突風がわたしを突き抜けて髪の毛も体もこころもなにもかもさらってく抜け殻になったわたしはなにを守るだろういらないもの全てとっぱらったらただ優しくあたたかく誰かを抱きしめられるだろうかそれとも呆然と枯れ果てた老樹のように大地に根っこを生やすだろうかわたしはなにを守りたいのだろうからっぽになれば分かるだろうか
とつぜん降り出した雨のようにわけもなくあふれた涙が止まらない蛇口はどこわたしは泣きたくなんてない負けと認めるのがいやだったのかもう二度と君に触れられないことが信じられなかったのかぼたぼた感情がついていかないわたしは泣きたくなんてない諦めたくなんてないのだ。
足りない言葉は温度で補って出すぎた愛は適度に冷やしてあつすぎてもさめすぎてもだめなの二人はちょうどいい温度でずっと一緒にいれるくらいの温度で流れるようにすごせばいい
誰にもつながれてない手のひらをぎゅっと力任せにこぶしに変えた爪が食い込んで痛いひとりだと思った君が優しく包み込む手のひらもう追い払ったりしないから繋いだ手のひらにぎゅっと力を込めて体温を預けて汗ばんだら一度離してこうやってわたしたちは一緒にいる
言葉に出来ないものを言葉にしようとしてつまづいた子供のようにえんえん泣いた固まってしまった瞼はもう二度と開かないみんな知っている落とせなかった涙は頬を滑ってハンカチをぬらしたあなたはどこへ行くのみんな知らないなにも言葉にできないわたしは何も知らないけれど全部分かってる風が吹いた涼しい夜雨の跡線香の、におい
道路に続く白い線暑さでゆらゆら揺れている引っ張ってもう動けない後ろに倒れるふりをして慌てた君を見て笑う大声で歌うひとの喉がかれていることに気づいた人は何人いるだろうあのひとは朝から歌ってる渇いた喉を潤してしたたる汗を拭い去りぼんやり座って見つめる道路の先の白い線もうすぐバスが来るどこに行こうどこに行こうどこへでも誰かわたしを引っ張って君とならどこへでも。もうすぐ、バスが来る
パソコンのすぐうしろでねこが寝ているそのすぐそばについさっき天に昇ったぬけがらの体外は今日も暑いでしょう今はわたしを探さないでぬるま湯の現実は苦しくてしたくなくても息継ぎをしてしまう君はそれすら出来なくなったというのにもう動かない体をそっと隠してもう少しだけ、瞼に焼き付けて君が残した何かをそっと胸へと持っていく苦しくなって。また、息継ぎ。
君が確かにそこにいることを手探りで確かめて静かに目を瞑る聞こえている音も感じている振動も感触もにおいもなにもかもわたしの中へと落ちていくまっさらなシーツを掴んで苦しみに耐える愛しさがあること、覚えた。
忘れた何かを取り戻すように進んでいく忘れたのは何だったか昨日見た夢だろうかそれとも誰かとした約束だろうかわたしのこと、だろうか。手探りで漂いながらも進んでいくおぼろげな光のほうへわたしはいつ気づくだろうそうしている今もあらゆるものを落としていることに大事な何かもがらくたも進むたび零れていくその手のひらにはもうなにも残らないというのに光ばかり目指して。
駆け足で両手を翼のように広げて流れるように過ぎ去って君はあきれるほど遠くへわたしもそこへ行きたいけれどあなたの居場所がそこであったようにわたしの居場所はここなんだろう羨ましくなるほどの笑顔でもう手が届かないわたしに手を振って君はあきれるほど遠くへわたしは苦笑いで、さよなら。----わたしの居場所。よかったら、来ない?
たった二日間しかもたなかったわたしの強がりは君の前であっけなく崩れ去った弱虫ですぐ殻を身に纏いたがるわたしを意地っ張りだと君は笑うけれどそんなこと。わたしはどうしようもなく素直なんだといつ君に打ち明けよう
あぁ、あの空が青色から緑色に優しく穏やかに色を変えていくようにわたしたちは進んでいくたとえば桃色に変わった雲の上でそっと一息休んだり流れる飛行機雲に押し流されるようにすれ違ったりもするのでしょうけれど青く澄んでいた空が濃い橙に染まりそしてまた薄く白い空が浮かび上がるようにわたしたちはたどたどしい足取りで戻りながらも進んでいく幸せなんだろう確かに
思い出せる量と同じくらい君のことを忘れてしまっている滲む霞む死んでしまうわたしは知らないうちに立ち上がって当たり前のように進んでいたとうに君を置いて思い出せる君はいつだって強がって傷つきやすい人だったわたしを捨てていった人もう言わないからわたしが思い出せるうちに一度だけ世界で一番愛してた幸せになれ