under one umbrella

2003年09月25日(木) どこで間違えた?

諦める。
あなたの愛を、諦める。
あたしのなかのあなたと、
あなたのなかのあたしを守るために。
それだけは諦めたくないから、
その決心は、もうずっと前についてる。

だけど、どうしたら、あたしをあたしらしく、
あなたをあなたらしく、お互いのなかに残せるのか、
それだけがあたしにはわからない。
お互いのなかのお互いを変えたくないというのは、
あたしだけのわがままかしら。


寺島の来訪を、あたしはまだ拒めずにいる。
幸子に叱られたし、自分でもおかしいと思うのに。
寺島のことを今どう思っているのか、正直よくはわからない。
「好き」という言葉も、「愛してる」という言葉も、
いまいちぴんとこない。
寺島と、寺島の学校の話をしたり、あたしが聞いた噂を話したり、
テニスの話を聞いたり、読んだ本の話をしたり。
名前は知らないあの人の話をしたり。
そういう時間は、わりと「好き」だと思うけれども。


寺島と逢うたびに、あたしの気持ちが揺らぐ。
変わっていく。
途惑う。
わからなくなっていく。
あたしが何をしたいのか。

そうやって迷ううち、
あたしのなかで、寺島はどんどん最悪に近づいていって、
寺島のなかで、あたしはどんどん都合のいい存在に近づいていく。
これじゃあ、いつの日にか。
諦めたくなかったはずのものが、諦めてないのに消えてしまう。

おかしいなぁ。




2003年09月13日(土) まるで喜劇。


日を追う毎に、自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。

寺島への未練と、寺島の態度の考察と、
自由になりたいという矛盾した望みと、誰かにときめきたいという憧れと。
とりあえずはその4色が。
私の心をマーブル模様に飾っている。

…やっぱり馬鹿らしい。
私がこんなに悩んでいる間。
あの人はどなたかの夢を見ている。
あぁ馬鹿らしい。やめてちょうだい。
まるで喜劇。
いいえ、どう見ても喜劇ね。


いつ幕は引かれるの?
いつと言うよりかは。
誰が引くの?




2003年09月10日(水) でも笑っていた。

先週寺島が来たとき。本を貸していった。
市丸にそう言ったら。
「また会う口実に決まってんだろ?お前のこと好きなんだよ!」
あたしはその本の内容を話したくて、貸していったことを話したんだけれど。
ちょっとびっくりして。
でも正直嬉しくて。
「え…。そう、思う?」
なんて馬鹿みたいに聞き返してしまった。

そういえば来たときに、何の話題だったか忘れたけれど、
「今度からそうしようかな」
って寺島が言って、あたしはびっくりして、
「また来るの?!」
って聞き返した。
あたしのなかでは、いつが最後でもおかしくないようなものだと思っていて。
そもそも次の保障なんて、寺島に出来るはずがない。
「だってほら、本返してもらわないとね」
してやったりの笑顔で返される。
「好きな人いるくせに、好きでもない女と会って、空しくないの?」
悔し紛れに、でもずっと頭にあったセリフを吐いた。
寺島は何も言わずに、ついと前を向いた。
でも笑っていた。

部屋にいるとき、うっかりして涙がこぼれて。
会話が途切れてしまって。
寺島が強くあたしを抱きしめて。
驚いたあたしが離れたら、
「女に泣かれて、放っておける?」
「…そんなに優しくしたら、期待するよ?」
あたしの意地悪なセリフに、苦笑するかと思ったのに。
あなたはあたしを見つめたっきり。なんにも言わなかった。

…どうすればよかったんだろう。
今あたしに求められていることは。
一体何なんだろう。




2003年09月09日(火) 馬鹿ね。

寺島が何を望んでいるのか。考えてみたりもする。
寂しいのか、快楽だけが欲しいのか、私をキープしていたいのか。
ぐるぐる回って、結局よくわからなくなる。
だけど、じゃあ「私は」どうしたいのかって考えてみても、
それもまたわからない。
寺島に同情した気で会うけれど、自分が寂しいだけかもしれない。
本当に寺島のことを思うんなら、突き放さなきゃいけないんじゃないかな。
好きな人がいるんだから。

