2004年10月31日(日) |
偉そうなことは、言えないけど。 |
あたしがあなたの隣で発したセリフを、 どうしてあなたより先に、 あたしの斜め前にいる竜崎君が聞き取るんだろうね? 彼が聞いててくれたことは嬉しかったけど、 あなたに聞こえてない悲しみの方が、大きかった。
あなたの話だけは、何でもどれだけでも聞ける。 それは確かに「あたし」だけど、 自分のことを話すのが怖いなんて、 そんなのは決してあたしじゃない。 そのギャップが、最近苦しい。
あたしの声、ちゃんと聞こえてる? あたしの気持ち、伝わってる? 元々気持ちを伝えるのが下手だから、偉そうなことは、言えないけど。
他人を受け入れるのは、そんなに楽じゃない。 だからあなたはずっと拒否しているんだろう。
少し、羨ましいよ。 受け入れることにコントロールなんか効かないから。 あなたの全てを零したくないから。 いつになったら、このループ抜け出せるだろう。
誰に逢いたいわけでもないけど、 1人が嫌だ。 だからとりあえず、あなたに会いたい。 けどこんな理由じゃ、きっとメールを返してすらくれないね。
理由のわからない孤独のとき、傍にいて欲しい。 それだけなんだけど、 多分それはある意味、あたしが最大限あなたを求めている瞬間なんだけど、 あたしは生憎、 それを上手く伝える言葉を知らずに、いつも失敗する。 だから怖くて、動けない。
あなたがあたしを求めてくれる理由も、 多分これ以上に、シンプルなのだろう。
それだけで満足出来るほど大人にはなれないけど、 なろうとしてみる。 それが精一杯だ。
その意思を自覚してすら、ないからだ。
何が怖いのかって、 寺島に忘れられることが一番かと思う。 4月の傷は、癒えてないんだと思う。
きっと前のあたしだったら、 この間の月曜日は、幸せでたまらない日だったんだろう。 寺島が甘えてきて、 たくさんキスをもらって、 抱き締めてもらって、 言葉も、もらって。
どうして信じられない。 他の女がいるわけでも、ないのに。
好きだから信じられない。 また、傷つく。 考えるだけで、ジンと胸が痛む。 悪、循環。
嫌いだよ、と言っても、寺島は笑うだけで。 天邪鬼なあたしなどお見通しだと。 悔しくて仕方なかった。 じゃぁあなたは? と聞けもしない、弱いあたしも悔しかった。
あたしが一番心を開いているのは、誰だろう。 誰にでもオープンに接している分、 自分でも見極めがつかない。 厄介だ。
不思議なことにあなたは、 あのトンネルでのことを覚えている。
高校1年生の3月だったか。 本当に、付き合いだした最初の頃。 まだ、キスを覚えたばかりで。 人通りの少ないトンネルで、くっついていた。
キスの回数を、最初から数えていたあたし。 次したら11回目だなー、と思っていると、 寺島も、
「次が11回目かな…」
と呟いた。 同じことを考えてたよ、と笑い合ってキスをした。 そんな過去話。
月曜日、部屋で短いキスを繰り返していたら、
「唇が柔らかい」
って寺島が言うから、
「今更?」
と笑った。
「何回キスしたかわかんないのに」
そう言ってあたしは、あのトンネルを思い出した。
「ねぇ覚えてる?
