ぽあろの文芸日記

2001年03月29日(木) 折込都々逸三題

折込題 都々逸
 
 どこからきたのどちらへいくのいつもあなたはつんとして


折込題 お花見

 老いも若きも花見の宴泣くな今宵は皆騒げ


折込題 内閣

 内閣さんはいつになったら鍵を返してくれるやら



2001年03月28日(水) 都々逸三題

  夢の出逢いを待ち侘びながら眠れぬ夜を繰り返す

  洒落ていないわ私はイモよ恋という名のヤマイモち

  手紙しまってなんでもないと顔で笑って肩で泣く



2001年03月27日(火) ただ横に

  熱風呂に長くいられず春がきた

気温が上がるにつれて、
水も温かくなってきた。
いつもの調子で風呂を沸かすと、
えらい目にあってしまう。

風呂上りのひとときも、
のんびりできる良い季節がきた。

  風呂あがりただ横になる春の宵



2001年03月26日(月) 喧騒の外

  数十年前の挙式を指輪屋の夫婦が語る喧騒の外

二人の結婚指輪が出来上がった。
街中の、にぎやかなモールの中。
宝石店のご主人と奥さんは、
数十年前に海外挙式をあげたとのこと。
落ち着いた店内、落ち着いたお二人。
しばらく、二人でとどまっていたいような、空気。

