ケイケイの映画日記
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2013年12月31日(火) |
「2013年 年間ベスト10」 |
今年は外国映画61本、邦画15本で全部で76本です。少な!(笑)。見逃して残念な作品もいっぱいですが、取りあえず感想は落とさず書けたので、満足な一年でした。
外国映画ベスト10
1 セデック・バレ第一部 セデック・バレ第二部
2 愛、アムール
3 ゼロ・グラビティ
4 アルバート氏の人生
5 ゼロ・ダークサーティー
6 パシフィック・リム
7 プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ
8 ジャンゴ・繋がれざる者
9 トランス
10 31年目の夫婦げんか
邦画はいつも本数が少ないため3本だけなのですが、今回は特別に5本です。
1 魔法少女 まどか☆マギカ 前後編
2 ペコロスの母に会いに行く
3 さよなら渓谷
4 舟を編む
5 ボク達の交換日記
映画の出来不出来より、自分が好きな作品を重視して選びました。今年は梅田のミニシアターから足が遠のいて(単純に体力的な問題)、わかり易い楽しい作品ばかり観ていた気がするのですが、選んでみると、そうでもないような(笑)。1位は2位と大変迷いましたが、自分のアイデンティティを揺さぶられる作品(それも他国の作品で)に巡り合う事は滅多にないので、やはり「セデック・バレ」に。感想としては、「愛、アムール」が一番気に入っています。泣きながら書いて、書き終わった後は、今年はもう終わってもいいと思ったほど(笑)。
7位の監督、デレク・シアン・フランスは二作目ですが、これで自分には合う監督だと、はっきり確認出来たので、追いかける監督が増えて嬉しく思いました。
邦画の1位は、本当は昨年の作品ですが、これを選ばなかったから、私の映画人生は嘘っぱちじゃないか?と言うくらいの衝撃で、これほど敷居が低く年代を選ばず、人生哲学を語った作品は、他に知りません。私は今年観たので、特例で選びました。なので2位が、本来の今年のベスト1ですね。「凶悪」「そして父になる」など、感情が触発されて、いっぱい書いたのに、時間が経てば細部を忘れ「良かった」の一言で終わる作品もあり、これが作品や監督との相性なのかなぁと思います。そういう意味では、5位は相性抜群で、邦画は悩まずすぐに選べました。
今年は家族の誰も転職がなく、近年では一番平穏に過ぎた一年でした。なら映画の本数は増えそうなもんですが、さぁ明日は映画を見よう!と思っていても、いざ起きてみるとその気になれず、家でうだうだして無駄に過ごす日も多かったです。単純に体力の問題だと思うので、来年は無駄時間を如何に減らすか?を目標にしたいです。
今年の目標だった全作感想を書く、と言うのは達成出来ました。感想書かなきゃ、もっと鑑賞数は増やせるのですが、適当に選んで書くと、全く書かなくなる気がするのです。平穏とは言え、私にも日々小さなストレスはあちこちに転がっており、映画を観て感想を書き、平常心を取り戻す日々なので、やはり本数には拘らず、これからも書く事は大事にして行こうと思っています。
今年は映画以外では、旅行が三回、夫ともあちこち出掛けて、映画以外の外出が充実していました。「31年目の夫婦げんか」で、メリルの「愛するあなたとは、残念な事に、一緒に過ごす時間が残り少ない」と言うセリフが今年一番心に残ったセリフで、本当にそうだと痛感して、これ以降夫との外出が頻繁になりました(笑)。
今年もたくさんの方に読んでいただき、また掲示板やmixiで楽しくお話もさせていただき、感謝しております。来年も頭も心も錆びつかないよう、映画で感受性を磨きたいと思います。それでは皆様、どうぞ良いお年を。来年もよろしくお願い致します。
