少しずつ心が乾燥するから、私は、あなたの記憶に脳を浸す。
この間、とても久しぶりにその顔を見た。
胸がふつふつと沸騰するのを我慢できずに、私はその場にうずくまった。 やっぱり、まだ、何処にも行けない。 …あなたの右手が、私の左の頬に触れてしまったから。 私の唇が、あの人の指に触れてしまったから。
ほんの少しでも、あの人の鋭い虹彩に映されてしまっては、 私は、この心をどこに逃がす事も、捨てることも出来ない。
まるで、高速で落ちるエレベーターに乗った時のように、 足元が覚束なく、気持ちは上に残したままで、躰だけが重力に惹かれて 落ちて行く。その先の死に惹かれて。
土に還って、消える事を望むように。脳が汚染される。
再び闇に落ちて行く。
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