好きな人のことを考えて欲しいって、思う。
新しい恋を満喫して欲しいって、思う。
そして幸せになって欲しいって、思う。
それは私の嘘偽りない気持ちで。信じてもらえないかもしれないけど。
中三のときだってそうだったから。きっとまた出来るって思う。

キープされた存在なんて絶対嫌だし。
「私」を求めてくれる人と出逢いたい。
新しい恋をしたい。
好きな人と、幸せなキスを交わしたい。
寺島には、寺島の好きな人と幸せになって欲しい。


なのに、家へやってくる寺島の笑顔は、限りなく寂しそうで。
無防備な自分を私にさらして。
私の胸の中で目を閉じて。
私の指を求めて、離してくれない。
これが新しい恋をして、私から去っていった人なのかな。
もし私が拒否をしたら。
受験や、その他もろもろで、そのうちに壊れちゃうんじゃないかな。
そう思ってしまうのは、やっぱり、私の未練の表れでしかなく。
また、自分の一番嫌いな自分になっていく。


馬鹿ね。
もう帰って来はしないのだから。
傷つくのは自分なのに。
傷つく前に、自分から手を離してしまえばいいのに。
何をそんなに怖がるの?




2003年09月08日(月) もう通り過ぎてしまった二人で

「付き合う」という言葉に縛られていたのかもしれない。
違うのなら、どうしてこんなに楽で、自分らしくやれるんだろう。
付き合っていた頃よりも、いい雰囲気を作れるんだろう。
なんだか皮肉だけど。

あたしは寺島に、恋人としての義務を押し付けすぎていた気もする。
期待しすぎていた気がする。
今は恋人じゃないから、そういうことは全然考えずにいて。
ただ求められるから、傍にいるだけで。
だからお互い楽でいられるのかな。

一人で考えていても、正直よくわからなくて。
寺島と一緒に考えたくなる。
だけどちょっと待て。
あたし達は別れたんじゃなかったのか?
そういう、二人の間の問題。
全て投げ捨てる道を選んだんじゃなかったのか?

***

今井、という女友達(7/30「私は真剣ですので」)の話。
彼女が今恋をしていることは、前にも書いた。
今日偶然に会って。久しぶりに話し込んだ所。
今日(9/7)の体育祭に告白したんだと言う。

今井は、あたしの小学校からの友達で。
中学の時も、ずっと見てきたけれど。
およそ恋愛を理解っていない人で。
あたしと周りの友達は、ため息をつくしかなかった。
中三の頃、あたしが寺島に恋していたとき。
寺島の想い人というのは、何を隠そうこの今井で。
寺島の想いをまったく理解してくれなくて。
腹が立って、嫉妬もあって、大喧嘩した思い出がある。
だから今井が恋をしてるって聞いたときは。
正直、なんだか腹立たしかった。

相手の人は、運動部のエースで。
今は部活しか考えられない、って、言われたんだと言う。
あたしも、新聞で写真を見たことがあるほどの人だから。
まあ、当然の答えかな、とも思う。
だけど本当はもう引退していて、受験のためにやってるんだから、
受験が終わったらもう一度告白したら。
そう言ったら、そのつもりだと返された。
やっぱりあたしは、これが今井だとは、考え辛かった。

片想いでいろいろ悩んでいる今井を見ていると。
中学の頃の自分を思い出させて。
恋っていいよな、と、
今井の後にやって来た市丸と語った。
初恋はそういうもんだよなと、
もう通り過ぎてしまった二人で過去を笑った。




2003年09月07日(日) ていうかあたしは。

来ないと思っていた。
来てもきっとまともに相手できないと思っていた。
泣いてしまって、困らせるんじゃないかと思っていた。

だけど現実には。
いつもどおりな自分がいる。
いつもどおりの寺島と、笑い合う。
何だか不思議で。でも楽で。
心地良かった。
こんな時間って。久しぶりじゃないかな。
ていうかあたしは。
こんな時間が欲しくて付き合っていたんじゃなかったのかな。


