、耳を塞ぎたくなるような叫び声や、オークたちの悲鳴も響き渡ります。壁に凭れたぼくのすぐ横では、ついさっきまで勇ましく剣を振るっていた兵士がひとり、うつ伏せで倒れています。もう、息はしていません。オークの放った矢が、心臓に突き刺さったのです。
ぼくは動くことができません。
なぜなら、オークの剣がぼくの腹を貫き、背後の壁へと突き刺さっているからです。痛みは、とっくに消え去りました。溢れ出す血の感触も、もう分かりません。息が苦しいのかどうかも、忘れてしまいました。
これが戦いなのです。
父のように、ぼくはもうすぐ死ぬでしょう。
悔しいとは思いませんが、ただ、母さんや妹たちのことが心配でした。ぼくが死んでしまえば、彼女達を守る人がいなくなってしまうからです。
ぼくは震える息を吐き出します。
もう少しだけぼくに力があれば、もう少しだけぼくに勇気があれば、この戦いを生き抜くことができたのかもしれません。自分の無力さに、涙が溢れてきます。目の前が霞み、夜空も見えなくなりました。
「クーロス!」
そのとき、ぼくの名を誰かが呼びました。
ぼくは一生懸命瞬きをして、その声の方角を見つめます。すると、壁の上からひらりと誰かが降りてきました。金色の髪が揺れ、手に持った長い弓が美しい弧を描いています。
「……レゴラス」
ぼくの声は届いたでしょうか。
喉から溢れ出した血が、唇から滴り落ちました。
レゴラスはすぐにぼくの側へ駆け寄ると、涙に濡れたぼくの顔を両手で包み込みました。
「クーロス、クロバレスの息子よ」
ぼくは小さく頷きました。それが、精一杯でした。
「素晴らしき少年兵。共に戦えることを僕は誇りに思う」
その声は、レゴラスの唇からではなく、頭の中に直接響いてきました。ぼくは分からないまま、彼に伝わることを祈って同じように頭の中で喋りました。
「レゴラス、あなたの大切な人は無事ですか?」
「もちろんだとも! 君の家族もきっと無事だ。僕達の勝利は間近に違いない」
「あなたとの約束を守れそうにありません。ぼくは、もうすぐ死ぬのです」
そう言うと、レゴラスはまるで幼い子供のように顔を歪めました。
「僕はもうこれ以上誰かが死んでしまうのは嫌だ。みんな僕を置いて死んでしまう」
夜空を映してもなお蒼く輝く瞳に一筋の涙が流れ落ちるのを、ぼくはひどく切ない気持ちで見つめました。この悲しみに満ちたエルフを、ぼくは大丈夫だと言って抱き締めてあげたくなりました。
でも残念ながら、ぼくの両手はもうぴくりとも動いてくれません。
「それでもあなたは……愛する人のために戦い抜くのでしょう。いつかその思いが報われることを、ぼくは祈ってます」
レゴラスが長い腕を伸ばし、ぼくの躰を強く抱き締めました。鼻先を擽る金色の髪からは、やはり懐かしい新緑の香りがしました。その匂いが、幼い頃父さんと一緒に歩いた森の小道を思い出させてくれました。父さんの大きな暖かい手が、ぼくを待っていてくれるように感じました。
死ぬことは怖くありません。
ただ、大切な人を置いていくことが心残りなのです。
いつかこの美しいエルフをこの世に残し死んでいくその人も、ぼくと同じ気持ちで最期を迎えるのでしょうか。そのとき、レゴラスはまたこうして涙を流すのでしょうか。
ぼくは目を閉じました。
そして祈りました。
このローハンの地に待ち侘びた春が訪れ、家族を暖かく迎え入れてくれることを。そしてレゴラスが、二度と哀しい涙を流さないことを。

「さよなら、僕の戦友よ……」

慈悲深いレゴラスの声が、ぼくを優しく包み込みます。
ぼくの最初で最後の戦いは――こうして終わりを告げました。

2004年04月14日(水)



 オリジナル「隔世の証」十六話目アップ

さて、連載なのに随分と間が開いてしまって本当にすいませんでした。すでに前回の内容を忘れてしまっている方もいるのではないかと心配しております…。なにげな〜くさりげな〜く前作を斜め読みしてテキトーに思い出してやってくださいませ(泣)

2004年04月12日(月)