最初の頃、キスの回数を数えてたの」
「覚えてるよ。
次が11回目とかって、話したろ」
思いがけない回答に、あたしは驚いた。 2年以上経って、その2年には、 たくさんの出来事があって。 忘れてることも、たくさんあるのに。
あんな始めの、小さなことを覚えててくれるんだね。 なんだか、 あたしがちゃんとあなたの頭の中にいるんだなって気がして。
少し、嬉しかった。
そのほとんどが、当時辛かったこと。 今は、思い出さないくらいのことで。 時間ってすごいなって、改めて思う。
寺島が笑えるならまぁいいか、 とは、さすがに思わないのだけど、 それはあたしとしなくても彼が笑えるようになったからってだけで。
どこかで、まぁいいか、って思ってる自分は、 否定できない。
何度唇を重ねても。 何度抱き締められても。 前ほどに幸せに酔えない自分が、嫌だった。 あたしが欲しいのは、本当の言葉で、 行動で、証で。
体なんて信用できなかった。 寺島の体の温度さえも、あたしは受け付けなかった。 キスも、あたしを抱き締める腕の力も、 全て、ただセックスをしたいがためのものなんじゃないかって。 終わったら、全てが嘘になっちゃうんじゃないかって。 そうじゃない、って言う寺島の前で泣くことは、 やっぱり出来なかった。
寺島はそんなあたしに気づいてはいないだろうし、 どちらで呼ばれようとも、関係ないのだろうけど。
4日。 寺島とちゃんと、 「友達」 出来たのは。
先週の木曜日に、あたしが「するのやめよっか」って言って。 日記書くのもやめて。 気持ちが落ち着いたら、書けるかなぁって思ってた。
それを言うまでにいろいろ考えて、 同じところを回りながら、 でも何があたし達にとって最善の道なのか、やっぱりわからなくて。 とりあえずは。 寺島に新しい彼女が出来たとき、 今のあたしじゃ笑えないって思ったから。
笑えるあたしに戻らなきゃ、と思った。 セックスをしていては、笑えなかった。
大学の椅子で、 隣の友達と笑いながら、メールをして。 涙をこらえたのは、そんなに遠い記憶じゃない。
知れたなら、道が選べるでしょう。 例えそれが正しくはなくても。
しばらく、日記書くのは休みます。 辛いことがあったとかそういうんじゃなくて、 むしろ、 幸せになるための選択を実行しました。
それを選ぶまでに、 自分の中で生まれたたくさんの言葉や気持ちを、 上手くまとめられないといった感じです。 矛盾してたり、文章にならなかったり。
寺島との仲は、良いままです。 このままずっと、続けばいいと思います。 友達として。
と言いつつ、表現が浮かんだら、 明日更新してたりするんでしょうね。 あたしのことだから。
ネットサーフィンはしますので、 BBSへのご訪問は大歓迎です。 どうぞいらしてください。
「恋人」 という言葉に、こんなに拘束されるとは思ってなかった。
と書いて、次の言葉を書こうとして思ったけれど、 恋人「じゃなきゃ」信用できないということなのかな。 よく言うよ。 自分だって、信用失うことたくさんしてきたくせに。 どっちもどっちだ。
だからあたし達は。 このままのほうがいいのかもしれない。 好きなときに会って、好きなだけ抱き合って。 何の荷物も背負わずに。 何の未来も夢見ずに、愛せない現実を見て。 次の恋を見つけたら、簡単に「さよなら」と言える距離を保って。
何故あたしは、今も泣くのだろう。 何をそんなに悲しむのだろう。 まだ期待を捨てきれていなかった自分がみじめすぎて、泣けるのか。
さよならのときは、 精一杯愛をこめてそのセリフを言おう。
それまでは、全てあたしのもの。 あなたへの気持ちも、思い出も、温もりも、 辛い記憶や、傷さえも。 あたしには愛おしいから。 大事に、していたい。
何が欲しいのかと考えてみるけど、 どうも矛盾して、上手く答えにならない。
