地上懐想
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2001年01月04日(木) |
地中海、アレキサンドリアより 3 |
[アレキサンドリア四重奏] ロレンス・ダレルという作家が書いた、不思議な小説。舞台は20世紀初頭?のアレキサンドリア。全4巻だが、1巻目を読んだかぎりでは恋愛小説、ところが2巻目に入り語り手が変わると、実は政治スパイ小説だったということがわかるらしい。(1巻目しか読んでないので「らしい」としか言えない)
1巻目に出てきたホテルが、たしか「セシルホテル」という名前だった。 アレキサンドリアではそこに泊まることができた。(教授がセレクトしたホテルだったのだ)。古き良き時代の面影を残すホテルだった。 ラマダン(断食)の時期だったため、建物の外面にクリスマスツリーの飾り付けのような、豆ランプがはりめぐされていたが、それはそれでエジプト的でよいものである。 ホテルのある一帯は、20世紀初頭は、クレオパトラ時代とはまたちがった、国際的な町であったであろうことを感じさせる場所だった。
「アレキサンドリア四重奏」1巻目の最後に付された「都市」という詩がとてもいい。 20代の頃のわたしの心情を写しとったようで懐かしい。
[都市] きみは言う、でかけよう、 どこかほかの国へ、ほかの海へ、 かつてのこの町のすがたよりも、おそらくは未来のすがたよりも はるかに美しい都会にいこう−−
(中略)
おまえみずからにふさわしく、またこのような都会にふさわしく、 心臆せず、誇りをもち、あきらめをもって、開かれた窓から見おろすがいい。 すべての疑いをすて、この神秘の群れから 最後の暗い陶酔を飲みほすがいい。そして別れを、 去りゆくアレキサンドリアに別れを告げるがいい。
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