2013年12月30日(月) |
「ブランカニエベス」 |
「ブランカニエベス」とは、スペイン語で白雪姫の事。童話の白雪姫をモチーフにしたモノクロ、サイレント映画です。スタイリッシュで躍動感があり、ラテンのパンチの効いたBGMとの親和性もバッチリで、完成度抜群の作品です。ですが、私は脚本に引っ掛かりがあり、手放しで絶賛とは行きませんでした。すごく楽しみにしていた作品なので、とても残念です。監督はパブロ・ベルヘル。
1920年のスペイン。美しい母と天才闘牛士アントニオ・ビヤタの娘カルメン。しかし父ビヤタは、猛牛に突かれて瀕死となり、その光景を観ていた母は産気づくも、カルメンを産み落とした後、亡くなってしまいます。障害者となった父は、看護師だった性悪女のエンカルナと再婚。カルメンは使用人扱いで、虐め抜かれます。ビヤタとカルメンが接近するのを危惧したエンカルナは、ビヤタを殺害。カルメンも殺すよう使用人に命じますが、6人の小人の闘牛士たちに助けられます。
まずは良いところから。モノクロ画面はとてもメリハリがあり、闘牛師の出で立ち、ファッションから建物まで、とにかく美術が素晴らしい。容易に1920年のスペインに連れて行ってもらえます。サイレントなのでセリフのト書きは最小限。しかし役者さんたちが皆とても表情豊かで、喜怒哀楽から憎しみや憐憫の表現まで、とても上手く表現出来ているので、説明不足の感は全くなし。ややオーバーアクトなのが、良いのでしょう。
主要キャスト全てのキャラ立ちも素晴らしい。特に小人さんたちは描き分けが難しいはずですが、ちゃんと悪役やイケメン、愛深い人、その他など、役割分担がちゃんと出来ていて、びっくり。ちなみにCGではなく、本当の小人の方たちが演じています。でも何で6人なのかしら?7人じゃないのは、最後まで触れられていません。
ストーリーは白雪姫だけではなく、シンデレラもあり。カルメンの母亡き後の豊かな祖母との情愛、父への慕情、小人たちへの感謝もしっかり描けています。カルメンはチャーミングだし、悪女エンカルナはビッチな性悪女ですが、魔女ではなく人間で、禍々しい恐ろしさより、ユーモアにエロスも交えて描いているのが楽しいです。エンカルナを演じるマリベル・ベルドゥがスーパーモデルばりのスタイルの良さで、彼女の着こなすファッションは、そのまま雑誌の表紙になりそうなセンスの良さで、その方面も楽しめました。
こんなに素晴らしいのに、何故引っかかるかと言うと、広大なお屋敷には使用人がいっぱいで、カルメンがこの屋敷のご主人様の実の子だと知っているはずなのに、あんなに過酷な境遇に幼い子が身を置くのに、誰も手を差し伸べないのです。エンカルナは底意地の悪い女ですが、魔法が使えるわけじゃなく、子供や身障者の身では手強いでしょうが、それなりに知恵のある大人なら、カルメンを導いたり、陰で応援したり、いくらでも出来るはず。
ビヤタの友人も、「やっぱりカルメンだ」と、闘牛場で嬉しそうに彼女に近づきますが、ならどうして今まで放ったらかしだったの?祖母が生きている間は、色々橋渡ししていたでしょう?エンカルナは意地悪の割にはバカっぽく、隙がいっぱいの描き方です。あれでビヤタと近づけなかったのは、腑に落ちません。
そしてラスト。唖然としました。王子様、いるじゃないの?ダークファンタジー仕立てだからと言って、文盲や身体障害をそのまま悲劇にする必要はないんじゃないの?カルメンの涙に、リアルな現実を見せられて、やりきれなく哀しい気分になりました。
カルメンが文盲だったのは、学校に行かせて貰えなかったから。誰か周囲の大人が、字だけでも教えていたらと、やはりあのお屋敷の使用人たちに、猛然と腹が立ちました。カルメンが思春期になっても、屋敷を逃げ出さなかったのは、父が心配で傍にいたかったからでしょう。でもね、自分の境遇が劣悪だと認識するなら、父を救いたいなら、勉強するのよ。闘牛の技を磨く前に、情より前に、まず勉強して世の中の仕組みを知るのよ。それが自分とお父さんを救う道なの。やりきれないので、そういう教訓を残したいから、こういうラストにしたのだと、無理やり自分を納得させています。
