ひとりびっち・R...びーち

 

 

締める - 2002年12月31日(火)

 あっという間に大晦日である。
 怠け放題に怠けた「ひとりびっち」も、ここは一つ締めが必要だ。

 というわけで、クリスマスイヴに仕入れて寝かせておいたネタを繰り出すことにしよう。



 締めるといったらコレだろう。

 出処は読売新聞の12月24日付、朝刊一面に掲載されていた書籍の広告である。

 前夜に終電間際まで働いて帰り、泥人形になったような気分で目覚めた朝、ぼんやり眺めていた新聞にこの広告を見つけたとき、疲れも忘れて吹き出してしまったのだった。

 この画像で細かいところまでお読みになれるかどうかわからないが、まず著者の名前にご注目あれ。

 「日本つれづれ紀行I 褌(ふんどし)の旅」の著者が、越中文俊さんなのである。

 大真面目なコピーに、この著者名・・・。

 で、左側の「褌ものがたり」の方の謳い文句にまたまた仰天した。

 すばらしき下着―褌の魅力のすべてを一冊に凝縮。100点以上の写真・イラストで解説した『褌大全』。

 「○○大全」の類は数多く存在するのは知っていたが、褌にもあったのか!

 もう、びっくりするやら可笑しいやら。

 残念ながら褌とは縁がない性に生まれついたので、男が「褌の紐を締め直す」感覚は絶対に味わえないが、伝統ある下着というだけでなく、褌には何か精神的なものがあり、隠れたファンも多いのではないかと笑いながらも思った。

 しかし、褌が締められない身としては、ここ一番という時に、何を締めて取りかかればいいのだろうか。
 腰巻の紐じゃ様にならないし、そもそも和服を着ない。
 それに、パンツのゴムはゆるめが好きだ。

 ・・・。

 というわけで、今年も結局何も締まらないうちにもうじき除夜の鐘が鳴る。

 とりあえず来年は色のついた帯を締められるように、空手の稽古に励もう。

 


...

秋に逝く人 - 2002年12月04日(水)

 10月14日に作家の日野啓三さんが亡くなっていた。
 
 ここ数年、日野さんの作品を読んでずいぶんと励まされていたのに、気が向いた時しか新聞を開かない私が訃報を知ったのはだいぶ後になってからだった。

 読了した作品については図書室のページに感想を書いているので、ここでは詳細に触れないが、近年読んだ小説の中で日野さんの作品ほど心に深く残ったものはないと思う。

 最後に出版された「落葉 神の小さな庭で」という短編集と、「文学界」の12月号で特集されている「追悼 日野啓三」を読み終わったら何か書きたいと思っていたのだ。

 そんな折、今朝の新聞でもうひとつの訃報に触れた。

 詩人の吉原幸子さんだ。

 2002年11月28日歿、享年70歳。

 本棚から現代詩文庫を出してきて開いてみた。
 高校生の頃に買った詩集のページは少し黄ばんでいて、見覚えのあるページを開くと、時間が逆流するような感じがした。

 こんなに清冽な言葉たちから目をそらさずに立ち向かっていた自分の若さを思うと、遥か遠くの青空を眺めているような気分になる。

 心に残る文章の書き手の度重なる訃報に、秋から冬に変わるこの季節の寂しさをひとしおに感じずにはいられない。




...

Bluerose - 2002年12月03日(火)

 先日NHKで青いバラを作ろうとする人たちを紹介する番組をやっていた。

 青みの強い品種の交配を繰り返して作ろうとする人、遺伝子組替えで作ろうとするプロジェクト、放射線を照射して突然変異によって作ろうとする研究所、さまざまな試みが紹介されていた。

 もともと青い色素を持っていないバラに青い花を咲かせようというのは無理な話で、Bluerose は、不可能なこと、あり得ないことを意味する言葉にもなっているという。

 できないと言われると、やってみたくなるのが人の常なのだろう。
 幻の青いバラを作ることは「夢」であり「ロマン」なのだという。

 どうも人間という種は、不可能を可能にすることが使命だと思っているふしがある。
 今までになかったものを作ることが大好きなのだ。
 その欲望にはキリがない。

 放射線を浴びて奇形としか思えないグロテスクな花を咲かせるバラを見て、私は背筋が寒くなるような不気味さを感じたのだが、自分の作り出した珍種のバラを紹介する研究員の笑顔に翳りはなかった。
 青いバラを作り出せると、その市場価値は何十億円にもなるらしい。
 企業ベースで考えれば、放射線照射も遺伝子組替えも何の疑問も持たずに行えるのかもしれない。

 農作物や家畜の品種改良と言うが、あくまで人間の側から見ての「改良」なのであって、その種にとっては本来の姿を無理やり変えさせられているに他ならないと思うのだが、稲や小麦や林檎は抗議をしたりしないし、牛や豚が抵抗運動をしたり、暴動を起こしたりしないのをいいことに、人間は一方的にやり放題である。

 SF小説ではよくある発想だが、そのうち宇宙の彼方から人類を「品種改良」しようとする存在が現れて、いいようにされても文句は言えないんじゃないかと思ったりもする。


 そんなこんなで、なんとも複雑な思いで番組を見終わったとき、娘がひとこと・・・

 ねぇ、おかーさん、何だか「がんばれ、バラ!」て言いたくなるね〜

 まったく同感だった。

 何百年にわたる品種改良にも負けず、放射線にも屈せず、遺伝子を組みかえられてもまだ頑固に青くなろうとしないバラはエライ!!

 こうなったら、いついつまでも青ざめないでいてほしい。

 がんばれ、バラ!

 びーち親子は人類の横暴に屈しないあなたを、心から応援してます。  



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