「僕はもっと多くの人に何かを伝えたいんだ」
「おいおい。いきなり唐突だな。仕事の話はもういいのかい?」
「もういいんだ。僕がいなくても誰かがやってくれる仕事に対して、情熱を傾ける意味なんてあるか?」
「確かに」
金曜の17時、中山と石井は新橋のスターバックスに居た。店内は、日テレ見学帰りの中学生だったり、これから同伴で出勤するキャバ嬢だったり、中山たちのような仕事帰りのサラリーマンで一杯だった。今日は午後過ぎから石井と一緒に客のところに行って仕事を終えて、あとは家に帰るだけとなったところで、石井から「ちょっとお茶していくか?」と誘われてスタバに立ち寄ったという流れ。中山と石井は同期・同級生の30歳で、既に結婚をしていて子供までいるから、金曜の夜と言えども、特に何もなければそのまま家に直行するのが普通なのだ。
「で、伝えたいことって何だよ?」 少なくなったマンゴーフラペチーノをすすりながら、石井は言った。
「結局、いつも言ってる人の生き方のことか?それともこの世のあり方か?または、メディア批判か?」
「たぶん何でも良いんだ。たぶん、単に自分の考えをもっと多くの人に伝えたいんだ」 言葉に出してみて、初めて気づいたのだが、本当に中身や媒体はなんでもよく、単に自分の考えをもっと多くのところに曝け出したいのだと本当に自分はそう思っているんだと中山は思った。
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