 画像モエ

さて、パソコンが新しくなったおかげでですね、今までのポンコツではダウンロードできなかった動画を色々と集めて回っているわけですが、ロード関係ではヒットが二つ。
きっとすでに観て萌えた方も多いんだろうな〜、ひとつはですね、エルフウィッグの三つ編をすべて解いたシャンプーCMキャラ抜擢間違いなし!ミムラもナタリー・ポートマンもなんのその!的さらさらヘアーなオーリィ。
あれでね〜、オーランドが馬鹿笑いをしていなければこっちも萌え放題なんですが(知るかよ)、どっちかっつーと今時の兄ちゃんっぽくなってましたね(笑)三つ編が持つ威力はスゲーと思いました。
もひとつは、写真ではよく見ていたのですが、ヴィゴの頭をいい子いい子してるオーランド。
というか、ヴィゴが素直に頭を撫でられすぎていて非常に受け受けしい。恐るべき王様。めちゃくちゃかわいかったですけどね〜。

つうことで、いい加減小説書けよ!てな話ですが(笑)、来週から隔世〜は更新していきます。アラレゴの方もできるだけ書いていこうと思ってますので、もうちょっと待ってやってくださいね〜。

2004年04月11日(日)



 ちょびっとリニュー

ちょこちょことリニューアルしました。こういうレイアウトはね〜、本当に苦手なんですよ。もうあと三年はずぇったいにしません。

つうことで、フレームを使ったので、画面サイズ800×600の方にはちょっと見にくくなってしまっているかもしれませんが(確認できないのでごめんなさい!)どうぞご容赦くださいね。

2004年04月10日(土)



 ニューパソ!

ようやくパソコン購入しました!軽くて早くて快適ネット生活満喫中ですイエー。また近いうちに隔世〜の連載も再開しようと思ってますので、もう少し待ってやってくださいませね〜。

2004年04月08日(木)



 (誰か止めて)アラレゴ第三弾

ぼくはきっと間違っていたのだろうと思う。
人間という命の期限を定められた種族のことを、心の何処かであまりに弱く、力なく、恐るるに足らない者たちだと感じていた。それは、ホビットやドワーフにおいても、同じことだった。
ぼくは過信していたに違いない。
自然と同化し、永遠に行き続けるエルフという存在に甘えていた。
見てごらん。
アラゴルンが涙を流している。
ボロミアの亡骸の前で膝を付き、嗚咽を洩らしている。
限りある命を持つ人間には、弱いからこそ強く生きようとする確固たる意志があるものだ。それは情熱。燃え尽きることを承知で、己の心に炎を灯す。消えたときの暗闇を知りながら、その瞬時の輝きにすべてを託す。
誰も教えてはくれなかった。
エルフこそが、神に愛されし種族だということ以外は。
違うと、ぼくは感じていた。
本当に神に溺愛されたのはエルフなどではなく、人の子なのだということを。儚い命を繋ぎ、誰にも支配されることなく、過分な恩恵を受けることもなく、自らの手で次々と未来を切り開いていく人間達。自分の命が果てても、その子に血は受け継がれ、またその子が亡くなれば、次の命へと血は脈々と受け継がれていく。それもまた――永遠に違いない。
そして、友が死ねばこうして涙を流して別れを告げる。
彼の栄光を称え、彼の遺志を継ぎ、額へ愛印を刻みつける。
ぼくは、涙を知らない。
傷付いた心は風が過ぎ去るように、あっという間に彼方へと流されてしまう。
だからボロミアの死に顔を見て痛む胸も、きっとすぐに癒える。
ぼくはエルフだ。悲しくなどない。
こんな非情な種族を、きっと神は愛したりなんかしない。


◆ 哀しみのエルフ ◆


旅の仲間は船路の終焉とともにオークの襲来に遭い、三方に離散した。
フロドはモルドールの火口へと向かい、どうやらサムは彼の友人として運命を共にすることを選んだようだ。メリーとピピンはオーク達に攫われたのだと、息を引き取る寸前にボロミアの口からアラゴルンが聞いた。
そしてぼくたちは、彼らの救出に向かうことになった。フロドがサム以外の同行者を拒んだことは、指輪所持者である彼自身の意志だ。小さな心に強く刻み込まれた使命感。ぼくたちは、それを尊重することしかできない。
だからこそ、彼の友人二人の救出は絶対に果たしたかった。
ボロミアが命を掛けて守ったメリーとピピンを、ぼくたちは必ず取り戻す。その決意を胸に、異種三人による追跡の旅は始まった。
ぼくが持つエルフの耳と目と衰えない体力が彼らに少しでも役に立てばいい。
それだけを思った。
流せない涙の代わりに、皆が持ち得ないぼくの能力をすべて使って欲しかった。