記念日を祝いたいわけでも、ラブメールが欲しいわけでもない。 『NANA』という漫画の恋人達が羨ましいのは、 そういうことをしていないのに、仲が良いからだ。
藤原が気を使ってくれるのが、嬉しくて、 苦しくて、悲しくて、もどかしい。 あたしと寺島は恋人同士じゃないのに。 お礼を言うのはおかしいけど、 「ごめんね」 というのも可笑しい気がして。
もし寺島が、あたしの彼氏だったら。 藤原に深夜に誘われても、断れる。 でも恋人じゃないから。断る理由が無くて。 残るのは、変な後ろめたさ。
多分藤原もそれを感じてて、 「俺からのメールは消しとけよ」 なんて言ってくれるんだろう。
恋人同士じゃないと思っているけれど、 そう言われて、安心するのは否定できない。 だからあたしは、 「ありがとう」 と言う。
気を使うくらいなら会うなという話だけど、 藤原に会わずに、 寺島と上手くいかない寂しさを乗り越えるなんて、 あたしには無理な話だ。
…乗り越えるべきなんだろうか。 愛していると言うならば。
行動が伴っていないと言うことなのか。 今更、遅い気もするけど。
「DESTINY」がよかったな、と、 あたしの服を見てあなたは言ったけれど、 そんな重たい言葉を着て歩く気にはなれないの。 運命の存在意義なんてわかりたくもない。
あなたとあたしの運命はどうなっているんだろう。 藤原が、 「他の人を探すしかないね」 って言ったかと思えば、 「お前らの結婚式は歌ってやる」 って言ったりするから、 どのビジョンがあたし達に見えるのかわからない。
そういう他人のビジョンって大事だと、 寺島が言うから可笑しい。
運命の赤い糸。 なんてものは、何本もあるんですよと、 高校生のとき講演にいらした、産婦人科の先生が仰っていた。 リアルで笑えた。 だから男を信用しちゃいけませんと(先生は男性でいらしたけど)。
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今日の昼間に更新した「2時間、3時間」は、 10月16日に移動させました。 よろしかったらindexからどうぞ。
デザイン変更に伴い、リンクページ更新しました。 それにしても、私はよくデザインを変える。 元々が、浮気性なのです。
この間幸子が家に泊まったとき、 過去に好きになった人を数えてみたら、
諦めたけど、後でまた気持ちが復活したものも含めたのでのべ。
幸子いわく、中学時代、 1日で変わったこともあるらしい。 そこまでなかったと自分は記憶しているんだけれど、 簡単に気持ちを捨てていた感覚は残っているので、 そんなもんだったんだろう。
今でも、いつも藤原に違う男の人の名前を教えている気がする。 バイト先の人だの、ゼミが同じ人だの。
想いが1年以上続いているのは、寺島だけ。 そういう意味でも、 寺島は初めての人。
2004年10月17日(日) |
歩けなくなるほどに。 |
寺島を送った帰り道に足が止まるなんて、どれくらいぶりだったろう。 とても、不思議な気分だった。 だけどそれ以上歩くことは、出来なかった。 このまま終わりたいと思った。
なんだか、あたし達が求めているのは、 同じことのような気がするのだ。 だから離れられないのだろう。 けれどならどうしてすれ違うのだろう。 歩けなくなるほどに。
同じこと、だけれど、形が違う。 見ただけじゃ、同じこととはわからなくて。 結果的に、それで喜んでる自分がいて。 でも求めてる形と違うから、変な感じで。 嬉しいけど、100%は満たされない。
…今のところ、気づいているのはあたしだけなんだろう。 多分。
心も体も。
痴話喧嘩なんて、したことない。 それがいいことなのか悪いことなのか、わからない。
不満を持ったとき、怒ったとき、 それをぶちまけるけれど、 ぶちまかれた方も怒る、なんてことはなかっただろう。 大体が、 めったに怒らない性格同士で。
