|
|
■■■
■■
■ ヴィゴ再来日記念!
ヴィゴに「ハルウララタスケテネ〜」とか言わせてる場合じゃないですズェ!!<ちょっと笑っちゃったけどさ!
ということで、ヴィゴがヒダルゴのプレミアで再来日しました。嬉しいですね〜。髪の毛がちょっと伸びて受け受けしいことこの上ないのですが(笑)、相変わらずカッチョイイです。武幸四郎になればヴィゴに花束渡せるのかと思うと、今から乗馬クラブにでも入ろうかと考えてしまいます。というかその前に頑張れダイエッツ!
ああ〜、違うんです違うんです。こんなアホなことを言いたかったわけではなく、ヴィゴ来日記念!つうことで書きましたよアラレゴ小説イエー!<関係ないし。 (中途半端に読んだ)小説と映画がごっちゃになって、キャラがこれ以上ないほど曖昧ですが、まあそれはそれこれはこれ。 お目汚しですが、よろしければどうぞご一読。 とりあえず始まりということで。
************
◆その指先に生まれる気持ち◆
無邪気で奔放。どこまでこの指輪を捨てる旅の深刻さを理解しているのか傍目には分からない。草一本さえ生えぬ不毛の大地を歩き続けても、躰の骨という骨を芯から凍らせてしまうような吹雪の中でも、近付く悪鬼に道を塞がれようとも、この闇の森のエルフは時折場違いとも思えるような涼やかで穏やかな笑顔を見せる。 汚れることのない金糸のような髪を揺らし、まだ幼さすら残る美しい顔で空を仰ぎ、若木のようにしなやかな肢体で軽やかに歩き続けるエルフ。アラゴルンは知らず知らずのうちに、そんなレゴラスの後ろ姿に見入ってしまっていた自分に気付き、思わず苦笑を浮かべる。 「どうしたのさアラゴルン、思い出し笑いなんてしてのんきだね」 敏感に他人の視線を感じたレゴラスが振り返った。そう言った本人が誰よりものんきそうな表情をしているのだが、アラゴルンは大人の分別でそれを受け流した。 「そろそろ陽が落ちる。できれば距離を稼ぎたいが、みんな疲れているようだからな」 「休めそうな場所、探してこようか?」 どこに敵が潜んでいるか分からない。ひとりで行くなとアラゴルンが口を開こうとする前に、レゴラスはボロミアと一緒に先頭を歩いていたガンダルフに声を掛けながらさっさと列から離れていく。まったく、この若いエルフは人の話を最後まで聞くということを知らない。何度言っても直らない。 「まったく落ち着きのないやつだ。あんなエルフは中つ国じゅうを探しても一匹だけに違いない」 アラゴルンの言いたいことをすべて代弁してくれたのは、隣を歩いていたドワーフ族グローインの息子ギムリだった。エルフとは犬猿の仲だが、レゴラスを相手にすると少々勢いを削がれてしまうのか、不満そうな声の中に険悪さはそれほど含まれていない。 アラゴルンは微笑んで、そんなギムリの肩をポンと叩く。 しばらく歩き続けると、前方に見える小山の頂に細い影が揺れた。 「みんな早くおいでよ! この下の緑は深くて暖かい」 決して声を張り上げているわけではないのだが、風に乗ってレゴラスの声はよく通る。その声を聞いたピピンとメリーが先を争うように駆け出していった。サムはフロドの後ろを歩きながら、たっぷりと食材の入った荷物を背負い直す。ボロミアは一度レゴラスの姿を確認すると、列から離れて木立の中へと入っていく。薪を拾いに、あるいは食料になる獲物を探しに向かったのかもしれない。ガンダルフは杖をふりふり頂を目指し、ギムリもレゴラスに先を越されたのか悔しいのか、小走りにその後をついていく。 しんがりを務めるアラゴルンは一度立ち止まり、周囲に怪しい気配がないことを確認してから、頂までいっきに駆け上がった。 「ガンダルフ、辺りを少し見てきます」 警戒してしすぎることはない。早速愛用のパイプを燻らせはじめたガンダルフは、もじゃもじゃした眉毛を動かしながら、「用心してゆけよアラゴルン」とだけ答える。彼の頭の中は、今後の針路のことでいっぱいだ。皆をできるだけ早く、できるだけ安全に導く魔法使いは、思案顔のまま煙を勢いよく吐き出した。 アラゴルンはひとり丘を駆け下りると、地面にそっと手を置いた。不穏な動きは感じられない。眼にも、耳にも、引っ掛かるものはない。今夜は久しぶりに充分な眠りを皆に取らせることができそうだ。 夕闇に閉ざされ始めた霧ふき山脈を横目に、アラゴルンはもう少し辺りを探索しようと草薮の奥へと入っていく。