この世にあの人が居て、ただそれだけで、今はもういい。
あの人の呼吸を誰かが止めてしまうまで、私はあの人を好きだろう。
もう、「願い」や「希望」は心の一番底の方で、息を潜めて、 闇にがらん締めになっている。ただ、眠っている。…それがいい。
決してこちらを向く事が無いその横顔を、ただ想うだけがいい。 既に死んだ星の光を浴びるように、空を仰ぐのがいい。
私が長く構築してきた「保守性」をこんなにもバラバラにぶっ壊してしまう人に 会えて触れる機会があったことをプラスに受け止めよう。 そのせいで失ったものもあるけれど、 この気持ちと天秤にかけて敵うものなど、今は何ひとつ無いから。
何日か、何ヶ月か、もしくは何年か先に、あの人が私に言った言葉のうち、 ひとつでもその言葉にたがう事があったなら、この気持ちは死ぬんだろう。
あの人が、彼自身の信念にそむいたら、私は彼を軽蔑する。 そんな事が、決してないように願いながら、心のどこかでは 私はそれを望んでいる。破滅的なものを好み、その反面で助かりたいと 思う。この星の、死んだ光の空の下で。
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