できるならば君とずっと繋がっていたいと願った夜かさぶたを剥がすように痛みをこらえて抱き合ったそれでもふたりはふたりのままで引っかくようにして抱きしめていた夜の終わりには息も途切れて体温の違いがひどく寂しくなるわたしたちはいつだって互いを自分の一部だと錯覚していたそんな優しく悲しいことは起こるはずがないと、知っていたのに
わたしの言葉で電気ショックのようにただの錯覚のように君が恋をするそれでもいいただの片時の恋でも君の心がわたしのために痛むならそれだけでいい
わたしの心はいつでもレンタル中だった今の彼よりもっと前の、それより前の彼にだからいつでも何もかもが物足りない目の前の人が彼ではないのだから。
そこにはきっと何もなかったわたしの望むものも君の望んでいたものも重なるように繋いだ手肩に寄りかかった君の体温抱き合った後の汗のにおいただそれだけがふたりにとっての唯一のものいつまでもつらつらと流れる異国の映画に目を伏せてお互いがお互いの体温に身を任せてそこにはきっと何もなかったけれどふたりのすべてがあった
止まらないきっと誰に邪魔されようともわたしの体が壊れようとも君が手を差し出すならば君とともに行くことがわたしにとっての生きること
もう少しだけ長くこの時間が続けばいいいま世界が止まってしまってもいい二人の時間が誰にも邪魔されないようにもう手を繋ぎなおさなくてもいいようにできるならば目をつぶってお互いの体温を噛み締めたまま世界が止まってしまえばいい
視界が揺れるこめかみを押さえて世界が止まるのを待つふらふらふらふら君がわたしの世界にいるのならきっと何だってする意識が戻る前に夢の中だけでももう一度キスを
耳元に残る音さらさら降り続く雨つけては消える足跡流れていくなにもかもさらさらたったひと時の閃光どうしても 取り戻せなかったもの過ぎてしまった時間君が去っていく流れていくたったひと時の光の中に時間を置いてきぼりにしたわたしを残してなにもかも
狙いをしっかりと定めて何もかもを撃ち抜いていく君の言葉はいつだってそうだったそのたびに嬉しくて涙したその痛みに身体を震わせてそれでもいいと涙した
君がいない君がいないふたりでなければどうしようもなかった世界にもう君がいない世界が死んでしまえばいいのにと空を恨んでも雨のひとつも落ちてこないわたしはひとりでどうすればいいのだろうふたりでなければどうしようもなかった世界でわたしも一緒に毀れてしまいたいそれすらもう、叶わない
たとえば、見慣れた空でも雲でも風の走るただの道でも君が隣にいる と思うだけでなぜだろうこんなにも形に残しておきたくなるその風景ひとつひとつを形に残して大切に宝箱にしまっておくことはできないのだけれど全てを記憶の底にひとかけらでも残せるようまぶたの裏にそっと焼き付けておこうふとしたときにふたりで思い出しては優しく優しく撫でれますように
わたしの世界は君の声ひとつで波紋が広がる囁きひとつで嬉しくて身体が震えてしまうほど愛しい愛しいどうやっても伝えきれないほど切ない君がわたしの世界にただの気まぐれのように糸を垂らす君に釣られてしまうこと泣きたくなるほどしあわせ
口寂しいと君は言ってわたしを撫でていた手を煙草に移すその横顔がたまらなく好きなこと君は知らずにいてわたしも言わずにいて黙って見つめて煙を追ってわたしはきっとマルボロになりたかった君の心を埋めていくそんなひとにそれは叶わなかったけれどきっと今でも君は口寂しいとポケットを探ってわたしは煙に目を伏せる
涙はもう枯れてしまった足元には化粧を流してしまった黒い水溜りが残るだけ君もいないわたしを優しく抱いてくれた君も、もうどこにもどこに向かっていいかなにを行えばいいのか何も分からずただ立ちすくむ焦点の合わない褐色の目で涙はもう枯れてしまった満たしてくれる人はどこにもいない
