ぽあろの文芸日記

2001年02月28日(水) 薄曇り

  雪景色寝ぼけ眼の薄曇り

目がさめた。
何気なくカーテンの隙間から
空を見上げる。

真冬を思わせる、曇り空。
一瞬、雪でも降ったのかと思うほど。
見間違えと、ほっとするやら、
ちょっと残念がってみたり。

  君とならじっと耐え居る冬もまたよし



2001年02月27日(火) 湯豆腐

  湯豆腐に顔二つほころびっぱなし

もうすぐ三月、でも寒さは緩まない。
小ドライブの果てで見つけた焼鳥屋。

湯豆腐を、二人で一人前。
とんすいをかわるがわるに持ちながら。

二人ではふはふと笑う夜。

  満腹に満ち足りて二人星も融け



2001年02月26日(月) おんぼろの車

  閉店の看板を見て苦笑いしばし二人のドライブ続く

久々の外食。
妻がチェックしていた店に向かう。
ちょっとしたドライブ。

駐車場。
空いていて良かったねといいつつ店へ。
店には閉店の看板。

空いているわけだ、と笑う。
申し訳なさそうにする妻。
もう少しドライブしよう、と言うと
妻の顔が輝いた。

  おんぼろの車走らせちょっとした幸せ探しの旅をはじめん



2001年02月25日(日) 魔法

  TVゲーム画面の中で飛び交える魔法を君も我に掛けしか

久しぶりに二人でゲーム。
同じゲームを何度も何度もやるタイプ、
操作は妻、指示は僕。
新鮮な出来事はもう画面にはないけれど、
妙に新鮮に感じる。

  コカ・コーラ二人で一本かわるがわる飲むわけでなくただそこにある



2001年02月24日(土) 春はまだ

  週末といっても何も変わるわけなく今日もまた平穏でいたい

仕事がたてこんでいる。
日曜も何もなく。
身体の疲労が、気持ちの疲労をつれてきて。
これで天気でもよければいいのだが。

  少しだけはじけてみたい春はまだ



2001年02月23日(金) 荒っぽく

  階段を上っていけばいくほどに気分が下がっていくときもある

仕事に疲れ、家路を急ぐ。
急いでいるのに、足が止まる。

  アクセルを荒っぽく踏み走り出すなぜ二つしかない選択肢



2001年02月22日(木) 隣室

  くたびれて眠れる君の横顔をしばし眺めて隣室へ出る

初仕事でくたびれた妻。
僕が風呂から上がると、もう眠っていた。
ほっとしたように眠っている。
きっと緊張の連続だったのだろう。

いつまでも眺めていては起こしてしまう。
まだ眠くならないので本でも読もうかと思ったが、
とにかく起こしてはかわいそうと思い、
そっと隣の部屋へ出る。

  我一人ならば重たい音楽をじっくり聴こうヘッドフォン付け

ちなみに曲はマーラーの5番・・・



2001年02月21日(水) 弁当

  弁当を作る背中をじっと見る今日から君は看護婦になる

妻が新しい職場に通い始める。
准看護婦として。
いつもより早起きする妻に、
寝ぼすけの僕も付き合う。

妻用の弁当と合わせて、
僕の弁当も作ってくれた。
弁当持参で出勤するのははじめて。
嬉しいような、申し訳ないような。

  一休み弁当箱を開けてみるふりかけの袋スヌーピー笑う



2001年02月20日(火) そのまんま

  助手席の君の横顔愛しくていい子になれり黄色信号

所用で遠出。
妻を乗せ北へ。

用はすぐ終わり、
妻を乗せ南へ。

ただの移動のはずが、
ちょっとした旅になる。

  汝とふたりサービスエリアで伸びをした手をそのまんまつないで行こう



2001年02月19日(月) この素晴らしい世界

  忘れ物戻りし我が家妻一人吾の好むジャズかけ家事をする

ふと戻った家で、
自分の好きな曲がかかっている
妻はジャズをかけながら
掃除と洗濯に明け暮れていた
それが、なんとなくうれしい

  二人並び「この素晴らしい世界」聴く掃除機うなり窓に陽は差し



2001年02月18日(日) 時計の砂

  喫茶店いつもロイヤルミルクティ時計の砂を追う汝の目を追う

何気なく過ぎていく時間
そんな時間こそが贅沢だと思う
喫茶店の砂時計
砂が落ちきるのを待ちわびるでもなく
ただただ砂を眺めている君

とりとめもない話をしていくうちに
ミルクティはいつもさめてしまう
それでも君は
おいしそうに飲んでいたね
その一瞬一瞬が至福の時だったんだね

君とともに暮らすようになり
そんな時間はかえって減ってしまった
でもそれは寂しいことじゃない
毎日のあわただしい時間の中に
いつも君がいること それが至福の時

  眠い目をこすりコーヒー飲み干して君と目が合う今日が始まる



2001年02月17日(土) 頬づえ

  日とともに長くなりゆくあくびかな

昼間はかなり暖かな日が増えてきた。