喧嘩より、話し合うことが多かった。 PCで、長い長いメールを送り合って。 喧嘩じゃなくて、 価値観の相違とか、言葉の解釈についてとか、 半ば抽象的に話し合ってて、 言葉に出来なかったり、寺島の言葉がよくわからなかったり、 そんなことが、あたしには苦しかった。
わからないと言って投げ出す無責任にはなりたくないし、 寺島ともっと、価値観を共有したかった。
今何が辛いかって、 そんな話し合いが出来ないことが辛いのかもしれない。 苦しいけれど、理解できたら嬉しかったし、 受け入れてもらえたときも嬉しかった。
自分は逃げていないと確認することが出来た。 2時間、3時間かけてメールを書くことで。
今は大事なこと全部に、お互い目をつぶってる。 何が怖いのか知らないけど。 全て置き去りでただ抱き合う。 2時間、3時間の重みがない分楽だけれど、 寂しい気もする。
喧嘩なんかしたくない。 出来るだけ穏やかに過ごしていたい。 そう思って、今まできた。
だから彼女にしてくれないかな、なんて。 勿論寺島のね。
兄さんと出会ったのは、中3だったと思う。 時々やってた、ドリームキャストを通じてのチャット。
「それが可愛い」って言われたから、 兄さんと接するときの一人称は、「ボク」。
兄さんは、ボクなんかよりずっと大人で。 ボクよりたくさんのことを知ってて、 ボクより人のことをわかってる。
ボクがオープンに接する分、ボクのことをわかってくれてる。 それはとても、嬉しい。
普段は鬼畜のくせに、ボクがふられたりすると、すっごく優しい。 「11時からメッセ入るから、思いっきり愚痴りな!」 そのセリフのときも、泣けた。 兄さんが愚痴ることってほとんどないのに、ボクにはそう言う。
だから兄さんが愚痴ってくれて、 「じゅんに聞いてもらえて助かったよ♪」って言ってくれたときは。 こっちが涙出て。 何て言ったらいいか、わからなかった。
兄さんには、ボクの恋愛を聞いてもらって。 結構話してるんだけど、 昔話した分は忘れてしまってるみたい。
まだそのことで、時々からかわれる。 悔しいから忘れてください。 兄さんと呼ぶ前のことなのだし。
兄さんとこんな風になれて、よかったと思ってる。 恋人になって、失ったりしたくなかった。 大事な、大事な人だから。
そう兄さんに言ったら、 「そんなの関係ないだろ(笑)」 って、あっさり言われる。 うん、ネット兄妹なんだし、関係ないんだけど。 やっぱりボクは、恋人にはなりたくない。 ずっと、 「兄さん大好きー^^」 と言える場所にいたいのです。
好きな人に「好き」って言うことが、 難しいと感じる今だから。
「3人とも自己中だよね」 って、幸子に言われた。 うん、否定しない。
相手の返事をただ追及する寺島と、 逃げ続ける今井と、 今井を省みないあたし。
言葉にすると、こんなにも陳腐だ。 なんて安っぽい。 いつもそう。
寺島のことは、あたしがかばった。 あたしのことは、寺島を始めとしていろんな人がかばってくれた。 今井のことは、常識がかばった。 だからもう、何も言わないことにした。 子供の喧嘩みたいだ。 いざとなれば親が出てくるような。
気持ちはたくさんあって、 けれど全てを伝え合うわけにはいかなくて。 伝えなくていいことも、絶対にあって。 あたしはどうも、その境界線を見極めるのが苦手のよう。 多分寺島にも、 言わなくて良いことをたくさん言ってる。
「あたし」を押し付けてしまってごめん。 全てを知って欲しいなんて思ってるわけじゃないんだけど。
新しいメールアドレスをネット兄に送ったら、 それがT.M.Revolutionのある曲名だとすぐに気づいてくれた。
「相変わらず西川君好きなのか?(笑)」
そのたった一言で癒されてしまうのは、 あたしが何かに依存している証拠でしょうか?
