ケイケイの映画日記
目次|過去|未来
2017年12月31日(日) |
2017年年間ベスト10 |
お節の用意も目処がつき、今年のベスト10を書かせていただきます。 では、洋画から。
1位 マンチェスター・バイ・サ・シー
2位 私はダニエル・ブレイク
3位 お嬢さん
4位 人生はシネマティック!
5位 ギフテッド
6位 沈黙−サイレンス-
7位 20センチュリー・ウーマン
8位 夜明けの祈り
9位 ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
10位 ライオン 25年目のただいま
邦画は例年通り5作品です。
あゝ、荒野(前後編)
彼女がその名を知らない鳥たち
彼女の人生は間違いじゃない
キセキの葉書
幼な子われらに生まれ
今年は洋画・邦画合わせて71本。プライベートが超多忙で、50本くらいになるのじゃないか?と危惧していたので、意外と観ているなが、正直な感想です。その代わり、バンバン感想落としていますが(笑)。今年の映画ライフで印象深いのは、春の韓国映画祭り三作(「お嬢さん」「哭声/コクソン」「アシュラ」) と、「新感染 ファイナルエクスプレス」の出来の良さで、日韓不穏な時代に、きちんと韓国映画の秀作を公開する配給さんや劇場の心意気、またそれに応える映画ファンの皆さんの見識の高さに、少々感激しました。他にももっと韓国作品を観なければと、思った次第です。
それと11月には念願のTOHOシネマズフリーパスをゲット!今の会社に移って、ピタパで電車代がなくなったこと、会社の福利厚生で、1300円で観られることで実現しました。11月はTOHOシネマズ7本、その他3本と、月で二桁観たのは本当に久しぶりだったので、やはりフリーパスに引っ張られたのだと思うと、有り難かったです。でも予約できない事、フリーパス席は上限があることなど、少々不満も。ネットでは無理でも、事前予約は可能にして欲しいと思いました。
今年の疲れが出たのか、12月は一本だけと言うていたらくでしたので、新年は今週末からの頑張りたいと思います!
今年も皆様、ありがとうございました。 どうぞ良いお年をお迎え下さい。
2017年12月17日(日) |
「オリエント急行殺人事件」 |
結婚記念日に夫と見てきました。最近は旅行が多いのですが、今年はランチと映画とイルミネーションを観ようと相成りまして、まず映画の選択。本当は夫好みの「アベンジャーズ」の予定でしたが、ランチをフルコースにしたため長引き、「『オリエント急行殺人事件』は?お父さんストーリー知ってる?」と聞くと、知っているとの返事。怪しいので「犯人は誰?」と聞き返すと、「そらお前、海賊やろ(ジョニデ)。」と自信満々。
と言うことで、「知らない」事が判明したため、一人で見ようと思っていたこちらにシフト(笑)。元作は中学生の時ロードショーで観て、大好きな作品です。なので楽しみにしていたのですが、色々残念な出来でした。監督はポワロを演じるケネス・ブラナー。
イギリスでの事件の依頼を受け、オリエント急行に乗車中の名探偵ポワロ(ケネス・ブラナー)。しかし雪で脱線事故に遭った車内で、アメリカ人富豪ラチェット(ジョニー・デップ)の殺害されます。乗客は12人。果たして、この中に犯人はいるのか?ポワロの灰色の頭脳は、推察していきます。
圧倒的に足りないと感じたのは、華やかさです。今作も、ミシェル・ファイファーやジュディ・デンチ、ウィレム・デフォーなど、それなりに豪華な配役ですが、元作は当時を考えれば、その比じゃなかったです。キャストの多くが、主役を張る名優やスター俳優じゃなかったかなぁ。
元作のキャスティングは、ここをクリック
私は原作未読なので、当時賛否両論だったアルバート・フィニーのポワロにも、臭みがあって仰々しいと思うくらいで、可もなく不可もなく。まぁ中学生だからね。なので今作のブラナーのポワロにも、別に違和感はなしでした。
あったのは役者としてではなく、監督として。親愛なる映画友達によると、原作に忠実なんだとか。でもポワロって、アクションをこなすの?灰色の頭脳の持ち主は、そんな事脳みそ筋肉の体育会系の刑事に任せない?内容は有名過ぎるくらい有名なので、変更は出来ないでしょう。それで今感を出そうと、黒人医師アーバスノット(レスリー・オドム・Jr)を登場をさせての、人種差別の描写なのかと思います。でもこの作品に、それは必要かな?小手先で挿入した感満載で、取ってつけたようです。だから罪悪感が薄く、これなら無い方がまし。
アンドレニ伯爵夫妻は、何故にダンサーなの?伯爵役セルゲイ・ボルーニンは高名なダンサーだそうで、それなら何故ダンスシーンを入れないの?あの唐突な回し蹴りは意味あるのか?元作のジャクリーン・ビゼット&マイケル・ヨークは、若々しいのにエレガントで、繊細な新妻を守るヨークの姿が印象的で、なるほど伯爵様(外交官でもある)だったのに、今回の野蛮な伯爵様は、非情に残念でした。
デンチの演じたドラゴミロフ公爵夫人は、さすがの存在感でしたが、それでも元作のウェンディー・ヒラーに私的には軍配が。私がヒラーを観たのは、その時だけでしたが、とにかく怖いお婆さんで、怖いだけじゃなくて、凍てつくような厳しさも感じ、声が低くて、本当は男の人なのか?と思ったほど。ヒラーも原作通りの醜女ではなかったけど、お年寄りにしては綺麗に見える部類のドラゴミロフ公爵夫人って、どうよ?