寒がりとしてはうれしい限りで、
セーターを脱いで行動できると気も軽くなる。

なんとなくのんびりしようかな、
そんな気にもなれるのは健康なのだろう。
とはいっても、のんびりばかりでもいられない。
春に備えることは、いくらでもある。

  頬づえの腕を伸びして気も新た



2001年02月16日(金) 君の待つ街

  エンジンをかけヒーターを強く入れ窓溶けを待つ君もう少し待て

夜仕事を終える。
家路を急ごうと駐車場へ。
車のガラスは氷結。
急いでエンジンをかけ、ヒーターをつける。
車内の寒さに震えながら、出発できるときを待つ。

  フロントのガラスの氷じわじわと緩んだ向こう君の待つ街



2001年02月15日(木) 愛、がんばれ。

  愛があるから遠距離も大丈夫と言い切れない愛は欲張り

どんなに離れていても、
心は通じ合える。
離れれば離れるほど、
通じ合おうとする心は強くなる。
それでも心の通いは、
ふとしたことで危うくなる。
気の緩み、不安、気疲れ。
通じようとする心が強いほど、
満たされぬときの不安が募る。
愛は、欲張りなものかもしれない。
でもその不安を、満たしていくのは
やはりその愛そのものなのだろう。

  愛があるなら何だって大丈夫愛よりもなお強いのも愛



2001年02月14日(水) 新婚157日目。

おととしのバレンタインは、まだただの知り合いだった。
去年のバレンタインは、いつか一緒になるのを夢見ていた。

3月の僕に一波乱、4月の君に一波乱。
5月、君のバースデーで改めて約束をして。
6月、君の涙に固く誓った。
7月、二人の小さな城を見つけ。
8月、ささやかな新婚旅行。
9月、大きな波がやってきたけれど、二人で決めた結婚記念日。

あわただしくも素敵な時が流れて、
喜んだり、けんかしたり、泣いたり、笑ったり。
僕が寝ぼけちゃったり、君がお鍋を焦がしたり、
そんなこんなでやってくる、二度目のバレンタイン。

期待しちゃっていいのかな、と僕が笑う。
期待しなくていいのかな、と君が笑う。

2月14日、次の夢を二人で語ろう、そんな新婚157日目。


※「エムスタ・ドットコム」のバレンタインイベントに投稿した作品です。



2001年02月13日(火) 風の街

そとは風の街

分厚いガラスに隔てられ
なかは穏やかな世界
ただただのんびりと時が過ぎる
時折ポットが低くうなる

そとは風の街

電話一本かからない
なかは静かな世界
ただただぼんやりとすごしていく
時折家族で笑いあう

そとは風の街
家は 家族は あたたかく



2001年02月10日(土) 寿司折

  買い物の荷物抱えし老夫婦足取り軽く寿司折を提げ

会社に向かう前、デパートの寿司売り場で巻き寿司を買った。
何かしら食べないと、という義務感から。風邪をひいてしまった。
なんとなく気が晴れない中、会社へ歩いていく。

交差点で老夫婦を追い越す。買い物がえりらしい。
さほど重そうな荷物でないにせよ、大変だろうなと思ってみる。
よく見ると、それぞれ手にすし折を提げている。
僕と同じ店の寿司折。
こころなしか、二人の足取りが軽く見えた。

帰ったらお寿司を食べましょうね、なんていってるのだろう。
重く歩いている自分が恥ずかしくなった。
追い越すとき、僕も足取りを軽く軽く。
二人と同じ寿司折を見せるように…。

  50年先に仲良くあるよりもその50年を仲良くいこう



2001年02月09日(金) いろいろものや

なにか おさがしですか
ここは いろいろものや
わりと そろっています

あなた はじめてですか
いいや まえもみました
いつも おさがしですね

ここで みつかりますか
いつも みつからないで
そっと おかえりになる

きっと またいらしてね
ここは いろいろものや
いつも わたしがいます



2001年02月08日(木) PCに向かい

  キーボード叩く手止めて聞いてみるオマエハナニヲカンガエテイル

自分への課題の意味で、
毎日この日記を記している。
発想の貧弱さを嘆きながら。
一日毎には変わらない自分に呆れながら。

でも確実にいえること。
自分を考えることが増えた。
目をそらしていたことに目が向いている。
キーボードを叩き、自分の内面をたたき起こす。

  「決定」にカーソル合わせ手が止まるココデイカネバオトコデナイゾ



2001年02月07日(水) 二人らしさ

  「いいパパになりそうだね」と妻笑う今はただ良き夫でいよう

最近思う。
家に帰ってからの自分が、どこか変わってきた。
変わったというより、戻ったのかもしれない。
はしゃいでみたり、雄弁になったり。
とても自然に生活できている。