甘えるような寺島に恨負けして。
寺島が望むだけくっついていた。
体が離れているときは、手をつないでいた。
ちょっと近づけたら、寺島が指をからめるから。
ほどくことなんて、出来なくて。

頬へのキスは、ずっと避け続けた。
「恋人にしかされない主義なの」
でも全てをかわすなんて出来なかった。
だから仕返しのつもりでしてやったら、
「控え目だね」
「…。嫌がるかなと思って」
「何でだよ」
こっちが聞きたいよ。
あたし達、ちゃんと別れたのに。
今度はきれいに別れられたと思ったのに。
どうしてまた、あなたの隣にいるんだろう。

「好きな女が出来ても。また純子の傍にいるんだな」
「情けない人ね」
「否定はしないよ」
喜んでいいのか何なのか、ちょっとわからずにごまかした。
どちらを選ぶのよ、と聞けばいい場面のような気もするけど。
選ばれなかったら悲しいから、聞かなかったんだと思う。

寺島がふっと笑うのを感じた。
理由を聞いたら、
「純子の傍だからか、今俺無防備だなと思って」
前に…寺島は自己分析で、警戒心が強いことを言っていた。
気にしていたようだったから、その言葉は嬉しかった。
だけど…。
「陽ちゃんの一番近くにいるのはその人よ。
近くにいる人には勝てない」
「そうかな。そりゃ距離的には近いけど…嫌われてるみたいだし」
「陽ちゃんが体育祭サボるからでしょ」
「…」
何だか気まずい気がして、背を向けた。
そのまま学校の男子の話をしてるうちに、髪の毛を触る手に気づいて、振り向いた。
その勢いで腕の中にいれられ、また指がからんだ。





2003年09月06日(土) 言葉とは裏腹に。


今度の日曜は、体育祭。
私の学校も、寺島の学校も。
だけど私も寺島も出ない。
私が出ないこと、多分寺島は知らないけど。

私は、クラスについていけなくて。
本当に合わなくて。
合わせよう合わせようとして、今まで頑張ってきたけど、もう限界。
だから出ない。
寺島が出ない理由は、よくわからないけれど、
どうも集団行動にとけ込めないらしい。
徹底して不参加を決めこむ寺島の話を、私は笑うしかなかった。

でも寺島の話を聞いてると、心配してしまった。
クラスの人に嫌われそうなこと、たくさんしてるから。
どうして自分はちっともかまわないのに、人が孤独になるのは見てられないんだろう?
寺島は、言葉と裏腹に寂しそうで。表情が暗くって。
だから拒否、出来なかった。

「彼女は、どうなのよ?」
「…別に、何にも」
今彼女が、前の席にいるそうだけど。
体育祭のことが気まずくて、嫌だって。
学校に好きな人がいるくせに、
「学校行きたくない」
なんて言ったりして。
…私の立場、ちゃんと理解してるのかな。
またドロドロしても、知らないよ。


***


まとまりない文章でごめんなさい。
たくさんの話を一気にしたので、そのまま文章におこすことはできなくて。
話題を一つずつ、私なりに書いてきました。
よりが戻ったわけでは、決してなく。
戻りたくなったわけでもなく。
結局は何も変わっていないと思います。
ただ一つ不思議なこと。
それは、寺島が私の家に来た理由の電話。
かけてきたハズの男友達が、実はかけていなかったって、市丸が教えに来てくれて。
何なんだろうって、三人で首をひねりました。
今日(9/5)寺島が来たのですけど、うっかり聞くのを忘れてしまって。
真相は、来週か再来週になりそうです。
ああ気になる。