途中で立ち止まるとどちらが上なのか下なのかとつぜん分からなくなる上も下も南も北も君は、立ち止まることなく進んでいったのにもう追いつけないと知りながらタバコをふかして考えるこの灰が落ちるころにはまた歩きだそう今度は迷わないようゆっくりともうふたりは会えないだろう君はきっと迷いも戻りもしないから
ここは哀しく美しく一瞬一瞬で姿かたちを変えていくそのたび目を奪われて息を呑んで声を失くして神さまがクレヨンで殴り書きしたような一瞬一瞬が痺れるほど美しいけれどその一瞬があまりにも短すぎるなんて哀しい世界だろう とその美しさにいつだって目が眩む-----文字書きさんに100のお題に挑戦することにしました。毎日とはいかないかもしれませんが気長にやっていきます。
出会い別れて揺らめいて伝えたいことがあるなら言葉に心を吹き込んでできるならば手渡しでこれから先たくさんの人と出会い別れて揺らめいて寂しいけれど幸せなのだろう きっと
君の手が優しく優しく触れていくその相手がわたしでないと考えるたびわたしは悲しくて叫びそうになるわたしの心が痛むように君の心が痛めばいい涙が一筋頬を伝うようにわたしのために涙して悲しいほど愛しい君がわたしのものでないならばこんな心なんてなくなってしまえばいい
多少なりとも体だけではなく心にも性感帯はあると思うその指でくちびるで目で考えると泣きたくなるわたしの心は性感帯君の言葉で声で優しさで震えるほどくすぐったく甘い気持ちで満たされる
朝露を集めた蜘蛛の糸のようなきらきら光を集めるネックレスは切れてしまったまま鏡の前に置いてきぼり君とわたしもどこか悲しく途切れたまま紡ごうかこのままじゃ辿っても君には会えやしないから細くて弱いから些細な事で切れてしまうけれど紡ぐことができるなら紡いでいこうかいつまでもふたりで
目を伏せたすき唇が軽く触れていくそのまますべて連れてって悲しい思いも寂しい思いも泣いたりも君といるたびあるけれどそのまますべて連れてってわたしはもう戻れなくったっていい
空は真っ青そのたったひとかけらが窓に溶け込むカーテンから差し込む暖かな陽だまりとわたしの髪をすくう君の手がこれ以上ないほど心地よいわたしは幸せという名前の毛布に包まれてからだ全部君に預けて眠ってしまう空は真っ青そのたったひとかけらがあまりにも優しく目に映るわたしは幸せの毛布に包まれて「君もおいで」と眠るんだ
気まぐれな風が翻そうとしたスカートの先君の笑顔を思い出す今よりはるか遠いところ二人がめざした未来はもっと先急いで急いで君の手を引っ張ってそれでも行けなかった遠い場所今わたしは君ではない別の人とゆっくりゆっくり二人の場所を目指しているよどうかその先で幸せに寄り添う君の笑顔に会えますよう気まぐれな風におもいをこめて
暗がりに現れては消えた白い息吐いて吸ってさようならと手を振って白い半分溶けた月が見下ろす夜突き抜ける冷たい風赤く染まる頬全てを包む黒い空迷い込んだコートの裾わたしの居場所は君が必ず持っているどこにいてもそこがどんなに遠くてもだからわたしは旅立てるぐったりと疲れた体を引きずっても夜の闇に紛れ込んでも帰り道は、君へと続く吐いた吐いた白い息もうどうでもいい赤い鼻優しく悲しい冷たい月さようならと手を振った
目を閉じていてもすぐに分かる髪に頬に唇に指先が。ぬくもりだけですぐに伝わってしまうそれが君だってこと君に愛されてるってことわたしが君を好きだってこと
振り向くと二人の足跡がはるか向こうまでわたしはふと寂しくとても嬉しく思う同じ歩調でたまに遅くなったり早くなったり繰り返しながらそれでも君の手を離したくはないふたり同じ歩調ではるか、はるか向こうまで
どうしてこんなにも苦しくて痛くってどうしようもないのだろう胸のもっと奥体の真ん中わたしが心と呼ぶ場所むしりとってしまいたいくらい痛いのにどうしようもないくらい、苦しいのに君さえも傷付けてしまうのにどうして求めてしまうのだろう止められない 止まらない傷つき、傷付けながらも君を求めて止まらない