店を出る。
二人で、店主夫妻の話が咲く。
また一つ、目標ができた。

  約束の指輪誓いの言葉でも目と目を合わす力がまさる



2001年03月23日(金) 桜咲く

  桜咲く知らせはいつもネットから

YAHOO!のトップで
桜の開花を知る。

春が来て嬉しいような、
なんとなく寂しいような。

  花を待つ心も愉しかったのに



2001年03月22日(木) ごくふつう

  なにげないありふれているごくふつうのもののなか恋はまぎれて

恋をして、
一緒になり、
今さらに恋している。

恋人だった頃、
二人の「とくべつ」を、
やっきになって探していた。

結婚して、
二人にあるのは、
えんえんと繰り返される「日常」。

そのなかで、
今も僕は、
妻に恋しつづけていられる。

それが、ふしぎ。
ふしぎだけど、うれしい。
振り返れば、たくさんの恋を日常に失ってきたのに。


  なにげなく過ぎ去りし時振り返り我はっとする恋を落とした



2001年03月21日(水) そぞろゆく

  春風やショッピングモールそぞろゆく

休日を利用して、家族で出かける。
最近できた、ショッピングモール。
駐車場には、春の風。
大勢で賑わう中を、
笑いながら歩いていく。

  パプリカを皆で選りあう陽も笑う



2001年03月16日(金) 春の風

  春の風池のさざなみ持て余し

車で春めいた街を走り抜ける。
大きな池を横目に見ながら、
窓を開け風を感じてみる。
空の青が、いい具合になってきた。

  青空をもっと広げよ春の風



2001年03月15日(木) 足音

  一歩ずつ一歩ずつその足音は聞こえないけど春はもうそこ

気が付くと、暖かい。
油断すると、まだ寒い。
セーターが行ったり来たりするような毎日。

春は玄関先で、戸惑っているのかも。

  セーターを椅子の背にかけ伸びをする



2001年03月14日(水) 文字盤

  腕時計チクチクチクと我が胸の不安の粒を刺して止まらず

静寂。
腕時計の音だけが響く。
まるで自分が自分でないような感覚。
自分はどこへ。
時計の針は、行き場を示してはくれない。

  文字盤に映ってありし我が瞳の中に潜んでいるものは何



2001年03月13日(火) 白梅

  白梅や根元の土も匂い初む

うららかな早春ならば
紅梅の恥らうような紅さ

まだ冬去りきらぬならば
白梅の引き締まった聡明さ

色とりどりの梅
小ぶりの木に一輪二輪と
申し訳なさそうにひっそり咲く
そんな梅の姿もまたいじらしい

  梅一輪首傾げたる乙女かな



2001年03月12日(月) 紅梅

  紅梅や人を集めて心浮く

偕楽園の梅を見に家族で出かけた。
梅の見事さはもちろん、
人の出足の多さにもただただ感嘆。
多くの出店が軒を連ね、
さながら村の祭り日のよう。

寒空の中咲き誇る梅に酔うもよし、
人々の祭に浸るもよし。
日常を離れ、思索に耽るも、またよし。

  しんとして祭りの外の竹林



2001年03月10日(土) 憂鬱

そとは はれているのに
かぜが ここちよいのに

頬づえをつき おもむろに
紙を取り出し 何気なく
ペン走らせる 昼下がり
紙の上には 「憂鬱」と
バランス悪く 並んでて
丸めもせずに 放り捨て

そとは はれているのに
かぜが ここちよいのに



2001年03月09日(金) 離れ十年

  故郷を離れ十年あの受験生と我どこに差がある

大学進学のために故郷を離れて十年になる、
ふとそんなことに気づいてしまう。
ネット社会のおかげで旧友ともつながりが保て、
懐かしんでみたり、進歩のない自分を悔やんだり。
受験生の姿は、そのまま十年前の自分、
そう思うとちっとも変わっていないように思える。

高校時代の友人から引越通知のメール。
自分の次のステージは・・・

  故郷に帰りたいと思う回数が増えてどうする二十八歳



2001年03月08日(木) 弥生空

  深呼吸しかけてやめる弥生空

晴れているほどではないが、
気分の良い空が広がる。
重たい気分を振り払ってくれそうな、
逆に閉じ込められてしまいそうな、
そんな微妙な空の色。

  三月や今日の次には明日のくる



2001年03月07日(水) 藁でも何でも

  君を恋う涙でないぞ花粉症

ここ数年なりを潜めていた花粉症が
今年はぐんぐんとやってきている
気の利いたコトバを浮かべることすら
阻まれてしまう一日。

  ドリンクに飴に目薬鼻炎薬藁でも何でもすがりたし今は



2001年03月06日(火) 恋瀬川橋

  仕事仕事君を忘れて高速道なぜそこにある恋瀬川橋

仕事で車移動。
もくもくと高速を走る。
ふと目に飛び込んだ
「恋瀬川橋」の看板。

短絡的に妻を思い出す。
我ながら、単純とあきれつつ、
仕事先で合間を見つけ、デパートへ。

  君が見ぬ車のトランク忍ばせて覚悟しておけホワイトデーは



2001年03月05日(月) 待ち伏せ

  カゴを手に一人食料品売り場ショートカットの君が待ち伏せ

妻が美容室に行っている間に、
夕食の材料を買いに行くことになっていた。
なんとなく一人で行くのは寂しいもので、
なかなか家を出られぬまま、夕方。

帰ってくる前に、と思い一人で出かける。
別の買い物を済ませ、スーパーの食料品売り場へ。
とぼとぼ歩いていると、目の前に
ショートカットにした妻がにっこり立っていた。

  右腕にカゴ左には君がいて我「半額」の豆腐を選ぶ



2001年03月03日(土) 雛の父

  白酒を抱えて眠る雛の父

今まで、雛祭りを意識したことはなかった。
一人っ子、母と二人暮し。

昨年、妻を迎えて、
はじめての雛祭り。
我が家で祝うのは、
女の子が生まれてからだろうが、

ふと、妻の実家のことを想ってみる。

  吾も雛を切なく見るや十年後



2001年03月02日(金) 雪もどる

  ため息をつくひまもなし雪もどる

朝、雪が降ってきた。
3月の声をきいても、春はまだ遠い。
かかえているものの大きさを思う。
かかえる自分の小ささを思う。

  くしゃみひとつ吾の足元の寒さかな



2001年03月01日(木) 梅の枝

  三月と思えば寒し朝寝坊

暦は三月。
なんとなく気が引きしまる。
いろいろと、支度する季節。
いつまでも、冬気分ではいられない。

  一喝の鞭とならんや梅の枝


 < 過去  INDEX  未来 >


ぽあろ [作者のHPへ]

My追加