雪が降るということで20時15分出発のバスはいつになく混んでいた。
出発の5分前に乗り込めばいつもは座れるはずなのだが今日は全く座れず、 入口から少し入ったくらいのところで立つ羽目となった。
でも、まだ続々と客が乗り込んで来たので、運転手はその度に、 「もう少し中ほどまでお詰め下さい」 とマイクで訴えた。
僕は少しづつ押されて丁度バスの中央位まで来たところで出発の時刻となった。 でも、まだ乗り込んでくる客もいて、運転手は同じように訴えた。
その時、僕の前に立っていた50歳位の中肉中背のサラリーマンなおっさんが、 「もうこれ以上詰めれないから、閉めちゃえよ!」 と運転手に向かって言った。
それに対し運転手も誰も何も言わなかった。 それから静かに扉が閉まってバスが走りだした。
暫くして、前の方の横並びに席に座っている子供が 「自分乗る時に言われたら嫌なのに何で言うんだろうね」 と横に座るお母さんに話しかけている声が聞こえた。 お母さんの声は何も聞こえなかった。
そのおっさんは終点まで行かず次のバス停で降りた。 同時に乗客全員の肩が1cmほど降りた。 お母さんは子供の頭を撫でた。 雨は雪に変わり窓ガラスを撫でた。
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