長い睫毛が上下に揺れるたび寒さの中で揺れていた冷たい月を思い出す吐く息が冬そのもので境界線など見つからないのではと思うできればその長い睫毛を持ち上げずにいてはくれまいか少しの間だけくちびるを貸してくれるだけでいいその柔らかさだけで私は冬を愛せるような気さえもするのだ冷たい冷たい月が浮かぶその真上の薄空を愛しく思えるように
私はもう灰になる君にあえない日ばかり数えて寒さに震える月も見忘れうっかり、残り少ないつくしも踏んだゆくゆくは緑色の草原の中で眠りこけるそんな、夢見て今から越えなければならない寒さを前に私は灰になるこれなら寒さも苦ではない君の出す、灰になる
君の形そのままにシーツに皺を作る緩やかな午後と静かな寝息。鎖骨のくぼみに顔を埋めて静かな空間に溝を作らぬよう意識を起こす。ふたつ混ざり合う事の幸せ。今は優しさと静けさ。微笑を浮かべて私も眠る。このまま、時間の流れを感じぬままに。