でもあたしには、それが何か、わからない。
何だか、今更のように、 不安で仕方なかったりする。 今更のように、寺島から、 あたしへの気持ちを聞いてみたかったりする。 恋人でもないのに。
寺島と距離を感じて。 でも仕方ないこと。 あたしが、距離をとろうとしてるから。 矛盾してる。
藤原との距離は、感じるといつも寂しいのに。 寺島との距離は、悲しかったり、安心したり、いろいろ。 今は正直、 どっちなのかわからない。
今までずっと、気持ちをごまかしてきた。 そうじゃないと寺島の傍にいられなかった。 それはイコール、そうじゃないと生きていけなかった。 そろそろ、逃げられないくらいに大きくなっているのを感じる。
寺島と一緒にいるとき、 あたしはいつも、2人の距離が近いことを思っている。 あぁこんなに肩がくっついてるとか。 こんなに近くに寺島の顔があるとか。 指のすぐ先に寺島の髪があることとか。 寺島の胸が温かいとか。
どうしてだろう、そんなあたしは、 いつまで経っても消えてくれない。 寺島に抱き締められて幸せだなんて思うことは、もう随分とない。 それ程あたしは擦れてしまっているのに、 寺島を愛しく思う気持ちは、そのままだ。
あたしは一体何を信じているんだろう。 何を選んでいるんだろう。 もはや、何を愛しているのかすらわからない。
だってちっとも、寺島を見ようとしていないじゃないか。
去年のこの日も、 誕生日おめでとうと、書いた。 去年は、携帯からカチカチ更新していた。 どうしていたか、なんてあんまり覚えていないんだけど。
寺島を好きになって以来、 毎年お祝いの言葉を伝えていた気がする。 相変わらず、そんなことを思うだけで幸せ。
愛する人が生きていて、 言葉が伝えられる距離にいる。 それって、当たり前に幸せなこと。 かみしめながら、午前0時に、 寺島にメールをした。
19歳、おめでとう。 今年も言えて、よかった…。 なんだか馬鹿みたいに、安心した。
この先寺島に彼女が出来ても、 あたしが寺島を愛さなくなっても、 「誕生日おめでとう」 と言える心と、距離さえあればいい。 そんな風にも、思ったりする。
高校生の頃、 すごく使いやすくて、色も好きで、 出来ることなら手離したくなかった携帯があった。
その4桁が、何故か誇らしかった。
サブディスプレイが、部屋の暗闇でチカリと光るのを見て、 飛びついたものである。 その頃は、1日に1通、 PCからの寺島のメールが届いていたから。 頑張ってたなぁ、あの頃。
今日想うべきは、寺島だけじゃない。 種元駿君のことも、忘れてはいけない。
黙祷。
2004年10月11日(月) |
そういうことが、出来る人。 |
専ら、飲み会と、ご飯代と、本に消えてきた私の貯金。 今日は久しぶりに、 ピンクのストールに姿を変えた。 その色を選べたのは、幸子のおかげ。 1人だったらきっと水色になって、 また寺島にダメ出しされてたんだろうなと思う。
久々に会った竜崎君は、相変わらず歌が上手かったけど、 ストールの効果か、 寺島とよく喋った。カラオケの部屋にしては。 ストールを褒めてくれて、ありがとう。
こういうとき、否が応でも実感するのだ。 寺島の方が私に近いんだと。 隣に座るのが当たり前だったり、 褒めるのも褒めてもらうのも、そんなにぎこちなくなかったり。 すんなり「ありがとう」と言えるのは、 結構なことじゃないか?と思う。
昨日は、幸子が私の家に泊まっていった。 いつも私の意見は、幸子に笑われて終わるのだけど、 珍しく、 「成る程ね」 と言ってもらえたことがある。
もしこの先、竜崎君と付き合えることになったとしても、 竜崎君はあたしのことを信用できないんじゃないかと思う。 あたしがどんなに「寺島のことはもう終わった」って言っても、 あたしがどれだけ寺島を好きだったか、 どれだけ流されやすいか、彼も知っている。 彼の前で「寺島を好き」と、何度も言った覚えはないけれど、 多分あたしの行動の端々から、感じ取っていることだろう。 そういうことが、出来る人。 だから、憧れたんだけれど。