鳴神川からは幾分東にきてはいるが、端流でも見つけることができれば、水を汲むことも、躰を洗うこともできる。 次第に深くなる草薮をくぐり、アラゴルンは先へ進んだ。後ろを振り返ると、控えめながら細い煙が上がっている。さっそくサムが食事の支度を始めたらしい。荒野で火を使うことはできるだけ避けたいが、最初から皆の安らぎをすべて奪ってしまっては、厳しい旅は続けられないだろう。 しばらく歩くと、徐々に足元の石が丸みを帯びてきた。いい兆候だ。だが、アラゴルンが駆け出そうとするのと同時に、その行く手を遮るように前方の岩陰からひらりと何かが舞い降りた。 「抜け駆けはずるいな」 悪戯をしようとした我が子を見つけた母親のような笑みを浮かべたその人は、両手を腰に当ててアラゴルンの目の前に立ち塞がる。 「人聞きが悪いなレゴラス。周囲にひそむ者がいないか確認をしているだけだ」 「水はなかったよ。残念ながら」 アラゴルンの言葉を先回りして、レゴラスは小さく肩を竦める。「川が流れていた跡はあったけどね」 「そうか。水があればいい休息になると思ったんだが」 「朝露で喉を潤せばいい」 アラゴルンは笑う。「皆がエルフであればな。ホビットもドワーフも、それじゃあとても物足りないだろう」 「まったく不便な生き物達だ」 神に愛された種族は、そう言って優雅に身を翻すと、皆が集まっている頂とは反対方向に進んでいく。 「どこへ行くつもりだレゴラス」 「あなたが欲しいというのなら、もう少し水を探そうかと思って。湧き水ならばどこかにあるかもしれない」 「無理をするな。いくら疲れを知らないといっても、皆が休んでるときはお前も休め」 「それはこっちのセリフだよアラゴルン。人間は人間らしく、ゆっくりと休んでいればいい。君は少し頑張り過ぎている。そしてぼくを頼らないなんてどうかしてる」 レゴラスはそう言うと、青い瞳を少しだけ細める。怒っているのか? 珍しい。 「臍が曲がってるぞ」 「失礼な。見たこともないくせに」 まるで子供相手の喧嘩だ。二千年近い年月を刻み続けてきたであろうその双眸に、年輪や老齢の陰は微塵も見られない。誰よりも冒険好きで、好戦的で、好奇心旺盛なこの若いエルフは、ある時は人間以上に人間くさい言葉を発し、すました顔をしている。手に負えない。 「いいから、戻ろうレゴラス」 「皆のもとへ? それならばひとりでお帰りよアラゴルン。ぼくはもう少し探してみるから」 「その我が儘な口を糸で縫い合わせるぞ」 「できるもんならしてみなよ」 つんとした顔で言い返したエルフは、そのままふわりと飛び跳ねると、現れ出たときと同様、一瞬のうちに姿を消してしまった。 アラゴルンは溜め息を吐く。 エルロンドがなぜ旅の仲間にこの年若きエルフを加えたのか、理解するのにはもう少し時間が掛かりそうだ。草木に守られるように姿を消したレゴラスの姿を見つめながら、アラゴルンはしばし途方に暮れた。
その夜、最初の不寝番を申し出たボロミアに、次は自分を起こすように声を掛けたアラゴルンは、すでに寝仕度を始めた仲間の輪の中に入り、擦り切れたマントを毛布代わりにして草の上に寝転がった。 レゴラスはあの後、一時間ほどして戻り、残念ながら辺りに汲み取れるほどの水がなかったことを皆に報告した。その顔はちょっとむくれていて、アラゴルンとは眼を合わそうとしなかった。意地っ張りなエルフだ。 今は少し離れた場所で、彼も眠りに付こうとしていた。月に照らされた白金の髪が、無造作に横たわっている。 アラゴルンは目を閉じた。躰の疲れを感じるよりも先に夜の闇に誘われ、大きな使命感という重責が胸に沸きあがり、僅かな息苦しさを感じた。命を懸けて守るとフロドに誓いを捧げた瞬間から、自らの運命の歯車は確実に動き出している。野伏として過ごしてきた日々とは比べものにならないほど、アラゴルンは己の宿命というものを実感せずにはいられなかった。そして同時に、裂け谷に残してきた、愛する者の面影が蘇る。アルノール王国とゴンドール王国の統治、それを果たしたとき、彼女を妻として迎えることが許される。だが、それは彼女にとって不死の命を捨て、人間として限りある生を選ばせることになる。彼女が永遠の命を引き換えにするほどの価値が自分にはあるのだろうか。今、アラゴルンには己にそれだけの自信も資格も備わっているとは到底思えなかった。 この旅で、どれだけ変わることができるのだろうか。 答えは、夜の帳に攫われていくだけだ。 やがて、穏やかとは言えないまでも、夜の静けさがアラゴルンのもとへと眠りの気配を連れてくる。抵抗することをやめ、アラゴルンはその自然の意志に自身を委ねていった。