昼間はほとんど休憩を取ることもなくオークの足跡を辿って大地を駆け抜けた。ギムリは少し遅れがちだったが、それでも必死に後を付いて来る。「おれたちの自慢は瞬発力なんだ。どんな敵が来ても一網打尽さ。敵を逃がしちまうヘマなんてしないから、こんな追いかけっこはありえんよ。だから、走るのが苦手というわけじゃない。慣れていないだけなんだ。分かるかレゴラス?」
息を荒げながら必死で言い訳をするギムリに、ぼくは笑って頷いた。
「あなたのこのがんばりは、きっとドワーフ族の語り草になるに決まっている! それはすごいことだよ我が友ギムリ!」
「そりゃありがたいね」
ギムリは丸っこい目をくるくるさせながら、甲冑に覆われた頑強な肩を大きく揺らした。
「さあもうひと駆けだ。アラゴルンはあんな先へ行ってしまったよ」
ぼくは、一日中走り続けてもいっこうに息を乱さないアラゴルンの背中を眺め、少しだけ目を細めた。黒々とした岩の間を駆け上がり、全身でオークの気配を感じ取ろうとしている。それからぼくとギムリを振り返り、「早く」という仕種をした。
一日目、ぼくたちは夜の間オークどもの追走を断念せざるを得ないことを皆で話し合って決めた。彼らの足跡が暗闇に紛れ、見逃してしまう危険性があるからだ。もし見失ってしまった場合、もう一度辿ってきた道筋を手繰り、方向修正しなくてはならなくなる。そのリスクを恐れ、ぼくたちは夜間互いに不寝番をしつつもどかしい時間を過ごした。
三日目。さすがのアラゴルンの顔にも疲れの色が見える。ギムリも気丈に振舞っているものの、かなりまいっているに違いない。ぼくはといえば、風や大地が教えてくれるオークどもの行方をただ探ることしかできなかった。
その夜は各々レンバスを齧りながら、メリーとピピンの身を案じ、フロドとサムのモルドールへの道のりが少しでも彼らにとって易しいものであることを祈った。自然と口数は減り、ギムリなどは疲労が溜まった両足を投げ出して、いつの間にかこくりこくりと寝息を立て始めた。ぼくとアラゴルンはそんな可愛らしいドワーフを見つめ僅かに微笑み合い、二人で不寝番を交代することを約束した。
どれだけ走ろうと、ぼくの躰は疲れを知らない。できることなら一晩中、いや、二人に安息の眠りが与えられるその時までひとりで寝ずの番を願い出たいくらいなのだが、それをアラゴルンは決して許そうとしない。強い責任感とリーダーシップ。そして優しさと厳しさ。彼の中には、人間の王になるべく自覚が確実に育ちつつある。
いつか、こうした彼の立派な姿を多くの人達が憧憬の眼差しを持って眺める日が来るのだろう。遠くない未来。そのときぼくは、胸を張って闇の森へ帰ることができる。そして父に、皆に、帰還を果たしたアラゴルンの雄姿を歌にして伝えよう。例えいつか愛する森を捨て、西の国に旅立たなければならない時が来たとしても、決して色褪せることがないようにぼくはいつも歌い続けよう。
共に戦い、共に傷付き、そして共に旅を続けた愛すべき人間の姿を。
いつの間にか、ぼくは眠りに落ちていた。目には空一面に輝く星が映り込む。エルフの眠りは、瞼を伏せることのない心の眠りだ。夢と現の狭間で記憶と幻が交互に揺らめき、重なり合い、融合し、離れては戻ってくる数々の夢想。
ぼくは思い出していた。
まだエステルという幼名で呼ばれていた頃の若きアラゴルンの姿を。ぼくを黒い瞳で真っ直ぐに見つめ、大人びた態度で「こんにちは、闇の森のレゴラス王子」と畏まった挨拶をした。それから瞬きを繰り返す間に彼は成長し、ぼくの知らない間にひとりの剣士になっていた。どこか世を投げ捨てた表情と、それに反し、強く熱い魂を秘めた双眸。
多くの宿命を背負ったその背中は、ぼくたちが吐息を洩らすほどの短い時間の中で、覚悟と責務に覆い尽くされていた。
助けたいと思った。もし彼に自由を与えられることができれば、エステルの瞳はその名の通りもっと希望に満ち溢れた明るいものに変わっただろう。そんな彼を、ぼくは見たかったのだ。エルフの小さな望み、いや、戯れのようなものであったかもしれない。
だがこうしてアラゴルンと旅を続けるうちに、すべては杞憂であることを知った。彼にはすべての宿命に立ち向かうだけの勇気があった。強さがあった。
それは――ぼくのような若きエルフの軟弱な手など必要としないほどに。

