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■ 親に捨てられた・2
会社で人事を担当していたことがる(人事というか同時に営業とパソコンインストラクター、社内報でインタビュアーもしており恐ろしく多忙な日々であったがおかげでネタはほんっとに尽きない)。
とにかくたくさんの女の子に毎日のように会ったり、悩み相談を受けたりするのだが、かわいそうな話があった。
ある日、私宛てに電話が入った。Kさんという私と誕生日が一緒の女性からだった。なんだろうと思うとお金を貸して下さい、ということだった。
理由はお財布を落としてしまい、全てのカードを止めてしまったので一人暮らしで今日のご飯にも困るという。2万円でいいというのだが、何で親兄弟に頼まないんだろう?変だなと思いながらも給与の前払いで対応しようとした、
早速経理に聞いてみると、今月分はしめてしまったのでできないという。しかしそれを聞いていた社長がポケットマネーから2万円ポンと出してくれた。それを貸してあげたのだが2ヶ月経っても返してくれない。
催促にいこうかなと思っていると、また電話が鳴った。今度は彼女の出向先の会社からだった。彼女が突如失神して倒れ、新宿の女子医大に運ばれたという。
またおおげさな、脳貧血じゃないの?なんて思いながら少々遅くなって女子医大に到着すると、そこには真っ青になったうちの会社の部長がいた。「これは大変なことになったよ」
聞けば、完全に意識混濁しており、さっき回復したが自分の名前しかわからないらしい。頭は打ってないので原因不明。一番仲のいい同僚の女の子がつき沿っているがその子の名前もさっきまで思い出せなかった。ええ?やばいなーと思いながら病室に向かった。彼女がいた。
大丈夫ですか〜と声をかけた。ハイーと弱々しく答える。状況を確認したところで医者が来た。私たちは外に出た。しばらくして医者が声をかけてきた。医者はこう言った。患者さんはあなたのこと、誰だかわからないと言ってるんですが…
オイオイ金貸してんのに!ってのは冗談だが、驚いた。ほんまもんにやばいらしい。死ぬかもしれないなどと医者に脅された。
緊急に家族と連絡を、と言われたのだが、ここで彼女の悲しい事実が判明した。なんと両親がいないという。生きてはいるようなのだが両親とも連絡先がわからないらしい。他には身寄りがないのだと。一緒に住んでいる友人以外誰にも連絡したくないと言うのだ。
原因不明の意識混濁で今にも死ぬかもしれないんだよ!それなのに親類縁者に連絡できないなんて。
結局彼女は原因不明のまま回復したが、違う病院に移った。そこに私はお見舞いに行ったが彼女はやはり記憶がない部分が多いと言っていた。くしくもその日は彼女と私の誕生日。
あまりにもかわいそうなので明るい気分になれるようにひまわりの花束を病室に持っていったのであった。ふと彼女の手をみるとなぜか無数の縫い傷がある。全て2〜3センチ程度の古いもののようだが、これは一体?まだ何か深い事情があるのかもしれない。また彼女を傷つけてもしょうがないので理由は聞かなかった。
もう一人。
彼女はかなりの美人でおまけにかなりの自信家である。ルックス重視の受付嬢だったのだが彼女はしょっちゅう自分の実家を“開業医をしているのでお金には困っていない”だの、困ったことは父に相談するだの、かなり自慢ばかりしていた。私はへーそうなんだ、いいねーと適当に流していた。何事も問題ないかのように見えていたのだが…
ある日彼女の同僚の別の受付嬢から連絡が入った。なんと、会社終了後、彼女がカッターを振り回して暴れるので殺されそうなので助けて下さい、という話しであった。
私は早速その電話をくれた子と面談をした。話はこうであった。どうもクスリをやっているようで、もうかなり前からおかしな言動が目立つとのことだったが、幸い?出向先の企業の人は誰も気が付いていないらしい。驚いた私はもっと早く連絡して下さいよ〜と言おうとしたらこう言われた。彼女は実はとてもかわいそうな子なんです、と。
彼女の親が開業医でお金持ちだというのは本当だが、本当は彼女は14歳のとき両親が離婚していて、そしてその父親も母親も彼女を引き取らなかったそうだ。両親とも、娘はいらないと言ったそうだ。
だから彼女は14歳のときから一人暮らししているようで、どうも高校も行ってないらしい。履歴書に書いてある高校名は彼女が中学から通っていたエスカレーター式の私立有名女子高校の名前で、本来ならば通えたはずの高校だという。しかし、殺されそうなことは本当なのでどうか内密に事を収めて下さい、どうかお願いします、という。
衝撃だったが帰社し、すぐにこの話の事実関係を調べてもらったところ、本当だということが判明した。後は私の判断では動けない。
友人関係とかだったらね、心の扉を開いてあげよう!とかしないでもなかったが、これは企業間の取引に関わるお話だし、人一人も殺されそうになっている。上司の判断で、社内に呼んでみんなで芝居を打って自分から辞めてもらうようにしよう、ということになった。
ちょうど彼女からは私にはもっと素晴らしい仕事(マスコミ関係とかって言ってたね)ような気がするので辞めたいな、と言われていたのだ。ひどい話だが、芝居はうまくいき、少々の保証金を支払い、辞めてもらうことに納得してもらった。
以来彼女からの音沙汰は全くナシ。今どこで何をしているのか不明である。
なんとも後味の悪い「親から捨てられた」話であるが、本当だったんだろうか?信じられないというのが正直な気持ち。親は子に対して責任が絶対にあると思うし、例え子供が犯罪者になったって親が責任を取るべきだとも思う。
子供を捨てる。
今でもうそだよーと誰かに言って欲しい、信じたくない話であった。
2003年08月04日(月)
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