何し負う名女優のデンチですから、彼女の演技には文句はなく、これは演出が淡白なんじゃないかと思い至り。デンチばかりじゃなく、ジョニデにしろ、私の好きなファイファーにしろ、ペネロペ・クルスにしろ、その他全部、元作より演技がどうのこうのじゃなく、存在感が薄いのです。負けていないのは、ポワロだけ。
そこで、あぁなるほど。これは監督が自分が一番目立ちたかったのだなと納得。強烈な個性と存在感で、観客を煙に巻いたフィニーのポワロでしたが、終わってみれば、彼は狂言廻しでした。しかしこの作品のブラナーは、アクション見せたり、過去(今かも?)の恋を再三匂わせたり、一番の花形でした。なので、オチが解明された時に、カタルシスや憐憫の感情が半減。話しを盛り上げるより、自分の見せ方を気にし過ぎです。キャストは気の毒だったなと、今は思います。特にジョニデのラチェットには、期待していたんだけどなぁ。憎たらしさ満点、殺されて当然だと、溜飲が下がったリチャード・ウィドマークには及ばなくて、残念です。
風景もCG、料理もそれ程愛でられず、正直言うと、前半は寝オチしそうになるのを、食い止めるのに必死でした。作品のラストでは、どうもナイルに行くそうで。「ナイル殺人事件」も面白くて、いい作品で、恰幅よいピーター・ユスチノフのポワロも好きでした。ナイルに行く時は、どうぞポワロと監督は別々でお願いします。
TOHOシネマズフリーパスで観た最終作品。先週の水曜日に観ましたが、すっかり書くのが遅れました。珠玉の小品佳作で、私の一番好きなタイプの作品。今年のベスト10に入れようと思うので、少しでも書いておこうと思います。監督はマーク・ウェブ。
自死してしまった天才数学者だった姉の遺児メアリー(マッケナ・グレイス)を育てる叔父のフランク(クリス・エヴァンス)。実はメアリーも数学に秀でた才能を持つ天才でした。しかしその事で苦しんだ姉は、普通の環境で娘を育てて欲しいと、弟に託します。意を汲むフランクは、、地元の小学校へメアリーを通わせます。しかし学校にメアリーの才能を見抜かれ、英才教育を施す学校へ、転校を勧められますが、フランクは拒否。困った学校は、フランクの母でメアリーの祖母のイブリン(リンゼイ・ダンカン)を見つけ出し、連絡。イブリンはメアリーの才能を伸ばすべきだと主張し、母と息子は衝突。前代未聞の、親子間での親権争いが始まります。
実はイブリンもケンブリッジ卒の才媛で、結婚と同時に家庭に入り、数学の研究を辞めています。ずっと不満に思っていたのでしょう、天才の娘が生まれ、娘に自分の野望を託し、支配した結果、母と娘の間は亀裂が入ったのに、その事をイブリンは、娘の弱さと切り捨てます。
野望ではなく、希望だったら良かったのに。作品では解りやすく天才児ですが、イブリンのような母は、たくさんいます。始末に悪いのは、それが絶対子供の幸せだと思っている事。結局自分の幸せは、子供の幸せであると。自分はどうなってもいいから、子供だけ幸せになればと言うお母さんと、根本は一緒だと思う。子育ては、親子ともが幸せにならなければ。
前職は大学で哲学の准教授だったフランク。天才の姉、秀才の弟と言うところでしょうか?イブリンがフランクに執着しないのは、天才でなかった事ではなく、自分に縁の薄い、文系の才能を持っていたからだと思います。どうしても数学に執着する母。
人付き合いが苦手だった、と姉を語るフランクですが、どうもメアリーの母親は、アスペルガー的要素が伺えます。アスペルガーの女子は、言葉の奥が汲み取れないので、異性との交際には、親の注意が必要だと読んだ事があります。法廷で明らかにされた姉の初恋相手は、千載一遇だったかも知れない善き相手であったのに、身分違いと勉学の邪魔を理由に引き裂いた母。その後知り合ったメアリーの父親は、ゴミみたいな男。その事も意に介さないイブリン。