そのとき、開いた瞳に遠く反射していた月光が揺らいだ。
ぼくが胸の上で組み合わせた指を解こうとすると、それを遮るかのようにその上から熱い無骨な手が重ねられた。
「眠っているのか、レゴラス」
優しく囁かれるその人の声。一瞬、ぼくはまだ夢の中を彷徨っているのかと思った。そして、もう少しだけこの熱い手を感じていたいと思ってしまった。動かずにいると、夜空だけを映していた瞳に、アラゴルンの顔が映り込む。頬が扱け、精悍さが増した顔つき。限りある時間を見つめる瞳は、昏く、そして美しかった。
「……ぼくは、眠っているよアラゴルン」
自然と、自国の言葉で伝えていた。ぼくの顔を見下ろすアラゴルンが静かに微笑み掛ける。
「ならば、もう少し眠るといい」
彼の口から零れたのも、エルフの言葉だった。ぼくの胸に重ねられていたアラゴルンの手が離れたそのとき、今まで感じたことのない心細さというものを感じたような気がした。背中が震えた。けれど、その手はまるでぼくの怯えを知っているかのようにすぐに戻ってきて、今度はぼくの頬をそっと包み込む。
「安らかな眠りを」
子守唄のような優しい声。
遥か遠い記憶の彼方、ぼくがこの世に生まれ出たとき、同じような声を聞いたような気がする。まるで小さな木の窪みにたまった雨水が、朝露とともに溢れ出すかのように、ぼくの唇から自然と言葉が零れていた。
「ならば、あなたからのキスを」
戦死したボロミアの額に最期の口付けを落としたアラゴルンの姿を、ぼくは思い出していた。「静かに眠れ」と囁いたあの声が、今はぼくのためにある。アラゴルンもそれに気付いたのか、少しだけおかしそうに瞳を細める。そして顔を近づけ、ぼくの望み通り額に優しく唇を押し当ててくれた。
「……レゴラス、お前は眠っている。だから、すべては夢の中のできごとだ。俺は今だけ、お前の夢の住人となろう。朝陽とともに消える、陽炎のような幻に」
アラゴルンのその言葉の意味が、ぼくには分からなかった。
彼の黒髪の向こうには、やはり変わらぬ輝きを放つ星々が夜空に散っていた。
世界が、今この場所だけ切り抜かれてしまったかのような錯覚に陥る。これが、彼らの感じる「限りある時間」なのかもしれない。
やがて一度離れたアラゴルンの顔が静かに近付いてくると、慈しむような優しさでぼくの唇に自らの唇を重ね合わせた。頬に添えられたアラゴルンの手のひらが、ほんの少しだけ体温を上げたように思えた。しかし、すべては微風のようにほんの一瞬にして過ぎ去り、アラゴルンはぼくが瞬きをしている間に視界から姿を消してしまった。
ぼくはまだ身動きができない。
彼の言う通り、すべてが夢幻なのだと感じた。
そして、アルウェンを思った。
彼女に贈られるべき一万回のキスのうちのひとつをぼくが受け取ってしまったことを、少しだけ詫びた。
しかしアラゴルンが言うようにこれは夢であるから、ぼくだけの秘密にしようと思った。きっと雲のように軽いぼくの唇は、いつかギムリにだけは囁いてしまうかもしれないけれども。
――人は強い。
こうして、他者との戯れの中に愛する人を思っているに違いない。
ぼくの唇を越えて、恋しい人に愛を囁いたに違いない。

ぼくはゆっくりと目を閉じた。
周囲が闇に閉ざされた。
眠りではなく、悲しみの意味を、ぼくは見つけ出してしまったのかもしれない。

2004年04月07日(水)



 アラレゴ小説第二弾

ガンダルフの死。泣きじゃくるホビット達と、途方に暮れる人間とドワーフ。その中で一人だけ困惑の表情を浮かべた者がいた。
若いエルフに、「死」の定義は存在しない。「消えること」「いなくなること」「姿が見えなくなること」それらが「死」とどう異なるのか、きっとレゴラスは解からない。
だから、ガンダルフが死んだことを理解できない。
不死の命を持つエルフには、受け入れられない。
死とは、「虚無」なのだということを。