私は哀しい境遇の子供を前に、大人が素通りしたり、あろうことか一緒に虐めると言うシチュエーションが大嫌いなので、素直に好きだとは言えませんでした。気にならない方には、何の問題もなく楽しめる作品ですので、お勧め作ではあります。
2013年12月23日(月) |
「ゼロ・グラビティ」(3D字幕) |
来年のアカデミー賞の有力候補の呼び声高い作品。前評判も高く、ハードル上げて観ましたが、それでも期待に違わず素晴らしい作品でした。90分、私も宇宙を漂流した気分になりました。監督はアルフォンソ・キュアロン。
今回初めてスペースシャトルにエンジニアとして乗船した、ライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)。ベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキーの誘導の元、船外で修理にあたっていた時に、ロシアが自国の衛生を爆破。その破片が猛スピードで迫っていると、NASAからの警告が伝えられます。急いで修理するものの間に合わず、スペースシャトルに破片が激突。宇宙に放り出されたライアンは、マットに助けられるものの、他の乗組員は全員死亡。果たして二人は地球に戻れるのか?
とにかく「見世物」映画として、超一級品だと思います。自分もライアンと共に漂流している気分になり、ライアンが宇宙船にぶち当たれば痛さを感じたような気になり、一緒に火に追われ、束の間の安息も共有します。体感がすごいのです。
ライアンは40代の女性で、優秀で立派なキャリアの持ち主。でもそれは地球での話。初めてのミッションで船酔いし、宇宙船のシュミレーションでは墜落してばかり。経験の乏しいティーンエイジャーのようです。広大で壮大な暗闇は、そんな彼女に牙をむきますが、それだけではなく、豊かな静寂で包んでもくれます。浮遊している時の彼女を観ていると、本来は後者なのだろうと感じます。やっとの思いで船に乗り込んだ彼女が、宇宙服を脱ぎ捨て、無重力の空間に身を委ねる姿は、羊水の中の胎児のようで、印象に残ります。
ベテランのマットは、ユーモアを交えながら、常にライアンに話しかける。動転する彼女の心をニュートラルに戻すために。「ストーン博士」から、「ライアン」と呼びかけが変わった時、お喋りでカントリー好きのプレイボーイ風だったマットの、真の男性としての技量が現れたと思いました。「女の子にライアンなんて」と笑うマット。その「女の子」の言葉に、同年輩のライアンより、ずっと年上の男性のような包容力を感じました。私は事前にストーリーは知っていて、何故この内容でサンドラとジョージなんだろうか?ミスキャストじゃないの?と、若干訝しい気持ちでしたが、観れば納得。マットの役柄は宇宙飛行士としての技量の確かさだけではなく、人としても男性としても、風格がなくては成り立ちません。重厚ではなく軽妙さも必要で、クルーニーはドンピシャで、初めて彼が俳優としてだけではなく、男性として素敵に感じました。
ライアンは幼い娘を、預けていた幼稚園での事故で四歳の時に亡くしています。今は独身の彼女。夫とはその事が原因で別れているのか?そもそも夫はいたのか?両親など身近な親戚とも疎遠だと言うライアン。彼女の人生に娘の死が、とても暗い影を落としていると暗示していると思いました。
ライアンはどんな境遇でも、生きている自分は、死んだ娘に恥じない生き方をしなければいけないと、常に自身を励ましていたのではないでしょうか?それ自分に負けない彼女のプライドを作ったのでは?危機また危機の状況に精根尽きかけた彼女を励ましたマット。マットに対して、ライアンは娘と同じように、彼に恥じない行動をと誓っていたのでしょう。想念が現れたのだと思います。
