|
|
■■■
■■
■ ショーン君の旅
香港にある安宿の親分。その名も「重慶大盾(チョンキンマンション)」。
沢木耕太郎の「深夜特急」でも有名、または映画「恋する惑星」のロケ地でもある。監督ウォン・カーウアイですら小さい頃は近寄っちゃいけないといわれたほどえらいおっかない場所だったらしいが、実は今でもおっかない。
しかし格安の宿がたくさん入っているビルだ。インド人、シーク教徒(頭にターバン巻いてるおっさんね)イラン人、パキスタン人の家族が住み着いていたりしてとても恐いんだけどね。友人はここでイラン人にスワッピングパーティ(笑)に誘われたと言っていた。
ちょっとおかしくなってしまった香港の人も住んでいたりする。
朝の4時30分くらいに何か叫び声のようなものが聞こえた。勇気を出して宿の外に出てみると、このビル吹き抜けというかビルの真中がすっぽり無く、上の階も下の階も見えるじゃないか。すると髪の長い女が白い服を着て、上の階から吹き抜けを向いて歌っていた。 目つきがヤバイ。まじでやめてくれよっ!
アジア系以外の外人も多い。南アメリカからきたというねーちゃんらは、宿の入り口でばくちをしょっちゅうしていた。
オーストラリアのデブ(夜中に私の部屋に入ろうとした。ふざけんな、デブ)フランス人、日本人もいた。
そしてアイルランド人の青年もいた。彼はこの宿の管理人のバイトでもしているのか、面倒見がよかった。私が入って詰まってしまったトイレでさえ一緒に直してくれた(涙)…ありがとう、いいヤツだ。彼の名前はショーンという。
このショーン君は23歳だった。所々金髪と黒髪が混じっているので質問したら、ここに来る前にロサンゼルスの海岸でバイトをしていて、その強烈な日差しに髪が焼けてしまったという。いいな、英語圏の人は旅先でバイトすらできてしまう。
いつから旅してるの?ときくと 「5年前、18歳のときから!」 と元気な答えが。
「5年前、12歳だった妹が17歳になって送られてきた写真みたら別人だったよ。ハッハッハ!」
へええ??そんなに長く?何か理由があるのだろうか。
あくまで彼は明るく、そして痩せている。私がマックで朝ご飯食べてきたら「俺はこれでイナフ(腹いっぱい)だ」とペットボトルのコーラをごぶごぶと飲んだ。
いくら旅好きでもね…5年というのは落っこちちゃった人なのかな。タイなんかには落っこちた外人がけっこう住んでいるが香港は物価が高いから無理じゃないかな〜なんて思ったりしてね。
この頃は海外で落っこちた日本人が、勇気を出して日本の社会にエントリーすべく帰国しようとするのだがやっぱり日本に帰ることが恐くなり、タイの空港のトイレで首をつってしまうことが少なくないと聞いていた(今はわかんないけど)。漂泊の青春も、堕落の青春と首の皮一枚の差だな〜とつくづく思った。
あんまり安い宿に泊まりすぎるとそんなこんなで自分も人生不安になってくるときがある。私はその二日後、ここよリもう少し高い別の宿に移ることにした。ショーンくんにそのことを言うとこういわれた。
「宿移るって?やめとけよ。そこの宿だってマザーファッカーだよ、ここと同じようにね」
2003年07月10日(木)
|
|
|