大きな窓から行きかう人々を眺めて 景色って変わらないものなのだな、とわたしは思った。 普段あまり飲まないコーヒーを、ひとくち口に含むと 懐かしいほのかな苦味が口の中に広がった。
(遅いなぁ…。)
待ち合わせにこのカフェを選んだことを わたしは少し後悔し始めていた。 もうずいぶんも前のことなのに 忘れたはずの思い出が、次から次へと蘇ってくる。
今よりもうだいぶ前、 わたしはこの恋が最後だと。 この恋と一緒に死んでもいい。 と、思うような恋をした。
優しく笑うしぐさが好きだった。 ほんの少し低い声が好きだった。
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