あふりかくじらノート
あふりかくじら



 宝物コレクターとしてのくじら。

翻訳という作業において、それが誰かの魂がこめられた
代物であればあるほど、その誰かに乗り移って
筆を滑らせているような、ある種の別世界に意識が
導かれている瞬間がやってくる。

誰かの脳みその中を感じ取り、その指先の打つ
タイプライターの調べをなぞり、その世界へと
誘われていく。

わたしはいま、彼女の作品を翻訳するということについて
また考えている。
その瞬間を、また自ら望んで体験しようとしている。

宝物コレクターとしてのくじら。
誰かのことを考えるとき、その人の見たものはなんだったのか、
わたしは目を閉じ、その世界へ意識をとばしている。

それはゆっくり時間をかけて、わたしの意識へと融合してゆくのだ。

2002年11月17日(日)
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