サンドラはスッピンで全編出ずっぱりでした。地球に絶対生きて帰る、その一念の中に、ライアン・ストーンと言う地味な女性の人生を感じさせなければいけない。それがなければ、ただのハラハラドキドキのアトラクション映画です。私は劇中何度も涙ぐみましたが、生命に対する感動と共感を私に与えてくれたのは、ひとえにサンドラの好演のお陰です。ライアンを通して、サンドラ・ブロックの内面の豊かさも、透けて感じたのかも知れません。それは私の独りよがりかも知れませんが、感じられて幸せでした。
どうして撮ったんだろうか?と、好奇心いっぱいにもなりました。壮大であっても荘厳ではない宇宙に身を委ねた90分は、俗世の憂さや悩みが、なんて小さな事よと、私の心も大きくさせてくれます。地味な内容の娯楽作で、面白さと感動を見事に共存させている、ハリウッドの底力を感じる作品です。
2013年12月15日(日) |
「鑑定士と顔のない依頼人」 |
ミステリーだと思っていたら、こうきますか・・・。観ているこちらは、疑いばっかりなのに、ジェフリー・ラッシュ演じる主人公の心模様ときたら、もう初恋に胸をときめかせる少年のようなんだなぁ。哀しい、ホントに哀しい。この言葉すらネタバレになりかねないので、この作品を観る予定の方は、スルーして下さい。監督はジュゼッペ・トルナトーレ。
天才的な審美眼を誇る美術鑑定人のヴァージル(ジェフリー:ラッシュ)。ある日、資産家の両親が残した美術品を鑑定して欲しいと言う女性クレア(シルヴィア・フークス)から依頼がきます。幾度となく会う機会を設けるのに、何だかんだと理由を付けて、会おうとしないクレア。そんなクレアに好奇心を駆られ、段々と心惹かれるようになったヴァージルは、数少ない年若い友人のロバート(ジム・スタージェス)に、彼女の事を相談します。
ユーモアを交えての見事なオークションの仕切りぶりや、礼節は失わないけれど、偏屈なレストランでの様子、そして相棒ビリー(ドナルド・サザーランド)を伴っての、オークションでの「詐欺」など、ヴァージルは頭のキレる冷徹な人と印象づけます。
そして孤独。たった一人暮らす豪邸の隠し部屋には、女性の肖像画がいっぱいです。それも老若の。全ての肖像画は彼に微笑み、ヴァージルが自分を孤独と感じる隙もありません。その「感じない」事が、問題でもあるわけです。
クレアが現れるのは、最後まで引っ張ると思っていたのに、中盤には姿を現し、あれ?と思いました。人から「鑑定には何が重要か?」と言う問に、「勘だ」と答えるヴァージル。そうなのです、この早い段階のクレア登場に、私は勘が働いた。十人並みの容姿に違和感があったのです。クレア邸の前の喫茶店に常にいる女性も気になったし、友人からの電話にヴァージルの事を、「素敵な紳士よ」と答えるクレアに、どこが〜!とツッコミ入れたし、誰にも会わないからと下着を履かないのも変だ。もう枚挙に遑なく「勘が働く」のに、常に用心深く用意周到なはずのヴァージルだけが、どっぷりツンデレのクレアにのめり込む。そうか、恋は盲目と言うけれど、それって勘が働かないと言う事なのか。
ヴァージルは孤独だったから、クレアに翻弄されたのか?それは違うと思う。ヴァージルに忠実な秘書や、彼を心からの友と信じるビリーがいるのに、彼は心を開かなかった。彼らが嫌いだったから?それも違うと思う。ヴァージルには社交性と言うものがなかったのですね。だから親愛の情を示されても、心が動かない。冒頭の彼の誕生日を祝うホテルマンの心尽くしを無にする彼は、偏屈だけではなく、社交性の無さをも表していたのだと、後で気付きました。
