私は皆さんに謝らなければならないことがある。
少し前に、ここに、反原発映画『朝日のあたる家』を応援してる! 反原発映画だからって、上映できる劇場がないなんて、おかしい! みんなで投票して、公開させよう!
とかって熱くなっていました・・・。
今日、それ、見に行ってきました。反原発凸凹コンビのシモマンと。。。渋谷アップリンクまで。
映画はこれです。
ストーリーはこれ↓
静岡県、湖西市。自然に囲まれた美しい町。その町に住む平田一家。お父さん(並樹史朗)はいちごを栽培。お母さん(斉藤とも子)は主婦。長女(平沢いずみ)は大学生。妹(橋本わかな)は中学生。日本のどこにでもいる平凡な家族。ただ、長女のあかねは、この町が好きではなかった。大きなショッピングセンターや映画館やコンサートホールがない。就職後は都会で一人暮らしを夢見ていた。そんな時、起こった大きな地震。原子力発電所が爆発。避難勧告。1日で帰れると思っていたら、何ヶ月も避難所から帰れない。父は職を失い、母はノイローゼ、妹は病気になる。ようやく許可された一時帰宅も1時間の制限付き。荷物を取ってくることしか許可されない。福島と同じ事態だ。あかねたちの家族もまた、大きな悲しみの渦に巻き込まれて行く・・・・・・。
が。が。が。
「いちご栽培農家の一家」というという設定の部分からして???が並ぶ。。。
原発事故前の朝、いちご栽培農家のこの家の父ちゃんが、摘みたてイチゴを食卓に持って来るのだが、まず洗わない。洗うって。イチゴ農家なら、知ってるだろ? イチゴは農薬だらけだから、洗うって。しかもそれをさもおいしそうに食べる。家族で奪い合うんだ、これが。。。。イチゴ農家なら、もう、そんなもん、飽きてんじゃね? とか思う導入。
いや、違う。。。。その前の延々続く説明があった。
映画始まって1分以上。延々と、この家の長女(大学生)による「私の住む街」の説明があんだ。春夏秋冬の街の、これといって何ら特徴のない説明が。それが始まった18秒目ぐらいですでに(な、な、なんか、この映画、ダメかもしれない)の予感が始まった。
そして、その予感どおりだった。とにかく、この映画、すべて「説明」しまくんだな。ザッツ説明映画!!
あらゆるせりふが説明くさく。ナレーションは説明しまくりっ。
しかし映像は語らず。出演者の演技も語らず。しかし多分に情感あふれまくりの臭い臭い音楽がチャララ〜〜〜と流れ、語りまくってくれる。
さらにさらにっ!
家族やら近所の人らが繰り広げる日常会話は「売れない劇団」の舞台みたいな空々しさで。。。い、今どき、こんなステレオタイプで、昭和のドラマみたいな、手垢のつきすぎた展開、すんごい久々に観た気がする。
なにせ、中学生の娘がトイレの扉開けると、お父さんが新聞拡げてウ○コしてて、「お母〜〜〜〜〜さん、お父さんがああああ!」と叫ぶ、みたいなの。。。もう、尻がむずむずするレベル。
そして田舎の大学生女子の好きな音楽が「ブルース・スプリングスティーンとピンク・フロイドとレッド・ツェッペリン」ときた。。。。
い、いつの時代だ?
と、思ったら、2014年という設定だというからビックリ。
2014年のちょっとトガった気分の田舎の女子大生なら「アーケイド・ファイアーとアークティック・モンキーズとアラバマ・シェイクス」とかじゃね?
んで。2014年。映画の中でも、アフター福島ってことになってんだ。福島の事故はあって、その後で、ってことになってる。
そこへ地震が起こる。震度5。大したことないけど、映画の映し方がまたひどい。。。。ただ画面揺らしてるだけで、画面に出てくるおひな様1個、落ちない。。。
しかし原発事故が起こる。静岡県だからね。浜岡原発が事故ったってことになる。山岡原発、って言い換えてるけどね。そして政府はまた「ただちに影響はない」っていうんだが、設定はアフター福島だろ?
だったら、みんな一斉にウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアって叫んで逃げるだろが?
しない。だ〜〜〜〜れも避難なんてしない。みんな、のんび〜〜〜〜りテレビ見てる。
「反原発の闘士」っていう役柄のはずの、実際にも反原発のいしだ壱成も、のんきに主役家族の家に来てたりする。
おいおい、そこは狂ったように「今すぐ避難してくださいっ! 今すぐっ!」と叫び、娘の手をひっぱり、オヤジに「何するんだっ! オマエは娘に何をしやがるっ! 政府は大丈夫って言ってるだろ!」「お父さん、福島のときもそういいましたっ! 今すぐ逃げてください!」
とか、死闘を繰りひろげなければダメだろうに?
