少し息を抜いたくらいの 恋がいい明日も明後日も来年の今頃も隣にいたらしあわせだと思えるくらいの 恋がいい
なにをうだうだ振り返ってばかりいるんだろう今一番なくさないように大切にするはずのものがこんなに近くにあるのにね
消えてほしいと願った記憶を今は時に手繰り寄せるように思い出すもうその睫の先も、服のすそも、髪の毛の色もしぐさや声の通り方、口癖なんかも霞んでしまってどれが本当だったかすらもわからないけれどすみっこにぶら下がるように残った記憶を撫ぜるように思い出すあんな風にひとを好きになったことをその恋が死んだとしてもわたしは後悔してないよ
黙ってしまう癖を直したい奥歯を噛み締めても手をぎゅっと握っても笑顔を作らなくてもはがゆいほどに言葉にしないと何も伝わらない泣かないふりなんて、してる場合じゃないんだ
どんなに意地張ったってこんなときにそばにいて欲しいのは やっぱり君だけ
ことりと心に落ちてくる君の声聞き逃さないように耳を澄ませてわたしを捕まえて
白い部分があると不安になる全部書き潰して何が必要なものだったかとか分からなくなるくらいがいい大事にポケットにしまったってきっとわたしは大事だったことすら忘れてあとで思い出して泣くくらいなら全部塗り潰して考える隙すら与えずに
夜の静寂をかき消すようにイヤフォンに耳をうずめて部屋の隅っこ背中を丸めてつま先を齧ったら小さな痛みですべてが消える消えそうな記憶を何度かき集めて何度いらないものだと気づくんだろう6分40秒の曲のあいだに息を吹き返す記憶の波に連れて行かれないように夜の静寂に飲み込まれてしまわないように音量を上げて部屋の隅っこ滲むくらいに爪を噛んで曲が終わってしまうまできみの名前くらいは 思い出すことを許して
鼻歌を歌おう季節はずれのひまわりが道路を横切る黒猫が空を覆う雨雲が後輪がパンクした自転車がいまそこにあることを鼻歌に乗せて歌おうどこに届くかだれに届くか知らないままにいい加減な歌詞にバニラの匂いのリップクリームかかとを三回鳴らしたら今にも雨が落ちてくる鼻歌を歌おういまここにいることを鼻歌に乗せてゆっくり歩いておいでよと座ってばかりいたいつかの僕に届けばいい
しとしとしとと雨が降る両の眼から雨が降る君と出会ってからよく泣くようになった心が壊れそうになる感覚を知るようになったしとしとしとと雨が降る今夜も君を思って雨が降る雨降って地固まるなんて僕の大地は固まりそうにもなく水たまりに、吸い込まれしとしとしとと雨が降るいつかこの雨が僕の肥料になればいいけれどと苦笑い嬉しくも悲しくも愛しくも今夜も君を思って雨降らす