孤児から高なリ名を遂げたヴァージルは、立派な人です。精進に精進を重ねながら、君子危うきに近寄らずで、自分を常に律してきたのでしょう。公的には立派な社会人でも、私生活はまるで純朴なヴァージルは、「たらしこみ」や「なめやく」に取っては、赤子の手をひねるようなもんだったでしょうね。
でもラスト、クレアとのあれこれを回想するヴァージルは、私は不幸だとは思いませんでした。だってこの年まで童貞だったんですよ?恋さえ知らなかった人なのです。まだまだ彼の人生は続くはず。これは終わりではなく、新たな人生の序章だと、私はヴァージルを慰めたいのです。愛する人がいる、その素晴らしさを、是非もう一度彼に味わった欲しいと思うから。その代償は高くついちゃったけど、彼なら学習出来たはず。いやいや、反省すれども学習せず、でもいいかな?恋ってそういうもんだから。
2013年12月10日(火) |
「REDリターンズ」 |
とっても楽しみにしていた作品(いやマジで)。すっかり書くのが遅くなりましたが、先週木曜日観ています。痛快でユーモアたっぷりだった前作より、スケールアップしていました。監督はディーン・パリゾット。
元CIAのスパイで現在年金生活者のフランク(ブルース・ウィリス)。現在は恋人サラ(メアリー・ルイーズ・パーカー)とラブラブの同棲中。そんなフランクの元に、元同僚のマーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)が、新たなミッションに誘います。平穏な暮らしに満足しているフランクは、断固拒否するのですが、成り行きでテロリストの汚名を着せられ、挽回すべく前線に舞い戻る事に。32年前の米ソ冷戦下の元、極秘に核爆弾が製造され、その秘密計画がまた進んでいると言うのです。元MI6のヴィクトリア(ヘレン・ミレン)と共に、核心に近づいていく彼らですが。
前作より、銃撃戦・火薬・爆弾・カーチェイス、そして配役など、全てにおいてスケールアップ!デヴィッド・シューリスなんか、重要な人物ですが、えっ、これで終わりですか?と言うくらい、ちょっとしか出ておらず、すっごく贅沢な使い方です。
なのに中身は前作よりチャラい(笑)。と言うか、そんなのは多分、どうでもいいんだと思います。チャらいのが愛嬌に見えるのは、ジジババでは案外難しいもんです。中身が薄いと、年寄りはバカに見えるもん。それを軽々やってのける初老の俳優たちの腕の見事さよ。何故彼らが若かりし頃から現在まで、名実ともの「スター俳優」でいられるのか、ものすごく納得しました。前作同様痛快さとユーモアも健在です。もう年かな?的ネタは少なく、色恋沙汰も前作同様盛りだくさん。
ロシアのスパイで元カノのキャサリン・ゼタ・ジョーンズ(相変わらずビッチで妖艶)との再会で、「ハロー、フランク」と、熱いキスを送られる還暦前のウィリスが、必死の笑顔でサラに取り繕うシーンなんて、本当にチャーミング。こういう部分は、年食ったって、男女ともあんまり変わるもんじゃァない(笑)。禿げて年食って、でも渋くなんかならずに、どんどん年齢を味方に、別のチャーミングさを身につけるウィリスって、素敵ですよ。
でもやっぱりこの作品で一番光り輝くのは、ヘレン・ミレンなんだなぁ。ユーモラスな殺人現場があると思えば、イ・ビョンホンを相棒に、カーチェイスの車中で両手の拳銃をぶっぱなすシーンのカッコ良さ、標的を仕留める時のセクシーさ。かと思えば、エリザベス女王のパロディまでやってのけ、本当に素敵!70前の「お婆さん」ですよ。日本には八千草薫と言う、いつまでも清楚で可憐な「お婆さん」がいて、女性の憧れの的ですが、欧米に目をむけりゃ、セクシーでカッコいいヘレン・ミレンありで、女が年を取るのも楽しみになってくるじゃありませんか。