そんなことまったくなく〜〜〜。の〜〜んびり。体育館でガイガー測られて、すごいオーバーしてて、シャワーを3回も浴びさせられたわ、なんて笑ってる。。。
ひいいいいい。。。。なぜアフター福島って設定なのか、不思議になるなり〜〜〜〜。
いしだ壱成だけじゃなく、反原発御用達の山本太郎も出てくんだが、この役どころもなんだか、中途半端。一応、家族のお父さんを「オレといっしょに沖縄に移住しよう」と説得するんだが、説得に失敗して。そのまま沖縄に帰ってまう。おいおい。。。大事な大事な姪っ子がすでに病気で「アタシ、大人になれるかな?」とか泣いてるのに。。。。
んでもって、壱成も太郎も、当然ながら、とうとうと、とうとうと、「チェルノブイリでは」とか、原発怖い話を語りまくる。説明しまくるっ。とうとうと。
一般人がそげにしゃべれるかああああああああああああああああああああああああああああああ?
そんな一般人、いねぇ〜〜っての! いたら、もう、そんな被曝してる場所から、とっくに避難してるっての!
そしてこの2人が出るなら、逆に「原発推進の村民」とか、「お役所の原発万歳の人」とか、そういう役で出ればいいのに。山本太郎が「ただちに影響はありません」とか言う役なら面白い。いしだ壱成が「原発は安全だっ。ここはオレたちの村だっ。誰が出ていくかっ!」とか、怒る役とか。東京からやって来る、イヤらしい経産省の役人とか。そういうの演じればいいんだ。そうしたら、皮肉が効いて、面白いのに。。。。そのまんまって。。。
すべてが中途半端で。すべてが説明だけで。すべてが空回り。
お父さんは酒びたりのはずが、いつのまにかフツーになってて。
お母さんはもらった保証金の大半をガイガーカウンターにつぎこんだほどダイハードな原発恐怖症になったはずなのに、のんきにお父さんを元の家に送り出したり。娘が病気になっても、まだ近所の仮設住宅にのんびり住んでいたり。
その陰には「だってここがふるさとだから」という理由があるらしいんだが、そのふるさとにそこまでこだわる「理由」「感情」がてんで描かれてないから、ぜんぜんピンとこない。
いや、べつに、どこでもエエんでね?
と、言いたくなる。
どうやら映画を作るにあたって、実際に福島を取材したらしいんだけど、監督ってきっといい人なんだね。だから、もう、いろんな人の話を聞いて、あれも、これも、それも、どれもって、いろんな話を織り込もうとして、散漫になっちまったのかもしれない。
リアリティを追いすぎて、逆にうそっぱちになっちゃう。そういうことって、よくあるよね。。。
物語は物語なんだよ。
日常は日常。まったく違う。その全てを物語ろうとしたら、24時間を描くには、24時間が必要になる。
でも24時間を2時間で描くなら、それだけ圧縮、凝縮、集中しないと。
なんかもうね。。。。なんかもうね。。。。
うまく表現できないでいたら、シモマンが最高のことを言ったね。
「これって、再現ドラマみたいだよね」
って。
あああああああああああああ! まさに、それ! それだ! 再現ドラマ!
それなんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜。うん。
災難に出遭ってしまった家族のあれこれを再現ドラマにしてみました〜ってやつ。物語じゃない。再現ドラマ。
それを1800円も払って、しかもアップリンクの、狭い、ここは映画館じゃないだろ?という、変な椅子が並べられ、小さなスクリーン吊るしただけの部屋で見させられると、なんかもう、ひたすら「ぼったくり?」という思いしかわいてこなかった。。。。正直。
反原発なら、なんでもいいってわけじゃない。てか。反原発を描くのだからこそ、もっともっとしっかりと物語として練りこんだものを作ってもらいたい、私はそう願う。脱原発映画を作ろう!という志はすばらしいと思うし、応援したい。でも、肝心の作品がこれだと、その挙げた手はシュルル〜〜と力なく下ろされるのだ。。。
ああ。みなさん、ごめんなさい。あんなに勝手に盛り上がって。私。大騒ぎしてました。すみません。すみません。でも、盛り上がったから、一体どんななんだろう?と気になって、早めに見に行ってきたんです。こうして早めに報告できて良かったです。はい。