気づいたのは、
酔っ払って、 寺島にべったり体を預けてたことも、あるし。 懐かしい。
…また飲み会したくなってきた。
結局はあたしが、笑っていればいいのだと思う。 怒ることは元々めったにないし、 悲しむことには疲れたから、簡単。
笑えれば、楽。 笑えれば、大丈夫だってこと。 そういう意味では、今のあたしは、満たされている。
悲しいとか、寂しいとか、 考えるとエネルギーを使うのだ。 感じはしても、それを頭で認めて、 メインの考え事にしてしまうときついのだ。 だからあたしは、その手前でシャットアウトしている。 意識は、していないのだけど。
辛いのはもう、嫌だから。 辛いとどうしても、寺島に傍に居て欲しくなるから。 辛いなんて考える前に、目の前の幸せを探す。
実際問題、辛くは無い。 いろいろ複雑だったとしても、寺島が近くにいる。 それが確かなだけで、あたしは安心する。 確かにするために負の感情を殺すことくらい、何でもないことだ。 むしろ出したら流される、その辛さの方が嫌だ。
あたしはやっぱり幸せだよ。 いつだって。
そう寺島に言ったら、また、
「純粋だね」
って言われた。
あたしが自分の名前を誇っていることを知っているんだろうか。
「寺島」と呼んでみたり、「陽ちゃん」と呼んでみたり。 そんなことを繰り返すうち、 「陽ちゃん」が遠くなった。 あたしの中のあの人は、「寺島」。
竜崎君に会わないうち、彼の名前だけが、 中3のときの「寺島」のように、 ほのかな光を帯びていく。 幻だと、わかってはいるのだけど。
寺島に、「あたし」という存在はいらないのだろうかとか思っていたけど、 じゃぁ「あたし」って何だろう? と、帰りの電車の中でふと思った。 寺島をつくる要素のような、あたしをつくる要素。 考えてみたけど、多くは思いつけなかった。 それじゃあ「あたし」を主張する資格すらないだろう。
思いついた中に、 「寺島を好き」 っていうのがあった。 それなら寺島が、 「寺島を好きなあたし」 だけを求めてたとしても、 「あたし」を求めてくれているのには変わらないんだろう。
あなたの中のあたしの名前は、どんなかな。 知るのは少し、怖い。
寺島はいつも、あたしを純粋だと言うけれど、 他の人はそうじゃないなんて本当なんだろうか。 ふと空を見上げてきれいだと思ったり、 雲の形に感動したりしないんだろうか。 全員がそうとはさすがに言わないけれど、 別にあたしが珍しいわけでもないと思う。
昨日、自分の日記を最初から読んでみた。 大分書いたな、とオールリストを眺めた。 この日記は力を入れて書いてるので、覚えていることが多い。 タイトルだけじゃ思い出せないものも、あるのだけど。
その時その時の感情を思い出して、泣きそうになったりする。 寺島に馬鹿って言われそう。
今だって、二宮さんの名前はちょっときついし、 今井の話題も正直辛い。 けれど、気づいたことがある。
寺島が彼女に向ける行動、1つ1つ。 全て、あたしにも欲しかった。 あぁ、こんなこと。 中学のときにも思った覚えが、確かにある。
純粋なんかじゃ、やっぱりないよ。 ないものねだり。
いつ、だったかなぁ。 多分、今年の4月2日。 藤原から、寺島が二宮さんを追っかけること聞いて。 最初は涙が流れるだけだったけど、そのうち、声が出て。 聞こえた自分の声の醜さがたまらなくて、止まらなくなった。 もういいやって、声を出して泣いた。
「こんなに好きなのに、どうして上手くいかないんだろう」
そんなことを、切れ切れに口走った気がする。 それまで黙っていた藤原も、あたしのセリフを聞いて、
「そうだな」
と言って、泣いていた。 前日に玉砕した恋を、想ったのだと思う。
泣いた理由はさておき、 泣いても大丈夫な友達っていいな、って思った。 勿論、泣き止む努力はするけれど。
でも泣けるのは、藤原だけかな。 竜崎君や、幸子の前じゃ無理。 彼女らの性格上、なんだけど。
寺島が、大学の人に告白したって聞いた後、 藤原と帰りながら泣いたとき。
