佐藤に質問された時に田中は銀河系をぼんやり頭の中に浮かべていた。 そして銀河系の外にあるものを考えていた。 ただどれだけ考えても黒い闇だけだった。
田中は銀河系の中のことを考えはじめた。 銀河系の中のハビタブルゾーンにある太陽系について考えた。 太陽系にある地球について考えた。 地球にある日本について考えた。 日本の中の自分の会社が入っているビルの1フロアについて考えた。
会社の中では誰かが誰かを罵倒していた。 誰かが自分の価値観で誰かを評価していた。 冷遇を受けた誰かが自分は人間として価値が無いのだと考えていた。
大人な人間になればなるほど狡猾にみえて打算的にもみえた。 私情を挟むことはせず機械的でありスマートな人間が一番順当に階段をあがっていった。 会社がシステムである以上、高性能なシステムを持つ人の順にピラミッドは築かれていた。
次に、田中は自分自身のことについて考えてみた。
会社で上に行くということは高性能なシステムを築くということと同義である。 高性能なシステムを築くことは人間的価値と全く関係はない。 高性能なシステムを築くために人生を送っているわけではない。 もちろん人間的に価値のある人間になることが目的でもない。
まずは自分の周囲にいる人間を幸せにしたい。 それから困っている人をできるだけ多く助けたい。 たぶんそれだけなんだろうと改めて確認していた。
佐藤は、質問に何も答えず考え続けている田中に対し、 「どれだけ考えても無駄だぜ。この世は結果しかないんだから。事実しかないんだから。誰かが困ろうが泣こうが、色んな気持があろうがなかろうが、関係ない。ただ受け入れるだけさ」 と言った。
田中は 「それも正しい」 と言った。
良く晴れた日のランチを終えた後のビルの屋上で手すりにつかまりながら2人は話していた。ビルの前の公園は、ピクニック気分のOLとピクニックの家族連れが芝生を取り合っていた。
この様子を銀河系の外から確認するには、人類の栄枯盛衰を何往復しても届かなかった。
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