 
◆永遠と刹那 ◆


「レゴラスはどこだ?」
「ガラズリムたちのところへ行ったきり戻ってきてないぞアラゴルン。久しぶりに仲間にあって、里心が付いちまったのかもしれんな」
そう答えたギムリは少しつまらなそうな顔をしながら、自慢の斧の手入れを続ける。ロスロリアンの辿り付き、ガラドリエルとケレボルンへの謁見を果たした後、エルフ達が噴水の近くに張ってくれた大きなテントの中で、旅の仲間達は失ったガンダルフへの哀悼をおのおの噛み締めていた。フロドは口数が減った。サムはそんなフロドの側から離れようとしない。メリーとピピンは元気に振舞ってはいるものの、その小さな瞳には親を失った幼子のような不安や戸惑いを常に浮かべていた。ボロミアも同じだ。だが彼はそれ以上に、ガラドリエルの存在を強く意識していた。心の中で葛藤を続けているのだろう。彼自身、自分が日に日にフロドが持つ指輪の力に吸い寄せられていることを強く自覚しているのだ。抗いたい気持ちと、世界を覇する指輪を手に入れたいという甘美な欲望。ゴンドールの栄光を誰よりも強く願うボロミアだからこそ、どうしようもない焦りと苛立ちにさいまれているのだろう。傍らにいるアラゴルンには、それが痛いほどよく分かっていた。
そのボロミアは今、テントの中で静かに仮眠を取っている。彼の眠りが、今この時だけでも安らかであることを祈りたい。
「あいつは……もう旅に加わらないかもしれないな。そう思わんか?」
ボロミアの眠るテントを眺めていたアラゴルンを見上げ、ギムリが斧を研ぎながら言った。彼もまた、ガンダルフを失った戸惑いを押し隠し、武器に磨きを掛けることで彼の弔いを果たそうとしている。強い男だ。
「あいつ? ボロミアのことか」
「違う。尖がり耳のエルフのことだ。裂け谷でエルロンドが言ってたじゃないか。この旅は決して定められたものじゃない。抜けたくなればいつでも抜けていいってな。あの王子様には、少し辛すぎる旅になっちまったんじゃないのか。エルフってのは死なないんだ。死ぬってことがどういうことなのか分かっちゃいない。ガンダルフが逝っちまったときのあいつの顔覚えてるかいアラゴルン? ありゃショックを受けたというより、何がなんだかわけが分からなくなっちまった顔だ。見知らぬ場所で突然置いてきぼりをくらった子供みたいにな」
「あんたは優しいな」
アラゴルンが言うと、ギムリはふんと鼻息を荒くした。
「とにかく、あいつにはこれ以上旅は無理だ。おれはそう思うがね」
「俺も無理させるつもりはないよ。彼の意志を尊重しよう」
「これでやっとせいせいするわ」
それが強がりだということは、彼の淋しそうな顔を見ればよく分かる。アラゴルンが知らないうちに、彼らは誰よりも強い友情を深めていたのだろう。アラゴルンは斧を研ぎ続けるギムリの肩を軽く叩いてテントの外に出た。
美しいロスロリアンの森。陽光よりも優しく、月光よりも暖かな光がきらきらと辺りの深き緑を照らし出し、幻想的な景色をより一層荘厳なものに見せていた。指輪の恩恵を得た森の姿だ。何度か赴いた闇の森も息を呑むほどの美しさがあったが、そこに住むエルフ達には優雅さよりも強さが際立ち、天恵の力を借りずとも自らの手で森を守り抜く潔さが存在した。
アラゴルンはそこから生まれた若きエルフの姿を探した。
まだロリアンへの滞在は幾日か続きそうだったが、それほどゆっくりとしている暇もない。できれば、早いうちに彼の意志を確認しておきたかった。
共に旅を続けるのか。あるいは――ここに残るか。
しばらく北方へ向かい歩き続けてみたが、時折西方の言葉で歌われたエルフの声が響き渡るだけで、レゴラスの姿は見当たらない。上ばかりを見て歩いていたために、首も痛くなった。
アラゴルンは仕方なく一息吐くと、少し声を高くして「レゴラス」とその名を呼んだ。エルフの耳にならば、このくらいの声は風に乗って届くだろう。案の定、さほど待つこともなく木々の間から金色の髪が覗いて見えた。
「ぼくを呼んだのは君だねアラゴルン」
「どこにいた?」
「ハルディアと一緒に北へ。悪しき者達の気配が強かったから」
歌うようにそう言ったレゴラスは、手に持っていた弓を背に差しながら近付いてくる。ロスロリアンの森にも愛された北方の国のエルフは、今まで以上にその美貌が際立っていた。金色の髪は綺麗に結い直され、彼の動きに合わせ波のように麗らかに靡いた。
「少し話しがあるのだが」
「針路の相談ならば、皆とともに聞こう」
「そうじゃないんだレゴラス。お前のことだ」
「ぼくのこと?」
不思議そうに小首を傾げたレゴラスだったが、「じゃあ、あの辺で話そうか」と樹木の間に開かれた野の窪地を差し示す。アラゴルンは頷いて、彼に従った。
レゴラスは背負っていた矢筒を傍らに置くと、太い木の根にちょこんと座る。アラゴルンはレゴラスに向かい合うようにして腰を下ろした。
「話っていうのはなに?」身を乗り出し、無邪気に訊いてくるレゴラスの姿を見ていると、彼がガンダルフの死を忘れてしまったのではないかと少し心配になる。ギムリと話したことはすべて杞憂だったのか。しかし、仲間の死を全く意に介さない人間を、今後仲間として呼んでいくことができるのだろうかと、新たな不安が胸を過ぎる。
「レゴラス、お前は最近みんなを避けてないか?」
「避けてる? なぜ?」
「ロスロリアンに着いてから、ほとんど姿を見かけない。こうして名を呼ばないと、話すことすらできない」