2人とも黙ってしまって、あたしは、 藤原がいるんだから泣き止まなきゃ、と思って、 「でさぁ!」 といきなりいつものように声を出した。 すると藤原が、吹きだして笑った。
「泣いてんじゃないのかよ!」
「いや泣いてるけど、沈黙も嫌だからさ!」
「何だそりゃ」
とまた笑った。 あたしもつられて、「ごめん」と笑った。
…距離から言えば、 寺島より藤原が、あたしに近いところにいるのだろう。 あたしが藤原に近いかどうかは、自信がないけれど。 他の女友達より近くにいれたらいいな、と思う。
最近、皆でお酒を飲みたいな、とまた思っている。 竜崎君のポルノグラフィティを聴きたくもあるけれど、 また机を囲んで、笑いたいのだ。
8月に遊びすぎたせいで、 たまり場だったあたしの部屋に禁止令がかかり、 寺島も犬を飼い始めたので皆では遊べなくなった。
あの日した話題も、まだ覚えてるよ。
恋愛感情さえなければ、一緒にいて楽しい。 彼女なんか要らないと、寺島は笑った。 あたしもきっと。 恋愛感情がないからこそ、竜崎君や藤原と笑っていられるのだろう。
高校のときの友達に、 「あたし、寺島君と純ちゃんには、友達でいてほしかったな…」 と言われたことがある。 今のあたしにこそ、響いてくるセリフだ。 本当。 あのときのように我慢をして、笑えばよかった。
今、寺島と普通の友達のように電話をしたり、 CDショップに行ったり。 穏やかに過ごして、そしてそんな時間を、 寺島がまた作ろうとしてくれる。 恋愛抜きなら、あたし達は、こんなに上手くいく。 お互いに優しくなれる。 それが一番だ。
中学3年の、きっと今頃だっただろう。 寺島のクラスに入り浸って、仲良くしていた。 当時の寺島は、今井に惚れていることがまるわかりで。 絶好のからかいのネタ。 毎日笑って、過ごしてた。 からかう度に、少しずつ大きくなる胸の痛みは、見ないふりをしてた。
あるとき、どうしようもなくなってきたから、 寺島に電話をかけた。
「今まであんたごまかしてたけどさ、なんだかんだで、 今井のこと好きなんでしょう?」
開口一番のこのセリフは、 かなり寺島の不意をつけたようで。 少しどぎまぎした様子を見せた後、寺島は、
「好きだよ」
と答えた。
その響きを悲しむ間もなく、あたしは笑わなければならなかった。 嗚咽なんて聞かせたら、この人を失う。 それしか考えてなかった。 …やっぱり、中3のときから変わってないなぁ。
少し今井の話をした後、 「じゃぁ私は失恋ね」 と明るく言って、 更に呆然とする寺島をまた笑って、電話を切った。 次の日から、同じ毎日を過ごした。
どうしてあの頃のあたしは、今より強いんだろう。 今よりきれいな笑顔で、寺島に笑いかけられるのだろう。 今のあたしが笑っても、見る人が見れば翳っているのだ。
2004年10月03日(日) |
竜崎君の、竜崎君たる要素 |
ポルノグラフィティを聴き続けていると、 変な話だけれど、とても安心するのだ。 別に本当に、 竜崎君があたしを知ってくれたわけではないのだけど。
あたしは基本的におしゃべりだから。 皆と喋る中で、転々と変わる話題の中で、 それでもあたしのセリフをちゃんと聞いててくれる竜崎君は、 とても嬉しい存在である。
だから寺島が「あたし」を拒否すると。 たまらなく、竜崎君に会いたくなる。 ポルノグラフィティを、聴きたくなる。
だけどそれは、竜崎君に「救い」を求めているだけで。 竜崎君の、竜崎君たる要素がどうこう、というもんじゃないのだ。 それも少しはあるけれど、 寺島のそれに比べたら、とても、質量は小さい。
と、書いて気づいた。 確かに寺島はあたしをあまり見ないけれど、 寺島を作っている要素の一つ一つが、あたしにはひどく魅力的なのだ。 髪の毛も、顔かたちも、言葉も、行動も。 きっとただそれだけなのだろう。 それだけで、別に寺島があたしを見なくても、 満足できてしまう瞬間が生まれているんだろう。
