一年ぶりに帰ってきた母は、どのくらい家に居ただろう。 どんな話をしたのか、どんな気持ちで、どんな生活をしていたのかサッパリ記憶にない。 父や祖父母とどんな話がされたのか知らないが、気が付けば母は、また居なくなっていた。 家族構成は、祖父母(母方)・父・兄・私の五人になった。 祖母からは、「お母さんはお前達を二回捨てて出ていったんだ。」と聞かされた。 祖母は、よく母の悪口を言う。 悪口と言うより、愚痴だろう。 我が子だからこそ余計に情けなくて腹が立つのかもしれない。 戦時中に母を産み、空襲の中赤子を抱えて走り、苦労して育てたというのに夫と子供を置いて出ていった。 祖母は、自分も捨てられたという思いがあったのだろう。 更に、歳をとってから、孫まで育てなくてはならなかったのだ。愚痴りたくなる気持ちも解らなくもない。 しかし、まだ幼い私に愚痴られてもチト困る。 私は、ただ祖母の愚痴を聞いて頷く。時々、祖母の言って欲しそうな言葉を吐く。 「寂しくないよ。」 「お母さんなんていらない。」 それは20年以上経った今も、まだ続いている。 私は、ただ祖母の愚痴を聞いて頷く。時々、祖母の言って欲しそうな言葉を吐く。 そして、今度は母の愚痴と言い訳も加わる。
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