2003年11月29日(土) 016 シャム双生児
 

できるならば君とずっと繋がっていたいと願った夜
かさぶたを剥がすように痛みをこらえて抱き合った
それでもふたりはふたりのままで
引っかくようにして抱きしめていた

夜の終わりには息も途切れて
体温の違いがひどく寂しくなる

わたしたちはいつだって
互いを自分の一部だと錯覚していた

そんな優しく悲しいことは
起こるはずがないと、知っていたのに





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2003年11月28日(金) 015 ニューロン
 

わたしの言葉で
電気ショックのように
ただの錯覚のように
君が恋をする

それでもいい
ただの片時の恋でも
君の心がわたしのために痛むなら
それだけでいい





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2003年11月27日(木) 014 ビデオショップ
 

わたしの心はいつでもレンタル中だった
今の彼よりもっと前の、それより前の彼に
だからいつでも何もかもが物足りない
目の前の人が彼ではないのだから。





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2003年11月26日(水) 013 深夜番組
 

そこにはきっと何もなかった
わたしの望むものも
君の望んでいたものも

重なるように繋いだ手
肩に寄りかかった君の体温
抱き合った後の汗のにおい
ただそれだけが
ふたりにとっての唯一のもの

いつまでもつらつらと流れる異国の映画に目を伏せて
お互いがお互いの体温に身を任せて

そこにはきっと何もなかった
けれどふたりのすべてがあった





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2003年11月25日(火) 012 ガードレール
 

止まらない
きっと誰に邪魔されようとも
わたしの体が壊れようとも

君が手を差し出すならば
君とともに行くことが
わたしにとっての生きること





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2003年11月24日(月) 011 柔らかい殻
 

もう少しだけ長く
この時間が続けばいい
いま世界が止まってしまってもいい

二人の時間が
誰にも邪魔されないように
もう手を繋ぎなおさなくてもいいように

できるならば目をつぶって
お互いの体温を噛み締めたまま
世界が止まってしまえばいい





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2003年11月23日(日) 010 トランキライザー
 

視界が揺れる
こめかみを押さえて
世界が止まるのを待つ

ふらふら
ふらふら

君が
わたしの世界にいるのなら
きっと何だってする

意識が戻る前に
夢の中だけでももう一度キスを





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2003年11月22日(土) 009 かみなり
 

耳元に残る音
さらさら降り続く雨
つけては消える足跡

流れていく
なにもかも

さらさら
たったひと時の閃光
どうしても 取り戻せなかったもの
過ぎてしまった時間
君が去っていく

流れていく
たったひと時の光の中に
時間を置いてきぼりにしたわたしを残して
なにもかも





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2003年11月21日(金) 008 パチンコ
 

狙いをしっかりと定めて
何もかもを撃ち抜いていく

君の言葉は
いつだってそうだった
そのたびに
嬉しくて涙した

その痛みに身体を震わせて
それでもいいと涙した





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2003年11月20日(木) 007 毀れた弓
 

君がいない
君がいない
ふたりでなければ
どうしようもなかった世界に
もう君がいない

世界が死んでしまえばいいのにと
空を恨んでも雨のひとつも落ちてこない

わたしはひとりで
どうすればいいのだろう
ふたりでなければ
どうしようもなかった世界で

わたしも一緒に毀れてしまいたい
それすらもう、叶わない





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2003年11月18日(火) 006 ポラロイドカメラ
 

たとえば、見慣れた空でも雲でも
風の走るただの道でも

君が隣にいる と思うだけで
なぜだろう
こんなにも形に残しておきたくなる

その風景ひとつひとつを
形に残して大切に宝箱にしまっておくことは
できないのだけれど

全てを記憶の底にひとかけらでも残せるよう
まぶたの裏にそっと焼き付けておこう
ふとしたときにふたりで思い出しては
優しく優しく撫でれますように





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2003年11月17日(月) 005 釣りをするひと
 

わたしの世界は
君の声ひとつで
波紋が広がる

囁きひとつで
嬉しくて身体が震えてしまうほど
愛しい
愛しい

どうやっても伝えきれないほど
切ない

君がわたしの世界に
ただの気まぐれのように糸を垂らす
君に釣られてしまうこと
泣きたくなるほどしあわせ





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2003年11月16日(日) 004 マルボロ
 

口寂しいと君は言って
わたしを撫でていた手を
煙草に移す

その
横顔がたまらなく好きなこと
君は知らずにいて
わたしも言わずにいて

黙って
見つめて
煙を追って

わたしはきっと
マルボロになりたかった
君の心を埋めていく
そんなひとに

それは叶わなかったけれど
きっと今でも君は
口寂しいとポケットを探って
わたしは煙に目を伏せる





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2003年11月15日(土) 003 荒野
 

涙はもう枯れてしまった
足元には化粧を流してしまった
黒い水溜りが残るだけ

君もいない
わたしを優しく抱いてくれた
君も、もうどこにも

どこに向かっていいか
なにを行えばいいのか
何も分からず
ただ立ちすくむ
焦点の合わない褐色の目で

涙はもう枯れてしまった
満たしてくれる人はどこにもいない





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2003年11月14日(金) 002 階段
 

途中で立ち止まると
どちらが上なのか下なのか
とつぜん分からなくなる

上も下も
南も北も

君は、立ち止まることなく進んでいったのに

もう追いつけないと知りながら
タバコをふかして考える
この灰が落ちるころには
また歩きだそう

今度は迷わないようゆっくりと
もうふたりは会えないだろう

君はきっと
迷いも
戻りもしないから





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2003年11月13日(木) 001 クレヨン
 

ここは
哀しく
美しく
一瞬一瞬で
姿かたちを変えていく

そのたび
目を奪われて
息を呑んで
声を失くして

神さまがクレヨンで殴り書きしたような
一瞬一瞬が痺れるほど美しい
けれどその一瞬があまりにも短すぎる

なんて哀しい世界だろう と
その美しさにいつだって目が眩む

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文字書きさんに100のお題に挑戦することにしました。
毎日とはいかないかもしれませんが気長にやっていきます。