昨日の日記について、BBSにて、 さらさ様からご指摘いただきました。 BBSにも書きましたが、 「私が今井のアドレスを勝手に教えたこと」 このことについての責任逃れを書いたつもりでは、まったくありません。 その場限りの感情でしてしまったことで、 本当に彼女には悪かったと思っていますし、 結果的に寺島も傷つけることになってしまったのですから、 とても反省しています。 2人共に謝りたく思っています。 寺島の携帯からアドレスが消えるのは、見届けました。
昨日の日記は、他にもたくさんの反省すべき点があり、 さらさ様の他にも不快になった方がおられると思います。 言葉が足らず、すみませんでした。
悠介
今井からメールが来たのは、今日の夕方だった。 ある意味簡潔な内容に、 バイト帰りに始まっていた、あたしの頭痛がひどくなる。
「あたしのアドレスを、あの男の携帯から消して。 気持ち悪い」
ことの発端は、 以前寺島が、あたしに今井に逢いたいと話していたときに、 あたしが耐えかねて、アドレスを教えてしまったことによる。 そのときは寺島も、 許可とって無いだろうと言って、使おうとしなかった。
最近またやってきたその波に、 寺島は逆らいきれなかったようだ。
とりあえず、勝手に教えてしまったことは心底謝る。 あの場限りの激情で、やってしまったから。 けれど彼女が寺島をこんなに拒んでいることを、 何故あたしが寺島に告げなければいけないのだろうか。 辛すぎるだろう。 本人にメールしてくれ、と今井に言うと、
「あの男に金を使うのが勿体無い」
という言葉を中心に、拒絶の言葉を書いてきた。 それを読んで、また頭が痛くなる。
今井に言ってやりたいことは、山ほどあった。 けれど言えば、 今井の気持ちを無視することになる。 それはまた、おかしいことになる。 寺島が今井に逢いたい気持ちを受け止めろと言えば、 (逢えと言っているのではないが) 今井が寺島を拒絶したい気持ちも受け止めてやらなければいけないだろう。 そう思って、 「今すぐあんたをひっぱたいてやりたい」 そう送るのは、やめた。
あたしは、今井が寺島の悪口を言うのが、 本当にひっぱたきそうになるほど許せない。 寺島に想われてるのに、というところがないでもない。 その事実から完全に目を逸らして、 寺島の批判ばかりすることが、あたしには耐え難い屈辱なのだ。 昔から、そうだ。 この人が寺島の気持ちを真正面から受け止めたことは、あっただろうか。 いつも逃げている。 だから許せない。
今井のことを考えながらも、 やっぱり腹が立って、 右手に力をこめて床を殴ったら、思った以上に音が出た。
…嫉妬している。 それは否定しない。
そんな優しささえも、 寺島に与えてはくれないんですか?
昨日のいっときだけ、アップしていた文章。 見た人は、どれくらいいたんだろう。
寺島を捨てることを決めたと、書いてた。 今もそれは、変わってない。
電話で、寺島と今井の話をしながら。 この苦しさをどうすればいいんだろうと、無意識にしてたのかもしれない。 耳の片方で、竜崎君の歌声を思い出そうとしてた。 心の片方で、彼のことを考えてた。 けれど、理性ではなく。
学校へ向かう電車の中で、不意に、 寺島を諦めよう、と思った。 とても不思議だけど、寺島を諦めようと思ったのは、 4年ぶりくらい。 でも4年前と同じように、決めることが出来た。 抑えきれずに、携帯から日記を書いた。
捨てる、なんて書いたのは、多分ただの嫌がらせ。
学校から帰るときはずっと、 竜崎君の好きなポルノグラフィティを、聴いていた。 絶え間なく聴いていなければ、 あたしが壊れてしまうような気がしている。 今も。
家で、考えを整理して、日記を書き直した。
深夜に、寺島と電話をした。 辛いような、幸せなような。 更に深夜、 とても中途半端な気持ちで、家を出た。
部屋から出てきてくれた寺島の手をつかむと、 それはとても冷たかった。 あたしといると、温まる。 ならば、未来の無いセックスもかまわない、と思えた。
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