2004年06月29日(火) 瓦礫
 

空がすみれ色に溶けていくようにゆっくり
けれど確実に
君が遠くに行ってしまう
そんなことばかり思う

約束ばかりが手元に残って
なにひとつ叶わなかったと
泣くのだろうか

彼と、
君より前に愛した人と、
同じように。

怖くて
約束すら残せない
もう二度と同じふうにならないと決めたのに
わたしは泥水を舐めるかのように
そんなふうに愛してしまった

空が沈んでいく
ゆっくり、ゆっくり
わたしは遮るように目を閉じた

目を覆ったまま
ただひとつ
君がいなくなったら
世界は壊れてしまう

それだけ、どうしようもなく分かる





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2004年06月21日(月) バニラ。
 

胸の奥に小さな灯りが燈る
まるでアロマキャンドルのような
甘い匂いを漂わせて

心地いい
心地いい
なぜか少し切なくて
なにかが込み上げてきて泣きたくなる
けれど途方もなく愛しい

たとえば誰かの腕の中のような
絶対的な安心感
君を見つけるたび
そんなことを思う

君は知らない
きっと、君は知らない。

こんなに静かな夜は部屋の明かりを消して
胸に宿った小さな灯火を確かめる

心地いい
けれど少し切ない
漂う甘い匂いは
どこか君に似ている






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2004年06月19日(土) 遠く。
 

頷くふりをして
大好きな平凡な空を見上げる
そうやって
君はいつだってわたしを見ようとしないで
遠くばかり
わたしの行けない遠くばかり

騙すなら
隠すなら
もっと上手くして
甘い夢を見たまま
騙されるように
辛い時間が少しでも短くなるように

君の行きたい世界は
いつだって遠く
大きく
ここから見えない世界
わたしのいない世界

わたしは
君のいなくなった世界で
遠くを見て
立ち止ったまま

君はいつだって遠く
もう空気すら違うような
そんな世界で。





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2004年06月18日(金) 呼ぶ声
 

突然降り出した大粒の雨に
窓に鼻を押し付けるようにして
見上げた

アスファルトのにおいが鼻をくすぐる
雨を降らした雲が去っていく
当たり前のように
流れるように
時間は過ぎていく

おいで
とわたしを呼ぶ声が
どこからか聞こえるけれど

ありがとう
でもごめんね

わたしはまだそこへはいけない
腐ってしまったかのように足が動かないから
もう繋いで歩いてくれる手のひらもどこにも無いから

当たり前に過ぎていく日常の中に
飲み込まれるようにして
ただぼうぜんと、それらを見ている

どこか遠く離れた君が
もうどうでもいいはずのわたしを呼んでくれているけれど

ありがとう
でも、

わたしはまだ、どこへもいけない





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