その後の行動も、本当に強すぎる思い込み、強引過ぎる行動で、相手がどう思うか、傷つけてしまわないか、全く考えない。法廷で激高する様子など、とても猛々しく、これでは付き合う方は疲れてしまいます。彼女自身にも、何か障害があるのか?と思ってしまいます。そしてもう一つ始末が悪いのは、本当に愛情も入っていること。「あなたを傷つけるつもりは、ないのよ」と息子に語るイブリンですが、これは本当の気持ちです。対するフランクは「結果はいつも傷つけられる」です。何故傷つけられるのか?お互いに、親子としての信頼関係がないからだと思う。
辟易するような母親なのに、私はこの人に腹が立つより、哀れを感じました。だって溢れる才能、裕福な暮らしと身分を持ち合わせるのに、それを生かせず、ちっとも幸せじゃないから。イブリンにもしも障害があるとしたら、彼女は精一杯頑張っているのじゃ、ないかしら?それをサポートすべきは夫だったはず。
物語は、泣いたり笑ったり、色んなエピソードを詰め込み、子供の幸せとは何か?を問いかけます。フランクは言います。最初はすぐ里子に出そうと思っていたのに、メアリーは毎日面白かった。日々の暮らしが楽しく、ここまで来たと。私が一番ほのぼのしたのは、「俺だって一人になる時間が欲しい」と怒鳴り、メアリーを傷つけたフランクが謝るシーン。「お前だってピアノが欲しいと言ってダメだと言ったら、俺に死ねばいいと言っただろう?あれと同じだ」。これで子供が納得するのは、大したものです。メアリーは、フランクが一番愛しているのは、自分だと言う、絶対的な愛情を受け取っているのです。フランクは本当の「父親」だと思いました。一人でいる時間が欲しいと願うのは、一生懸命子育てしているからです。この台詞に共感する人は多いと思う。
そして裁判の最中、この選択は正しいと思うか?と問われて、「わからない」と答えるフランクの言葉にも、強く共感しました。その最中なんて、何か良くて正しいのかなど、本当にわからない。この選択は、本当に子供のためか?母親の私が楽したかっただけじゃないか?本当にこれで良かったのか?私も自問自答ばかりの、惑う情けない母親でした。でも子育てが終わり、「わからない」が、正しかったのだと感じています。独善的に突き進むイブリンを観て、再確認しました。
キャプテン・アメリカことクリス・エヴァンスは、髭を蓄えた方が断然素敵。暖かみと包容力抜群で、父性も育つものだと痛感させるフランクを好演。そして初めて観たマッケナちゃん、超絶可愛い!溌剌としたお転婆なメアリーを、これが地なのか?と思うほど、素直な演技で魅了してくれます。数学の天才役なので、難しい単語も出てきますが、難なくこなしています。歯が生え変わる時期で、歯抜けの笑顔もとっても可愛い。私は子供はこの時期が好きだな。ちゃんと会話も出来るし、大人が想像しない事もやってくれるし、一番面白い時期だと思います。そしてリンゼイ・ダンカンが演じてくれたから、私はイブリンが嫌いになれないのだと、思いました。多かれ少なかれ、母親にはイブリン的部分があると自警する気持ちは、子育ての上で大事だと思います。
夕日に向かって、メアリーがフランクにじゃれつくシルエットのシーンが秀逸。あの多幸感は、苦労の多い子育てに忙殺される者に対しての、御褒美です。私は大した子育て論を吐ける、立派な母親じゃないけれど、成人した子供三人とは、現在良好な関係です。育てる者と子供が、毎日笑顔の日々を送ること。子育ては、これに尽きると思います。笑っていれば、子育ての苦労なんか、いつか忘却の彼方に吹っ飛ぶ日が、来るんだよ。
|