2003年09月05日(金) 「…」


前々日からの続きです。
それと今日は…性的な表現が含まれます。

***


「こっち来て」
と言われて、自転車の向こう側へ行った後。
寺島の手は、私の腰か胸にあった。
おでこをくっつけられて。何回か頬にキスをされた。
我慢できずに声を出してしまう度、どんどん向こうのペースになってゆく。
「恋人じゃなきゃ、ホントはこんな声聞けないんだよ?
贅沢」
そう言うと、寺島は音を立てて頬にキスをした。
不思議そうに見ると、
「恋人じゃなきゃ、こんなキスもらえないでしょ」
「あら…あえぎ声なんか好きじゃなくても出るわ。
キスは好きじゃなきゃ出来ないと思うけど」
なんとかペースを取り戻す。
そんなキスは苦痛でしかなかった。
私は、恋人にしかキスされたくない。
だってこの人。
私じゃない他の人を好きなのに。
そう思うと少しだけ、涙が浮かんだ。


接近したままの真面目な話。
話が進むにつれ、寺島の手はおとなしくなっていった。
「強くなったな」
「陽ちゃんを愛して強くなったの」
私は少しだけ、寺島を抱く手に力をこめた。


不意に、寺島が私の額にキスをした。
「えっ?」
「強い純子に、尊敬のキスだよ」
「…」
これだけ。
私が堂々ともらえるものは、このキスだけ。
私がときめくのも、ドキドキするのも、
心底嬉しいのも、このキスだけ。
ドキドキする度に。
私はまだ、寺島に恋しているのかなと思う。


私を抱き締めたまま、
「おやすみ」
と寺島が言い、時間が来たのを知って、私は体を離した。
寺島が、つないでいた私の手を離すのに間があったなんて、
下手には信じたくない。
「強くなったでしょう」
髪を上げながら私は言った。
「ああ…」
「ふふふ」
「…俺が弱くなったのかも知れない」
「えっ」
「…」
自転車をこいで行く寺島に、大急ぎでおやすみと叫んだ。
複雑な心境ではあったけれど。
哀しくは…なかった。





話題的には、まだ続きます。




2003年09月04日(木) 私は信用出来ないし。



TVドラマのCMで、別れ話を切り出された女が、
そんなのは嫌だと言い張って席を立つ場面を何度も見た。
見る度に、あんな女にならなくてよかったと思った。
すがりついてでも別れたくない気持ちは、痛いほど理解るけど、
新しい人の存在が原因なら、やっぱり身を引くしかその場はないと思う。
市丸にそう言ったら、
「でもあっさり引かれるのも、嫌だよ」
と言った。
ちなみに市丸は、彼女が出来たら、
新しい人の出現など自分にはありえないと言った。
一生覚えといてやるつもりだ。


寺島にも聞いてみた。
昨日の場面に戻る。
「陽ちゃんだって、引き止められたくなかったでしょ?」
「…さあどっちだろ。わかんない」
「…」
男の人って身勝手だと、そのときは思った。
だけど、それはただ男のプライドが許さないだけかもしれないとも思った。
自分はあくまでも、女を多少なりと傷つける立場なわけで。
罪悪感もあるわけで。
泣かれる覚悟もしたし、別れ話が長引く予想もした。
そこで全く気にしない、未練もないような反応を示されると拍子抜け。
むしろ自分のほうがカッコ悪く見えて。
何だか釈然とせず、嫌なのかも知れない。
こんな偉そうに書くほど、男の心理を知っているわけではないけれど。
もしまた寺島が来たら。聞いてみようと思う。
引き止めたら、止まっていたかって。


「でも引き止めて、止まってくれてもさ。
私は信用出来ないし。
引き止めて束縛することで、余計にその人への想いを募らせちゃっても嫌だし。
元々私は、陽ちゃんを束縛なんてしたくないし」
体はくっつけたまま、私は真顔で淡々と話した。
「また私に逃げてくる代わりにより戻してなんて言わないよ。
今陽ちゃんには本当に、逃げ場がなくって辛そうだから。
私今彼氏いないし、好きな人もいないし。
別に空しさも感じない。
我慢できなかったら来ていいよ。来る?」
「…気が向いたらね」
来ないかも知れない。
本当にわからないけど。
寺島が甘えられる、今までの私じゃないって思ったかも知れない。
だけどそれならそれでいい。
拒否できなかった罪悪感、感じなくて済む。