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2003年11月12日(水) 出会い別れて揺らめいて
 

出会い
別れて
揺らめいて

伝えたいことがあるなら
言葉に心を吹き込んで
できるならば手渡しで

これから先
たくさんの人と

出会い別れて揺らめいて
寂しいけれど
幸せなのだろう きっと





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2003年11月11日(火) 君がわたしのものでないならば
 

君の手が
優しく優しく
触れていく

その相手が
わたしでない
と考えるたび
わたしは悲しくて叫びそうになる

わたしの心が痛むように
君の心が痛めばいい
涙が一筋頬を伝うように
わたしのために涙して

悲しいほど愛しい
君がわたしのものでないならば
こんな心なんてなくなってしまえばいい





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2003年11月10日(月) 感じるところ
 

多少なりとも
体だけではなく
心にも
性感帯はあると思う

その指で
くちびるで
目で

考えると
泣きたくなる

わたしの心は性感帯
君の言葉で声で優しさで
震えるほどくすぐったく
甘い気持ちで満たされる





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2003年11月09日(日) いつまでもふたりで
 

朝露を集めた
蜘蛛の糸のような

きらきら
光を集める
ネックレスは
切れてしまったまま
鏡の前に置いてきぼり

君とわたしも
どこか
悲しく途切れたまま

紡ごうか
このままじゃ
辿っても君には会えやしないから

細くて
弱いから
些細な事で切れてしまうけれど

紡ぐことができるなら
紡いでいこうか
いつまでもふたりで





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2003年11月08日(土) そのまますべて
 

目を伏せたすき
唇が軽く触れていく

そのまま
すべて連れてって

悲しい思いも
寂しい思いも
泣いたりも
君といるたび
あるけれど

そのまま
すべて連れてって

わたしは
もう
戻れなくったっていい





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2003年11月07日(金) 幸せという名前の毛布に包まれて
 

空は真っ青
そのたったひとかけらが
窓に溶け込む

カーテンから差し込む
暖かな陽だまりと
わたしの髪をすくう君の手が
これ以上ないほど心地よい

わたしは
幸せという名前の毛布に包まれて
からだ全部君に預けて眠ってしまう

空は真っ青
そのたったひとかけらが
あまりにも優しく目に映る

わたしは幸せの毛布に包まれて
「君もおいで」と眠るんだ





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2003年11月06日(木) 二人の場所
 

気まぐれな風が
翻そうとしたスカートの先
君の笑顔を思い出す

今より
はるか遠いところ
二人がめざした未来は
もっと先

急いで急いで
君の手を引っ張って
それでも行けなかった
遠い場所

今わたしは
君ではない別の人と
ゆっくり
ゆっくり
二人の場所を目指しているよ

どうかその先で
幸せに寄り添う
君の笑顔に会えますよう
気まぐれな風に
おもいをこめて





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2003年11月05日(水) 君へと続く、帰り道
 

暗がりに
現れては消えた
白い息

吐いて
吸って
さようなら

手を振って

白い半分溶けた月が見下ろす夜
突き抜ける冷たい風
赤く染まる頬
全てを包む黒い空
迷い込んだコートの裾

わたしの居場所は
君が必ず持っている
どこにいても
そこがどんなに遠くても

だからわたしは旅立てる
ぐったりと疲れた体を引きずっても
夜の闇に紛れ込んでも

帰り道は、君へと続く

吐いた吐いた白い息
もうどうでもいい赤い鼻
優しく悲しい冷たい月

さようなら

手を振った





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2003年11月04日(火) ぬくもりだけで。
 

目を閉じていても
すぐに分かる

髪に
頬に
唇に
指先が。

ぬくもりだけで
すぐに伝わってしまう

それが君だってこと
君に愛されてるってこと
わたしが君を好きだってこと





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2003年11月03日(月) はるか向こうまで
 

振り向くと
二人の足跡が
はるか向こうまで

わたしはふと寂しく
とても嬉しく思う

同じ歩調で
たまに遅くなったり
早くなったり
繰り返しながら

それでも君の手を離したくはない

ふたり
同じ歩調で
はるか、はるか向こうまで





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2003年11月02日(日) どうしても。
 

どうしてこんなにも
苦しくて痛くって
どうしようもないのだろう

胸の
もっと奥
体の真ん中
わたしが心と呼ぶ場所

むしりとってしまいたいくらい痛いのに
どうしようもないくらい、苦しいのに
君さえも傷付けてしまうのに

どうして求めてしまうのだろう
止められない 止まらない
傷つき、傷付けながらも
君を求めて止まらない





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