お茶目なマルコヴィッチ、年齢より随分若手の役回りを可愛くこなすメアリー・ルイーズ・パーカー、貫禄とユーモアの中に狂気を忍ばせるアンソニー・ホプキンスなど、皆が皆抜群の存在感を見せる中、ここでは若手のビョンホンだけが、ちょっと物足らない。いつも通り脱いで、キレのいいアクション見せて、登場時間もたっぷりなんですが、印象が薄いです。韓国映画では卓抜とまではいかずとも、そこそこ演技力もある人なんですから、これは本人と言うより、使われ方・望まれ方の問題かも?韓国俳優で世界的に活躍中は彼だけですから、個人的には頑張ってもらいたいです。
全員がシリアスなドラマでも主役を張れる人たちが、おふざけアクションコメディを嬉々として演じて楽しむのを、観客も一緒になって楽しむ作品。
2013年12月01日(日) |
「グランド・イリュージョン」 |
「ペコロスの母に会いに行く」の前日に観ました。「ペコロス」に大泣きしてしまい、そちらを先に書きましたが、ご贔屓俳優がたくさん出演している事もあり、こちらも私には充分楽しめる作品でした。監督はルイ・ルテリエ。
リーダーのアトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、メンタリストのマッキーニ(ウディ・ハレルソン)、脱出マジックのヘンリー(アイラ・フィッシャー)、カードマジックのジャック(デイブ・フランコ)の”フォー・ホースメン”を名乗るマジシャングループ。ラスベガスの大舞台でのイリュージョンから、一瞬にしてフランスの銀行から、320万ユーロの大金を盗みます。捜査の担当はFBIのディラン(マーク・ラファロ)。インターポールからアルマ(メラニー・ロラン)も出向してきます。謎が解けずイラつくFBIの元に、マジックの種明かしを生業とする元マジシャンのサディアス(モーガン・フリーマン)に協力を依頼します。しかしFBIの捜査を掻い潜り、次のマジックに挑む四人。果たしてフォー・ホースメンの目的は?
映画友達各位の評判が悪く、怖々の鑑賞でしたが、私は全く問題なし。まずキャストがラファロ、アイゼンバーグ、ロラン、フィッシャーなど、大好きな人ばかり。同じ豪華キャストの「悪の法則」と比べると、ゴージャスさや大物感はだいぶ見劣りしますが、私の好みは断然こちら。特に若造的な役柄が多かったジェシー君が、今回ハレルソンを押しのけ、若きリーダー役をふられたのが嬉しくって。若造役のデイブは、ジェームズ・フランコにそっくりだと思っていたら、実弟だって。こちらも将来有望株みたい。
四人を紹介する華麗な冒頭シーンが素晴らしい。えっ?はっ?何???と、目をパチクリしている間に、しっかり彼らの特技が記憶に残ります。その後もスピード感は落ちず、テンポの良さは秀逸。だってマジックはスピードが命だものね。
元々私はマジックを見るのが好きです。だって魔法使いのようで夢があるでしょう?一瞬の夢を見るのは、お手軽な現実逃避かな?なので、その夢をぶち壊すサディアスに、嫌悪感を持ちました。同業者を「売る」のは、やはり卑怯だと思います。
そういう私の想いを叶えるように、強奪したお金は会場に集まった人たちや、お金に泣いている人に与える四人。義賊みたいで、私の中でますます好感度アップ!このスピード感と好感度のお蔭で、後で考えると解明されないままの謎があるのですが、観ている間はすっかり忘れていました。バカみたいなんですが、これが一番この作品を楽しめる鑑賞スタイルの気がします。
四人の行動を操る影の人物がいるのですが、私が予想していた人はハズレ。これは上手くミスリードしていたんじゃないかなぁ。華麗なイリュージョンに酔しいれ、ワクワクドキドキ楽しみながら、謎は謎のままで取っておく。倫理的に如何なものか?と言う部分もありますが、情が勝る方が後味良いのは、洋の東西を問わないようで。マジックを見るときのように、煙に巻かれたもん勝ちの作品。
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