2003年09月03日(水) ごめんねって言う寺島に、私はそう言った。

午後9時頃、チャイムが鳴った。
迎えた弟が、嬉しそうな顔で私を呼びに来た。
嘘だと言い張る私に代わって見に行った母が、
「あらいらっしゃい」
と、寺島専用の愛想のいい声を出した。
ついに私は、応援練習で筋肉痛の腰を上げることになってしまった。

理由は他愛もなかった。
男友達が寺島に電話をかけてきていて、寺島は留守していたのだけど、
電話をかけさせたのが私じゃないかと思ったのだ。
私はかけ辛いから。
でも私には全く覚えがなかった。
そう答えて。
会話は終ってしまった。

一緒に帰るのが習慣だったからなのか。何のきっかけもなく自然に道を歩き出した。
どちらの高校も、今度の日曜に体育祭があるから、その話をずっとした。
いつも話していたところで止まって。また話をした。
例の気になる人の話もした。
私はちっとも。哀しくなかった。
図書館の話もした。
自由で嬉しかったと、素直に話した。
市丸にされた質問に、寺島は笑った。


「陽ちゃん、胸見すぎ。」
「…見てないし」
蚊の鳴くような声で寺島は言い、うつむいた。
送られる視線が、あまりにもわかりやすかった。


「逃げてたんでしょ?」
「…そんな意識なかったけど」
「違うんなら、私が面藤テなこと言い出しても大丈夫だったでしょ」
「…」
寺島の腕は、私の腰。
私の腕は、寺島の首。
自転車を挟んで話をしていたのだけど。
「こっち来て」
と言われたら、拒否出来なかった。
好きだからじゃない。
寺島はそういう男だって知っているから。
今寺島が孤独を感じてることを、話を聞きながら察していたから。
むしろ同情。
だから体だけ寄せて、話はキツイ話をした。

「陽ちゃん私に甘えてるでしょ」
「それはそうかもしれない」
「何しても、変わらずに好きって言うと思って」
「…」
「どうしたの?」
「純子に説教されるなんて」
2人で苦笑した。
いつもは逆だったから。

本当は拒否するべきだったのかもしれない。
いや、そうだった。
だけど、どこにも逃げずにやっていける人間なんていやしない。
ごめんねって言う寺島に、そう言った。
付き合ってるときは、やっぱ愛されたくて。
自分というものが必要とされてないことが悲しくて。耐えられなかったけど。



2003年09月01日(月) 空しい?何故?


図書館へ出かけた。
新聞の占いによると、私の恋愛運が絶好調らしかったから。
少し期待しながら、靴を履いた。

寺島がいるかも知れないなんて。本当に私の想像だったけれど。
ちらほらとカッコいい人を見つけては、一人ではしゃいでいた。
そんな感情は、久しぶりだった。
私は結構、ミーハーな面があり。
寺島がいたときも、他の人に目がゆくことがあったけれど。
心は全部寺島のものだったし。
彼氏がいるからダメだっていう意識もあったから。
他の男の人は極力見ないように、意識しないようにしていた。
今日はそんな、悪い言葉だけど束縛がなくて、
ああそうか、あの人だけじゃなくて私も自由なんだと、実感した。
不思議と、嬉しかった。


「空しくないのかよ」
市丸にそう聞き返されて。
初めてその感情に気がついた。
私にその感情がないハズないのに、それでも思いつかなかった。
空しい?何故?
思うべき人がいないから?
でも私。それを哀しいとは思わない。
だって自由って。本当に素晴らしかった。

市丸はそんな私を、ちょっとさびしげに見ていた。
だけどね市丸。
未練たらしくて話せなかったけれど。
「―男は、新しい女に弱いが、飽きるのも早い。
そして、馴じんだ女の元に戻る―」
            (大和書房刊 柴門ふみ著 『恋愛は終わらない』)
その一文を何度も読み返したくて、借りてしまった。
そんな私も、確かにいる。



 < 過去  INDEX  未来 >


まりあ [MAIL] [BBS]
thanks for WhiteGarden


My追加