陽気で、いつも人を笑わせていた祖父。 兄が水泳で賞状を貰ったとき、私の高校入試の結果が一番だったとき、一番喜んでいたのは祖父だった。 兄の賞状は全て額に入れて飾り、良いことがあると、近所に自慢して歩いた。 当時の私は、それが疎ましくてたまらなかったが、祖父には全く厭味が無く、孫の自慢話を聞かされる近所の人も、喜んで話を聞いてくれていたらしかった。
何時頃からだったか、そんな明るい祖父が、ほとんど布団の中で過ごすようになっていた。 大好きだったお酒・・・それまでは、楽しいお酒だったのが、アルコール依存症にもなっていた。 家中をお酒を探して回り、「どこに隠してるんだっ!」と怒鳴ることもしばしば。 酷い痛風に侵されていた祖父の身体も心配し、一日一本だけ冷蔵庫に入れるビールを見つけては、嬉しそうに飲んでいた。
嫌がる祖父を、無理やり連れていったのは、精神病院。 若い頃から兆候はあったらしいが、娘(母)の蒸発に婿(父)の死、孫の世話・・・度重なる苦労が、祖父の病に拍車を掛けたことは間違いないだろう。
病名は「躁鬱病」 その名の通り、鬱状態と躁状態を繰り返した。
私が高校に入った頃からか・・・ 祖父から目が離せなくなった。 ふと目を離すと、ふらふらと出て行ってしまうようになったのだ。 行き先はというと、自宅の車庫なのだけれど、行ってみると、天井にロープを括りつけているのだ。 毎日、誰かが監視するようになった。
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