「それは……」
初めてレゴラスが口篭もった。やはり、図星なのだろうか。
「ガンダルフが死んだことを、お前はどう思ってる?」
「もちろん悲しいよ。悲しいに決まってるじゃないか。彼はぼくたちの先導者だった」
「じゃあなぜ、旅の仲間と悲しみを分かち合おうとしない」
「待ってアラゴルン」
レゴラスはそう言うと、透き通るような蒼い瞳でアラゴルンの顔を見つめた。こんなに間近で彼をまともに見るのは初めてだった。白い肌と、神が創作したとしか考えられない美しい相貌。レゴラスは長い睫毛を僅かに震わせた。
「あなたは、ぼくを誤解しているね。ぼくが若いエルフだから、人間の痛みが分からないと思っている。死ぬということを理解できないから、ガンダルフの死を悼まない。あなたはそう思っているんだ」
「そういうわけじゃない」
レゴラスは小さく首を振った。
「嘘はあなたらしくない。確かに、ぼくは君たちと比べたら、死ぬということを身近に感じられないかもしれないね。けれど、胸を締め付けるこの痛みは君たちとなんらかわるところはないよ。誰かを失うということは、とっても悲しいことだもの。辛くて、辛くて、息もできなくなるくらい」
レゴラスは膝の間で両手を重ね合わせ、何かに耐えるようにぎゅっと握り締めた。
アラゴルンは、彼を誤解していたことに気付く。陽気で天真爛漫な普段の彼の姿とは掛け離れたその悲痛な声は、決して贋物などではなく、彼の心もまた自分達と同じように深い哀しみに満ちていることを思い知らされた。
「……すまないレゴラス。実を言うと、お前が旅を止めてロリアンに留まりたいと思っているんじゃないかと、それを確かめにきたんだ」
「なんてひどい! ぼくが皆を裏切ると思っていたのかい?」
「裏切るとか、そういう問題じゃないんだ。この旅への参加は自由意志と決まっている。もしお前じゃなくて他の誰かがリタイアしたとしても、それは決して責められることじゃないし、もちろん後ろめたく思うことでもない。だから」
「アラゴルン、あなたは」
言葉を遮るようにレゴラスが声を上げた。「あなたは……ぼくが前に言ったことを覚えているかい? どんなことがあっても、あなたを守るといったぼくの言葉を、あなたは忘れてしまっているの?」
「もちろん覚えてるさ」
アラゴルンはそう言って、真っ直ぐに見つめてくるレゴラスの瞳を受け止めた。
「エルフは一度交わした約束を決して破らない。永久に生きる種族には、嘘も偽りも何の意味も持たないからね。真実だけを伝えるためにぼくたちの声はあるんだよアラゴルン」
「レゴラス……」
「ぼくはアルウェンにも約束したんだ。君と友に旅に出ることができない彼女のために、ぼくがこの手であなたの愛する者を、国を統べるべき王としてお返しすると」
レゴラスはそう言うと、僅かに視線を足元へと落とした。組み合わされた手は、関節が白く浮き出るほど強く握り締められている。いつかの夜、アラゴルンは彼の手がひどく冷たかったことを思い出した。
なぜか今、それを確かめたくなった。アラゴルンは伸ばした手で、レゴラスの手に自分の手のひらを重ねる。触れた彼の手はやはり痛いほどに凍えていた。
「……どうして、お前の手はこんなにも冷たいのだ」
呟くような、問い詰めるような声になった。
「それは……」
レゴラスは戸惑ったような顔をして、その先の言葉を飲み込んでしまった。アラゴルンは、黙って彼の手をぎゅっと強く握り締める。多くの弓を引き続けても決して痛むことのないしなやかな指先が、この時だけは壊れてしまいそうなほど脆く思えてならなかった。王になるべく自分を守ると言い張るレゴラスだったが、アラゴルンは自分の中で彼が守り抜かなければならない存在に変化しつつあることに気付く。
大切な旅の仲間のひとりとして。
そしてこの冷た過ぎるエルフの手を、いつか自分の手で温めることができるように。
今の弱い自分の両手では、まだ何もしてやることができないから。
「――レゴラス、共に戦い、共に生きて戻ろう」
アラゴルンの言葉に、ようやくレゴラスは端麗なその顔に微笑を浮かべた。
「この手は、あなたを待ち望む多くの人達のために捧げておくれよ」
アラゴルンの手から自分の手をそっと引き抜いたレゴラスはそう言うと、木の幹からすらりと立ち上がった。
「ギムリがお前をひどく心配していた」アラゴルンはそんなレゴラスを見上げて言う。
「彼ったら。ぼくが親友を置き去りにするやつだなんて思っていたら、ひどく怒ってあげなくちゃ」
「そうだな」
「これからは出来る限り皆の側にいることを約束するよ」
アラゴルンも立ち上がり、少しだけ低い位置にあるレゴラスの透き通った瞳を見つめて言った。
「ああ、これからは出来る限り皆の側に――そして、俺の側にいると約束してくれ」
含んだ言葉に気付かないレゴラスは「もちろんさ」と笑い、そのまま仲間のいるテントに向かって軽やかな足取りで帰っていった。
残されたアラゴルンは、金色の陽射しに映える若木のような後ろ姿を見送りながら、ひとつ小さく吐息を洩らした。手のひらには、握り締めたレゴラスの細い指先の感触が残っている。自分の中に決して存在してはならない天秤が静かに揺れ始めたことに、アラゴルンは気付いてしまい、それを理性により無理やり押さえ込むことを選んだ。いや――選ぶことしか彼にはできなかったに違いない。
それが、王としての定めなのだから。

