あふりかくじらノート
あふりかくじら



 世界一淋しいスーパーマーケット。

午後四時。
エディンバラのグレーの石畳に霧雨が降ってきたので
キッチンの窓をしめた。

三日ぶりに外の街に出る。
街を歩く。一年前と同じにおい。ビールの酵母。
同じ気温と風。エディンバラの九月。

旅行代理店によって、それから本屋によって(そのにおい!)
たくさんならぶカラフルなガイドブックをいくつもひきだして
きれいな写真をじっくりながめた。

スーパーで南アからのコースメイトに会う。
「今夜発つのに論文が終わらないわ。どうしよう。」
煙草を買いにきただけ。もう、食材はいらないから。
その淋しい笑顔。

この一年。わたしたちの一年。
あと数秒で終わりをつげる。
「買い物、しないよね。」
「しない…。」

泣きたい気持ちがいっぱいいっぱいにふくれあがって、
でもやっぱりわたしはきれいに微笑んだ。

…サイレンス。

「...No, I'm not gonna say good bye. I'm not gonna say good bye」
彼女が言った。
たくさんの別れを経てきて、それでもやっぱりそれに心を痛めつづけている。
彼女とわたし。
淋しい微笑み。

「....Alright, then...See you!」
「See you soon.」

泣きそうになりながら、三秒間きれいに微笑んだわたし。

こうして、こうして、一年は終わっていく。
この街を去る。この街で暮らした自分と別れる。

空っぽのカゴを持って、スーパーの中
賑やかな棚をぐるぐる馬鹿みたいに回りながら、
ずっとずうっとうろうろしながら、泣きそうだった。

世界一賑やかで、あたたかなスーパーで。

 ○o.・゜゜・。★

世界はこんなにつながっている。
ニューヨークがこんなに痛い。

2001年09月15日(土)



 ニューヨークから一夜明けて。

9月11日英国時間の午後二時。
アメリカ人フラットメイトの伯母から電話。
ニューヨークでの出来事を知る。

夕方、寮のコモン・ルームにてBBCに釘付け。
寮に住む多くの人たちが部屋に集まってくる。
アメリカ人はもちろん、多くの国の人々だ。
活発な議論。真剣な意見。
皆、様々な視点からの意見を持っている。
原爆やサリン事件を経験した日本という国から来た
わたしも、持っている。
その日ずっと、重たい沈黙とそれぞれの思惑と、
たくさんの「ことば」に満ちていた。
夕べはたまたま、学年末でこれからそれぞれの
国に帰ろうという2週間前の、最後の集まりの
日であった。

この日の空気を、わたしは忘れられないと思う。

「パール・ハーバー以来」との声も何度も
BBCから流れる。真珠湾以来。
「痛い目」をみたことのないアメリカ。

これは、戦争ではないのだ。

US will fight against....!
Hit back...!
やられたらやり返すのか。
もっともっと多くの人間の命を犠牲にするのか。
それが21世紀のグローバライゼーションなのか。

これは、戦争ではないのだ。

イスラムの世界が、アラブの人たちが、
このことで辛い目にあわれたりされませんよう…。

1998年ケニアが、哀しい。

2001年09月12日(水)
初日 最新 目次 MAIL HOME

エンピツランキング投票ボタンです。投票ありがとう。

My追加


★『あふりかくじらの自由時間』ブログはこちら。★




Rupurara Moon 〜ルプララ・ムーン〜 ジンバブエのクラフトショップ



『あふりかくじらの自由時間』 を購読しませんか?
めろんぱん E-mail


【あふりかくじら★カフェ】 を購読しませんか?
めろんぱん E-mail


 iTunes Store(Japan)