夜風の動きで目が覚めた。 ちょうど、ボロミアがこちらに向かって歩いてくるところだった。アラゴルンは今まで自らが横たわっていた場所を眠たそうな顔をしたボロミアに譲り、見通しがきく頂に腰を下ろした。不穏な気配も、今はまだ何もない。 神経を周囲に張り巡らせたまま、アラゴルンはパイフを咥えた。メリーから分けてもらったパイプ草の甘い香りが鼻腔を擽り、瞼に纏わりついていた睡魔も自然に成りを潜めていく。闇に向かって煙を吐き出しながら、そのゆるやかな流れを目だけで追った。 「アラゴルン」 そのとき、不意に背後から声を掛けられた。アラゴルンは咄嗟に剣の柄を握り締めたが、振り返って声の主を確認すると、溜め息とともに強張っていた躰の力をすぐに抜いた。 「後ろから声を掛けるな」 「びっくりしたの?」 「もう少しでお前の首が飛ぶところだったぞレゴラス」 そう言いながらも、万が一自分が剣を振り翳したとしても、彼であればやすやすとその刃を交わすだろうことは想像がついた。レゴラスは笑いながらアラゴルンの隣にちゃっかりと腰を下ろす。 「まだお前の番じゃないだろう」 アラゴルンが再びパイプを口に咥えながら言うと、レゴラスは抱えた自分の膝に顎をちょこんと乗せ、上目遣いにアラゴルンを見上げた。 「アラゴルン、君は寝なよ。今晩はぼくが不寝番をつとめるから。夜が明けたらみんなを起こすよ」 「いいかレゴラス。何度も言ってるだろう。例えお前が皆と同じように疲れを感じなくても、休めるときに休むのは悪いことじゃないんだ」 「でも、水を見つけられなかった。サムはスープを作れなくて残念がってた。メリーやピピンは服が臭いって文句を言ってた」 「そりゃ自業自得だ」 アラゴルンは苦笑しながら言う。だが、レゴラスは薄く眉間に皺を寄せ、爪先にある小石を軽く蹴飛ばした。 「それに、君はぼくをちっとも認めちゃくれない。ぼくは君たちの力になりたいと願ってるんだ。君と、それにアルウェンの。二人とも大好きだから」 「それはありがたい」 「アラゴルン、あなたは……」 レゴラスはそこで言葉を止め、アラゴルンの瞳をじっと見つめる。それから、ゆるゆると頭を振り、まるで無理に貼り付けたような彼らしくない屈託のある笑みを浮かべた。一瞬、泣き出すのではないかと思えるほど、それはひどく弱々しい笑顔だった。 「あなたは、一日でも早く人間の王にならなくちゃね。そうすれば、すべてがうまくいく」 「簡単に言うんだな」 「簡単さ。君が王になりたいと願えば、きっと立派な王になれる。それは君に与えられた命運なんだ。誰にも譲っちゃいけない、大切な使命だね」 金色の髪が、雲間から覗いた月に照らされきらきらと輝いた。 「ありがとう、レゴラス。こんなふうに励まされるとは思わなかった」 エルフ語で告げた言葉に、レゴラスは「どういたしまして」と同じ言葉で返した。「あなたがフロドを守ると誓ったのと同じ強さで、ぼくもあなたを守ると誓うよアラゴルン」 レゴラスはそう言うと腕を伸ばし、白く細い指先で髭に覆われたアラゴルンの頬をそっと撫でた。冷たい、指先だった。裂け谷を去るときに握り締めたアルウェンの優しい手とは比べものにならないほど、その手は凍えあまりに脆弱に思えた。 その冷たすぎる指先を暖めようと腕を伸ばしたアラゴルンから逃れるように、レゴラスはすっくとその場に立ち上がった。 「ぼくは南を見張ることにしよう。エルフの耳と目で」 微笑んだその顔に、月光が降り注ぐ。 そこには、彼が手にする弓のように、しなやかで凛々しい戦士の顔を持ったエルフがいた。レゴラスはもう一度笑顔を見せると、軽やかな足取りでアラゴルンから離れていく。なぜか引き止めたいと思ったその気持ちは、行き先をなくし夜の暗がりに溶けていった。
アラゴルンが願う己の変化が、まったく思いもしない場所から生まれ始めていたことをこの時の彼はまだ知らない。 願わくは、誰にも気付かれぬうちにその小さな息吹が朝陽に溶けて消えてしまうことを。生まれたばかりの長く悲しい恋の歌は――あまりに美しく、皆の心に残り続けるだろうから……。
************
長くて読みにくくておまけに勢いだけで、ほんとにすんまそん(泣)
2004年03月30日(火)
|
|
|