やはり家族のおかげなのだろう。
ぬいぐるみで遊ぶ自分を見て、
妻は「いいパパになれるね」と言ってくれた。
僕らが子供を作るのは、当分先のことだから、
それまでにうんと二人らしくなっておこう。

  「君」でなく「僕」でもなくて「二人」らしく育っていこう風強くとも



2001年02月06日(火) 教習の車

  教習車追い越して我ハンドルを握りなおせり10時10分

久しぶりに車で遠出。
途中、教習所の脇をとおる。
教習所の出口から公道に出るのにおろおろしている車。
それは、ほんの1年前の自分。
自然と、背筋が伸びる。

  教習のレーザーディスクで見たような「良いドライバー」になりきり走る



2001年02月05日(月) ガラスの向こう

  約束の3分前の喫茶店ガラスの向こうコート脱ぐ君

久々の「待ち合わせ」。
いそいそと喫茶店へかけていくと、
ちょうど妻も着いたばかりらしい。
目が合い、笑顔が合う。

紅茶を飲みながら、作戦会議。
向かいの旅行代理店で、挙式の予約。
ぶらぶらと散歩。
二人の指輪を見つけて。
パンとチーズと砂糖とバナナを買って。

2時間半の小デート。
家に帰るまで、徒歩2分。

そういえば、朝けんかしたことなんて、忘れていた。

  我が家までかけっこでゆく北風も止む



2001年02月04日(日) 団地の節分

  節分や恵方を向けば壁であり

鰯。巻寿司。
今年の節分も、節分らしく母が調えてくれた。
恵方を向いて巻寿司にかぶりつく。
目の前に壁、そんな状況もなんだか楽しい。

団地内、豆まきも気を使いながら。
小声で鬼を追いはらう。
遠くに投げるわけにいかず、
窓の目前の木々に当てて下へ落とす。
鳥が食べるから心配要らない、と母が笑う。

  声落としそっと蒔く豆鳥の餌に



2001年02月03日(土) 眠れぬ夜

  眠れないと思うからなお眠れないと思ってみてもまだ眠れない

ここ最近、眠れない、ということで悩むことがほとんどなかった。
むしろ、眠りたい、もっと寝ていたいというくらいに、
睡眠時間が足りない忙しさに追われていた。

久しぶりに少しゆっくり眠れると思い、
疲れた身体をベッドに放り出す。
それが、なぜだか、眠れない。
眠れずにいるうちに、眠れないことが焦りに変わる。
焦るとなお、眠れなくなる。
胸をかきむしりたくなるような感覚。
結局、4時間ほどして、ようやく眠りについた。

朝、眠れなかったことが嘘かのように爽やかに目覚める。
なんだかんだあっても、
今の自分は良い気分で生きているらしい。

  憂鬱の夜をくぐりて冬晴れの朝



2001年02月02日(金) 冬の像

  頬を刺す寒さも澄める雨上がり

仕事を終え、外へ出ると、
暗がりの中、路面が濡れているのに気づく。
雨が振ったの止んだのに、無縁でいた自分が怖くなる。
駐車場までの短い道のりの中。
全身のうち頬のあたりだけを露出し、
そこでのみ寒さを受け止める。
痛いくらいの寒さ、でも不思議と心地よく。
しんと静まり返った雨上がりの夜の駐車場に
しばしたたずんでみる。

  冬の夜の凝縮されし像となり我ただ一人駐車場に立つ



2001年02月01日(木) ひとつ屋根の下

  山ひとつ乗り越えて来し妻のためタオル贈らん宝石でなく

妻と久しぶりの外食。
ここのところ互いに何かと忙しかったので、気晴らしもかねて。
昼間のうちに、会社近くの雑貨屋に入る。
なにかちょっとしたプレゼントを、と思い探す。

キレイなもの、高そうなもの、飾れるものに
目が向いていた独身時代と違って、
かわいいもの、安いもの、使えるものに目が行く。
選んだのはクマの柄のタオルを2枚。
妻がどんな風に使うかを想像しながら。

外食先に選んだのは、ラーメン屋。
かばんからプレゼントを出す。
喜んでくれる妻。
二人で食べるラーメン。

なんだか、のんびりとした夜。
デートが終わり、帰り道。
離れ離れに帰らなくていいんだ、と二人で喜んでみたり。
当たり前のことを、改めて実感できた一夜。

  同じ星眺めなくても気の通う二人になれりひとつ屋根の下


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