+++

「お前はどうしようもない大馬鹿の意地っ張りエルフだ」
「なんてひどい言い種! ギムリ、ぼくは最初から決めていたことだよ。どんなに辛くてもこの旅は続けるってね」
レゴラスに誘われ、共に美しきロリアンを散策していたギムリは、背の高いエルフを見上げるようにして不満げに鼻を鳴らした。顔半分を覆うたわわな黒髭がぶるりと震える。
「アラゴルンはご法度だぞレゴラス。あの男はもう、心を捧げる女性がいる。それも、種族を越えた尊い愛がある」
「何を言っているのギムリ? おかしな人だね。アラゴルンは大切な仲間だよ。あなたや、フロド達と同じように」
そう高らかに言うレゴラスの声が、静かな森に響き渡る。
「それは、エルフ王スランドゥイルの息子の名にかけてか?」
ギムリの言葉に、レゴラスは何も答えずただその端麗な顔に微笑を浮かべただけだった。
「ああ、我が親友よ……」ギムリが空を仰ぐ。
「ぼくはあの人を守ることができる今が幸せだ。それ以上を望むことなんてあるはずがない。アルウェンが永遠を捨て彼のために生きるというその強さは、ぼくには得られないものだもの。二人が一日でも早く幸せに結ばれることをぼくは心から祈ってる」
「だけどお前さんは、エルフの代表として永遠の命を掛けてこの旅に参加している。それも強さに違いない」
「あなたって人はなんて優しい!」
「茶化すんじゃないよエルフの旦那。とにかくおれは忠告したからな。あとはお前の問題だ。旅が終わるまでにその病が綺麗に治っていることをおれは願っているがね」
「エルフが病気になんかなるものかい」
レゴラスはそう笑い、ギムリの肩を拳でトンと叩いた。
兄弟のような絆を持ち始めたこの若いエルフは、少し自信過剰なのかもしれないとギムリは思う。ほら見てみろ。蒼い空を見上げるその同じ色をした瞳がやけに切ないじゃないか。エルフにとって人間の一生など瞬く間に過ぎていくものだろう。すぐに跡形となく消えていくその一瞬の情火に胸を焦がすのは、あまりに哀れじゃないか。その恋が最初から実らぬものだと分かっていればなおさらだ。
ギムリは先を行くレゴラスの細い背中を見つめた。
我が友よ。
なあ、そう思わんか?
その瞳が追うお人は、あんたのものじゃない。
あんたのものじゃないんだよ、レゴラス。

