もう二度と、会う事など無いのでしょう。 街で見かけることも。
偶然出会うことも無いし、意図的に出会うことも無いでしょう。
そう、理解しているのに、
…同じ型の車を見るだけで、一瞬、脳が留まる。 どうしてこんなに、罪の意識がするの?
そう、本当に、私にとっては手が届かなくて、目に映るだけで。 指が震える程、怖かった。言葉を失う程。躰が硬直する程。
「もう電話もしないしメールもしない」 そんな簡単な言葉と、「ありがとう」や「ごめんなさい」という ありふれた小さな文句で、納得するしかない気持ちを 言葉に押し込めた。
あの人はもう居ない。もう、会わない。
だけど、同じ車、同じ版画、同じ香水、そんなありふれた亡霊に、 一瞬だけ、私はとり憑かれる。すれ違う、瞬間的なもの。
神様。…私という愚かな民の創りだした、偽りの神。
一瞬、私は後ろを振り返る。そして、胸をなでおろす。
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