この時ほど、ギムリは自らの生がエルフとともに永遠に続かないことを悔やんだことはない。彼には、きっといつか深く傷付くだろうレゴラスを慰めていくだけの時間が欲しかったのだ。
叶うことのない願いが、この世には多すぎる。
ギムリは少しだけ肩を落とし、レゴラスの後を追った。
ロスロリアンの優しい風が、そんなドワーフの背中をそっと支えていた。


2004年04月05日(月)



 腐女子的感動映画

パソコン崩壊でヤケくそになった天竜さんは昨日DVDを借りて部屋に篭ってひとり鑑賞会してました。
その中でお薦め作品。
まずはフランス映画「メルシィ!人生」
ゲイじゃないのにゲイだとカミングした冴えない中年男のサクセスストーリー。めちゃくちゃ笑えました。フランスコメディ侮れぬ!昔ですね、ほんとに一時期ですがフランス映画に嵌ったことがありまして、コメディといってもいつものようにシュールな作品なのかな〜と思っていたのですが、ずぇんずぇん違ってですね、ほんとにお腹痛いくらい笑いました。画面に向かって突っ込みまくりです。

もう一本、これはチェコとイギリスの合作映画になるのかな?結構有名な作品だと思うのですが「ダーク・ブルー」1940年代の戦争もの(パイロットもの)です。これはね〜もうね〜、主役の中年パイロットフランタと、新米パイロットのカレルの二人の関係が、ヒイヒイ言っちゃうくらいステキでした。ドイツ軍に支配されたチェコスロバキアの空軍基地から、イギリス空軍へ移り、空を飛ぶことを決めた男二人。結局、ひとりの女性を好きになってしまうことで関係がぎくしゃくしてしまうのですが、それでも互いに互いを想い合う気持ちに胸キュンです。泣いちゃう泣いちゃう。
私のお気に入りのシーンは、爆撃を受け農場に不時着したカレルを、自分の操縦する一人乗り用飛行機に無理やり乗り込ませ、二人で空を飛ぶ場面。カレルを膝の上に乗せて、「計器が見えん!ごそごそ動くな!」と文句を言いながらも楽しそうに操縦するフランタがかなりエロオヤジっぽくて可愛かったです。カレル役の俳優も坊や坊やしていてコンチクショーってなくらいキュートでした。
そもそも、わたくしチェコの男にはからっきし弱いのであります。

つうことで、興味のある方はゼヒ!どうせ男同士がイチャイチャしてる映画しか観ていないけどさ!

2004年04月04日(日)



 ショック!

すいません、とうとううちのパソコンがブチ壊れました(泣)
えっとですね、今メールの受信ができません。申し訳ないですが、ご用件やご連絡のある方は掲示板にカキコしてくださいませ。

今週中にでも急いで買い換えようと思っているのですが、小説の更新がちょっと危ういです。何週間かネット落ち状態になるかもしれません。とりあえず、日記だけは会社からでも書けるので、何かあればここに書いてゆきます。どうぞちょくちょく覗いてやってみてください。場繋ぎアラレゴ小説だけは書けたらここにアップしてゆきますね。

2004年04月03日(土)



 オリジナル「隔世の証」十五話目アップ

さ〜て〜、隔世十五話目アップです。今日は仕事でムー民とスナフ禁に囲まれていたので心はメルヘンです。しかし、小説の内容には反映されていませんのであしからず。

2004年04月01日(木)
初日 最新 目次 MAIL